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【横断 #29】インクルーシブアートの確立に向けて


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篠田栞さん、林芽生さん


 福祉ど真ん中の方が障害者によるアートに取り組む例は見てきたが、アートど真ん中の方がアクセシビリティに熱心に取り組む例を初めて知った。


 篠田さんと林さんが所属する株式会社precogは、創業20年超えの、アートプロジェクトの企画・運営を行う制作会社で、活動テーマは「横断と翻訳」だ。篠田さんが「例えば、文脈も価値観も違うヨーロッパの先鋭芸術を日本の港町のおじいちゃんが楽しむには?」と表現してくれて、腹落ちした。
 そんな活動テーマには最初から、「”アクセシビリティ”(アクセスのしやすさ)と”インクルージョン”(包摂)」が含まれていたのかもしれない。


 会社にとっての転機は、2019年に初めて開催された、日本財団が主催する『True Colors Festival - 超ダイバーシティ芸術祭』。運営事務局として、障害のあるアーティスト対応から、インクルーシブな視点を考えるワークショップ、来場者への情報保障まで、「会社として総合的に取り組む初めての経験だった」。
 しかし、その後のコロナ禍により、そうしたインクルーシブな劇場を訪れる機会は閉ざされてしまう。ただ、「そもそも考えると、それまでだって誰でも劇場へ行けるわけじゃなかったよね」、じゃあ「誰でもってなんだ?」と、障害のある当事者へのリサーチが始まった。



 そこから生まれたのが、アクセシビリティに特化したオンライン型の劇場『THEATRE for ALL』。篠田さんが責任者を務め、「劇場体験に、アクセシビリティを。」をミッションに掲げる。
 この取り組みは、「見る」という映像配信のコーナーを中心に、バリアフリー字幕や音声ガイド、手話通訳、多言語字幕などに対応した鑑賞する人を限定しない映像を制作・配信しながら、そうした経験を活かして「学ぶ」ラーニングプログラムや、研究と実践の場としての「LAB」も展開している。
 実は、映像作品にアクセシビリティを落とし込むことは容易ではない。例えば、『わが星』というミュージカルは、暗闇の中で男女の会話が聞こえてくる場面がある。まだ時間も光もない「無」の状態。これを視覚や聴覚に障害のある方にどう伝えればいいのだろうか。
 そこには、アーティストの意図を汲み取って伝える「翻訳」が必要になる。そんな情報保障の現場にインターンとして入ったのが、当時美大に在籍していた林さんだった。「情報を伝えるのに、音や言葉などあらゆる選択肢がある中で、どう取捨選択するか、1つの正解がない。アート作品をつくる過程自体も同じで、選択肢を増やす手法って、アートは得意なんです」と教えてくれた。


 『THEATRE for ALL』からは現在、こうしたアクセシビリティへの視点を発見するヒントを集めた『100の回路』、劇場を飛び出してみながつながるユニバーサルな映画祭『まるっとみんなで映画祭』、表現の可能性をひらくために様々なバックグラウンドをもつ人達による対話の場を提供する『GOOD DIALOGUE LABORATORY』など、さらに多くの活動へと広がっている。




 しかし、課題はある。
 こうした取り組みは、リソースがかかる一方で、まだまだ収益化がしづらい状況だ。そのため、行政の街づくりや、企業の組織運営、これからインクルーシブなプロジェクトに取り組みたい公共施設や劇場での研修、大学での授業など、蓄積した知見を他のシーンに応用できる先を広げている。
 企業から研修を頼まれれば、アクセシビリティが、まだまだ義務的なサポートだったり、怒られないために対応するものだったりと、捉え方に「距離がある」と感じることがある。
 逆に、視覚障害のあるナビゲーターと一緒に映像を観てもらったことで、距離が縮まり、自分ごととして手話を習うまでに至った行政の方もいる。
 「とにかく、参加してもらえれば、インクルーシブな感覚をもつ人が増えていく」と、篠田さんと林さんは信じている。


 情報保障に取り組む以前の課題もある。
 例えば、教育。障害のある方への教育の仕組みの中で、アート鑑賞などの文化教育の発信が、必ずしも十分に行われてこなかった。情報保障を施しても、劇場にいったり、アート鑑賞をする習慣のある人が少ないと、お客さんが来てくれないのだ。仮にそういった教育があったとしても、都会では鑑賞機会が得られるが地方ではそれが容易ではないといった地域間格差の課題。


 そして、何より、日本の芸術業界そのものが抱える課題だ。海外の芸術祭では「アクセス&インクルージョン・ポリシー」が公示されるのが一般的だが、日本の芸術祭ではほぼ見られない。


 こうした課題があるからこそ、篠田さんや林さんが取り組む『THEATRE for ALL』のような活動が途絶えてはいけない。
 こうした取り組みは、本来であれば、「年間通じて安定した事業運営の”余白”がないとできない事業」だ。だからこそ、助成金頼みではなく、「事業として挑戦する環境をつくっていきたい」とお二人は考えている。
 事業環境が必要な背景をもう一つ、篠田さんが教えてくれた。「こういった分野に想いのある美大出身の若手の子たちがいます。でも、取り組む環境が悪いままだと、未来がない。”インクルーシブデザイン”という職域は少し確立してきましたが、”インクルーシブアート”の職域も確立していかないといけない」


 「”アクセシビリティ”(アクセスのしやすさ)と”インクルージョン”(包摂)」が社会に広がるためには、それを進める人材が不可欠だ。そして、その人材が安心して取り組める事業環境も不可欠だ。そこに新しい市場が生まれてほしい。だからこそ、そこに挑戦していくprecogさんの『THEATRE for ALL』を応援し続けたい。
 皆さんにも、『THEATRE for ALL』で展開される多様な活動に参加してみることから応援しほしい。


▼企業や行政などに向けた事業紹介ページ


▼アクセシビリティの面白さ、ユニバーサルなプロジェクトの立ち上げのレポートなどがある「読む」





ここまで読んでくださった皆さまに‥


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