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【こころ #98】自閉症の息子で差別意識に気づき、背中を押される
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岩瀬霞さん
「自分の中に偏見や差別意識があったこと、自閉症で将来がないと思っちゃったことが、何よりショックでした」
そう話す岩瀬さんの当時1歳半の息子さんは、とてもやんちゃで、「コト」に対する集中力や没頭がずば抜けていた。それをネガティブに言い換えれば、明らかに多動的過ぎて、「ヒト」に関心を示さないとも言えるのかもしれない。
そんな指摘を受けた岩瀬さんは、ネットで調べ始めると、「(自閉症の特性に)すべて当てはまると確信した」。その通り、発達検査の結果でも「自閉症スペクトラム障害(ASD)と知的障害の可能性」が指摘された。
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「ネットで検索することはあまり良くないと思いつつ、SNSではネガティブな情報ばかりで、差別的な発言も溢れていた」
息子さん自身は何も変わっていない。にもかかわらず、ASDや知的障害なる名称がついた途端に、それまでポジティブに捉えていた息子さんの特性を、母親である自分でさえネガティブに感じてしまい始める。それが冒頭の発言の背景だった。
旦那さんに息子さんが自閉症かもしれないと伝えると、「じゃあうちに生まれてきてくれてよかったよ」と回答するぐらい「どんと構えていた」。旦那さんに知的障害の兄弟がおられたからかもしれない。
でも、それに対して、どうして自分は「息子を可哀そう」と思ってしまったのか。岩瀬さんは自分を分析した。分離的な教育システムのせいか、「自分は障害のある人に関わる人生ではなかったし、これまで近くにあったとしても気付かなかった。本当は地続きで繋がっているのに」。だったら、「そんな社会を前向きに変えていくために残りの人生を過ごしたい。そのために必要なスキルを身に着けたい」と、岩瀬さんは思い立つ。
そして、もう一つ。実際、当事者の家族になってみると、「福祉制度が整っていても、日本社会の理解が及んでいない」ことも感じた。当時は、自身の中に気付いた偏見も手伝い、「日本で息子が暮らしていくのは厳しいんじゃないか」とも思っていた。「じゃあ海外でも生きていけるように」。そうした背景から、社会を前向きに変えるスキルを手に入れ、家族で海外でも生きていけるように、岩瀬さんは海外の難関ビジネススクールに挑戦し、見事MBA(経営学修士号)を取得した。
「息子に背中を押された」
MBA当初は海外移住を念頭に置いていたが、MBAを通してライフミッションについて深く考えるうちに、自分が取り組むべきは日本社会の課題の方だと考えるようになった。日本では障害がある子の親がキャリアダウンや仕事を辞めざるを得ないケースも多く、そうした課題も解決したい。
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そんな息子さんは現在年長さんで、今年就学を迎える。ASDと重度の知的障害があるため、これまでもこれからも支援サービスの手を借りないといけないが、岩瀬さんにお聞きした話からは課題が見えてくる。
例えば、岩瀬さんのご家庭は、旦那さんと二人ともフルタイムワーカーだ。福祉関連サービスを探そうと思っても、自治体などから事業所の一覧表をもらうだけで、実際に空きがあるか1軒1軒電話しないといけず、現実的には「時間に余裕がありフットワークが軽いご家庭じゃないと情報収集が難しい」状況だ。
さらに、実際には、二人が対応できる時間に開いている事業者や対応できる移動支援業者は限られてしまい、「両方ともフルタイムだと、選択肢がほぼない」。
今後は、息子さんの就学を控えて、同様の形で放課後デイサービスも探さないといけない。一般的に、選択肢が多くあるサービス形態であれば、ポータルサイトに事業所の情報だけではなくそれぞれの空き情報までまとまっていてもいいものだ。
しかし、放課後デイサービスは、少なくとも都心部では需要が供給を大きく上回る状況だ。「マーケティングしなくても児童が入ってくる」ため、仮にポータルサイトがあっても、事業所にとってはお金を払うインセンティブがない。
結果的に、ユーザーに解消されないままの不便さが残る構図だ。
岩瀬さんは、同じ障害のある子をもつ親同士が交流する座談会などにも参加した。もちろん聞ける経験は有益である一方で、障害の程度や夫婦フルタイムの共働きと事情が違ったり、時代背景も異なる場合もある。そういった経験値がニーズに応じて「デジタル的に最適化される世界があるといいかも」なんてアイデアも聞かれた。
残念ながらInclusive Hubにまだそこまでのデジタル技術も知見も備わっていない。ただ、こうした岩瀬さんのご経験が同じ自閉症のあるお子さんをもつ親御さん、さらにはフルタイムで働きながら今後の療育を思い悩んでいる親御さんに届いてほしいと強く思う。
そして、岩瀬さんのお話から見えてきた課題は、難しいかもしれないが、ビジネスのアイデアにもつながる。欲を言えば、それに、当事者家族でもあり「いつか自分でもこの領域で何かやってみたい」岩瀬ママが挑戦してくれたら嬉しい。その時もう一度、「息子に背中を押された」なんて言葉を聞いてみたい。
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ここまで読んでくださった皆さまに‥
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