【こころ #6】メンタルヘルスに“寄り添う”弁護士
須賀 翼さん
須賀さんは弁護士として活躍されながら、脳や心に起因する疾患及びメンタルヘルスへの理解を深め促進するNPO『シルバーリボンジャパン』の監事を務めておられる。
なぜこの活動に携わるようになったのかお聞きして、「あー、精神疾患を患った方にとって、いい意味でシリアスじゃなく寄り添ってくれる環境が大事なのかもしれない」と気づかされた。
原点は大学1年生の頃に遡る。「サークルも別で、授業でちょいちょい一緒になって、ときどきお昼に一緒に行く」程度の「友達の中の一人」が、大学の食堂にいると「(誰かを指して)睨んでいる、悪口言っている」や「死にたい」と話すようになる。「(彼は)その頃にお父さんが亡くなられていたから、それで病んでいるのかなと思った」。
ほどなく、その彼から「高校ぐらいから統合失調症の診断を受けている」旨を告げられる。「当時は何も知らず、へ~大変なんだね」という感想しかなかったそうで、ある意味それで“特別扱い”することはなかった。ただ、そういった事情を誰にでも打ち明けられるものでもないだろう。彼にとって、逆に須賀さんは“特別扱い”だったのではないか。もちろん須賀さんはずっと彼と付き合い続けた。
須賀さんは、「大学時代はひどかったけれど」、社会人になってからも含めて「彼が良くなっていく過程を見てきた」。「友達が頑張ろうとしているから、時々体調が悪そうなら声をかける程度ですよ。“支援”なんて言うつもりもない」。卒業した後も、「何かの集まりがあれば、その後に二人で飲みに行ったりする程度」。そんな“程度”の心持ちで接し続けてくれることこそ、彼にとって嬉しかったのではないかと勝手に推察した。
そんな中、須賀さんが弁護士なりたての頃に、冒頭にご紹介した『シルバーリボンジャパン』の活動に誘われることになる。勉強会に顔を出したり、弁護士故に成年後見制度について教えてほしいと頼まれれば説明する形で、団体との関係が少しずつ深まっていった。
正式に監事に就任したのは、一年前。それまでは団体を立ち上げた代表が奮闘する組織だったが、世界メンタルヘルスデーである10月10日に東京タワーをライトアップする活動などを通じて、活動範囲や動く資金が大きくなっていたことが背景だ。
須賀さんは、あくまで「監事という立場で団体の方向付けに云々言うつもりはない」が、『シルバーリボンジャパン』が持続的に活動を広げていける体制になるためには、会費の徴収や協賛企業の拡大など、これからやるべきことは多いと考えておられる。
弁護士という職業柄、顧問先の企業でも「ストレスで精神疾患を患う社員の方の話や、そうした社員の方にその後どう配慮すべきかという話を見聞きする」そうで、「一般的な企業に精神疾患の理解を深めてもらうことは、(シルバーリボンジャパンの仕事と)表裏一体だなと感じている」。
弁護士になった10年前、精神疾患に関する活動にボランティアで携わっていることを同業の弁護士に話すと、「そっち系、大変じゃない?やばくない?」といった無理解な言葉を投げられることも多かった。今では全くなくなったとは言えないが、でも変わってきたと感じている。
社会でも精神疾患への理解が進み、かつての須賀先生のように“いい意味でシリアスじゃなく寄り添ってくれる環境”が少しずつでき始めているのかもしれない。個人としてそれを実践されてきた監事がおられる『シルバーリボンジャパン』の取組を応援していきたい。
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