【こえ #30】とにかく早くコミュニケーションを取りたかった…
鈴木 順雄さん
鈴木さんは、今から約4年前に喉頭がんの手術で喉頭(声帯)を摘出された。同じ手術で一部切除された食道の管構造を作り直すために空腸(小腸の胃に近い方)を移植する「食道再建」も併せて行った。
退院を待たず「筆談では面倒だし、とにかく早くコミュニケーションを取りたかった」から、入院中から普段使いの言葉や文章をスマホに書き溜め、音声読み上げ機能を駆使して会話できるように準備した。拝見させて頂くと、「買い物」や「挨拶」といったカテゴリーがあり、カテゴリーごとに20フレーズほどだろうか丁寧に記載され、膨大な準備をされてきたことが伺えた。
鈴木さんも前回29話でご紹介した金安泰子さん同様に、千葉県で喉頭がんや下咽頭・食道がんなどで声帯を失くされた方々が発声を習得する『京葉喉友会』に入会した当初は、口や鼻から食道内に空気を取り込み、その空気をうまく逆流させながら、食道入口部の粘膜のヒダを新声門として声帯の代わりに振動させて音声を発する「食道発声」に取り組んだ。
しかし、発声訓練を始めて4か月経っても、最初の「あ」の一文字を発声できない。
入院時同様にやはり「早くコミュニケーションを取りたかった」から、あご下周辺に当てた振動を⼝の中へ響かせ、⼝や⾆の動きで振動⾳を⾔葉にして発声することを補助する器具「電気式人工喉頭(EL)」を使うクラスに移った。一文字を発声するどころか「2か月で「あいうえお」が言えるようになり、3か月もあれば話せるようになった」。
声量が限られノイズにかき消されがちになる「食道発声」に比べて、「声が大きく出せるから外でも会話できる」メリットも教えて頂いた。鈴木さんはいつでも使えるように「電気式人工喉頭(EL)」に紐を付けて首からぶら下げておられる。
一方で、よく言われる「電気式人工喉頭(EL)」使用時の3つのデメリットについてもお聞きしてみた。
1️⃣ ELを通じて出る声がロボットのような声になってしまう
2️⃣ 同様に声に抑揚がつかない
3️⃣ ELを持ちあご下周辺に押し当てるため片手が常に塞がる
鈴木さんは「そこまでの不便は感じていないけれど」と前置きしつつ、「抑揚は構わないけれど、宇宙映画に出てくるような声はどうにかしてほしいかな」とおっしゃった。加えて、「握る器具がやや太いのでもう少し細くなるといい」、「常にぶら下げている故に重さも気になってくる」といった、ヘビーユーザーならではのご意見も頂いた。
「電気式人工喉頭(EL)」の改良や革新に取り組む開発者にとって、鈴木さんのようなユーザーのご意見は貴重なものだろう。
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