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【こころ #4】精神に障害がある方の家族が結成した全国団体で、事務局長を務めておられるのが…

小幡 恭弘さん


 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会、通称「みんなねっと」。精神に障害がある方の家族が結成した全国団体である。その事務局長を務めておられるのが小幡さんだ。


 小幡さんは中学生の頃から母子家庭に育ち、家では妹さんに食事をつくった。子供心に将来は母子福祉や調理師の道を考え、福祉系の大学に進んだ。大学では「社会福祉を学ぶのに障害者を知らないと話にならない」と障害者福祉を専攻。その中で精神障害は保健医療の対象で福祉の対象ではない(当時)ことに違和感を持ち、精神障害を学ぶようになり、卒業論文は『精神障害者の就労と自立』をテーマに選んだ。そうした中で精神障害者の無認可作業所の立ち上げに職員として来ないかと誘われ、卒業後に飛び込んだ。

 その後、一度だけ、家族で移住した地方で、福祉職の収入が都内に比べて著しく低かったため、精密機器メーカーで品質管理の仕事に就いたことがある。しかし、やっぱり「人と携わりたい」と福祉の現場に戻ろうと決めた。その後社会福祉法人勤務を経て、声がかかったのが、精神に障害がある方の家族と関わる「みんなねっと」の仕事だった。


 小幡さんは精神障害を学び携わってきた中で気付いたことがある。「(母子家庭になる前に共に暮らした)父親は双極性障害だったのではないか。仕事熱心で遊びにも連れて行ってくれる父親が、急に仕事に行かず家に引きこもり、ある時には母親に暴力振るうなど波があった。当時はなぜ?と思うばかりで“本人の問題”として病気や障害という発想もなく、ちゃんと病院にもかかっていれば、、」。そんな気づきや思いが「みんなねっと」の仕事に取り組む背中を押した。


 着任した当時「みんなねっと」は、政治や行政や他の団体など多くのステークホルダーとの連携が乏しかった。しかし、「孤軍奮闘では当事者の環境を変えていくことはできない」。公共運賃割引の精神障害者への適用拡大に向けた全国調査結果の記者会見を日本精神科病院協会や日本看護協会他名だたる団体と連名で実施するなど、関係者とのパイプを太くしていった。会員からはなかなか実現しないと批判を受けることもあったが、運賃割引は今や全国の鉄道会社に広がりはじめている。

 昨年度から高校の保健体育の科目で精神疾患の授業が40年ぶりに復活した。精神疾患の発症の第一ピークが14歳前後とも言われ、関連団体とともに「義務教育段階からの導入を要望していた」が、これも成果の一つだ。


 こうした成果が「みんなの経験値になればいいし、実現できるんだという体感をもってもらえれば」と小幡さんはおっしゃる。事務局が上意下達で率先してお膳立てするのではなく、家族からの切実な願いの実現を最大限サポートするのが信条だ。実際全国規模となれば色んな違った考えはある。でも「時間をかけて丁寧にまとめていくのは、時代のスピードとは異なるかもしれない。しかし、おろそかにせず追求すれば何か生まれていくと信じている」。


 障害のある人たちが差別を受けることなく、好きな場所で暮らし、学んだり働いたりできるという、当たり前の権利を保障する『障害者権利条約』。同条約を批准している日本は昨年に初めて国連から審査と勧告を受けた。「精神障害とすれば厚生労働省の話かもしれないけれど、今やメンタルヘルスは国全体の話だと思うんですよ」、さらにそれを社会として「決して特別な事柄ではなく、色々な存在を認め、ひとりの生活をする中での安心安全を考えたいですよね」と微笑まれた。


 ずっとお話をお聞きして、小幡さんて「真面目」だなぁと感じる。でも何かその一語でストレートに小幡さんを表現するのは違う気がして、語源を調べてみた。宋の蘇東坡(そとうば)が読んだ漢詩「柳は緑、花は紅、真面目(しんめんもく)」らしい。この漢詩の意味は「柳には柳の色、花には花の色があり、それぞれがそれぞれの個性や役割を発揮している」という意味、即ち「それぞれ自分らしく生きている」ということと解釈できる。

 そんな世界を後押ししている小幡さんを表現する言葉として「真面目」は間違っていなそうだ。


▷  公益社団法人全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)



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