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【め #48 / こころ #87】発達障害の子どもたちが教えてくれた眼鏡


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灰谷 孝さん


 みなさんは、自分の目についてよく考えてみたことがありますか?私はなかったです。


 実は、一人ひとりの目には、特定の色をまぶしく感じるなどの固有の特徴があり、人それぞれ得意な色と不得意な色がある。
 実は、多くの人には、「斜位」という視線のズレがある。そのズレによって、知らず知らずのうちに目や全身の筋肉に力を入れすぎてしまい、肩こりや体のズレにもつながる。
 実は、人にはそれぞれ、遠くや近くなど見える範囲から安心できる視界と、体の左右のバランスに直結する左右の目の度数のバランスがある。


 と聞いて、純粋に、面白くないですか?
 そして、あなたがメガネをかけているなら、それは上記に対応していますか?



 そんなオーダーメイドのメガネを開発したのが、灰谷さんだ。その名も『イノチグラス』。そして、その可能性を「教えてくれたのは(発達障害の)子どもたち」だった。


 発端は、灰谷さんがサラリーマンをしながら心理学を勉強していた頃に出会った「体と認知をつなぐ、米国人が考えた学習障害のためのエクササイズ」。自ら学び実践してみたら、テレビに取り上げられ、学習障害のお子さんをもつ親御さんから相談が相次いだ。
 当時、そんな親御さんは、病院に行こうにも、予約まで時間がかかり、診察してもらえてもなかなか診断が下りず、子育てを批判されることさえあった。近くに相談できる場がなく、困っていたのだ。


 「専門知識もなかったんだけど、知識がない故に、その子の困りごとに死に物狂いで向き合ってきた」
 灰谷さん自身が発達支援のトレーニングを施すだけではなく、「全国で学べたり、相談できる場が必要」と考えて、同じ「発達支援コーチ」を3,000人以上も輩出した。


 灰谷さんはそうして数多くの子どもたちと触れ合う中で、あることに気付く。「体の動かし方がうまくなることと、目の使い方がうまくなることがリンクしている」
 一般的な視力とは関係なく、「何かしら目の使い方や見え方に苦手感があることで、周囲から”できない”と判断されている子がいる」ことに気付いたのだ。


 灰谷さんが独自に提唱する「目の段階」という概念を教えてもらった。「(目が)使える→(目で)見える→(目で)理解する」。
 例えば、「空間認知や人の情報を読み取ることが苦手など、最終段階をクローズアップしがち」だが、仮に目をカメラに置き換えてみた場合、最初の段階で手振れ防止機能はついているのか?目に戻して考えてみると、眼球運動の時点でエラーが起きていないか?となる。発達障害には、こういったケースも多いそう。
 「でも、それって、その子にとっては当たり前なんですよね、だから言語化できない」。その結果、最終段階で理解できないことを周囲から揶揄されたりしてしまう。
 逆に、「目が使えて、首もちゃんと使えて、ボーリングの玉と同じ重さの頭を載せてまっすぐに立てる」ことでも、「良く見えて、目も動かしやすくなって、理解も進む」


 そんな背景から「体の発達と目の発達の両方がわかって、目の使い方を教えられるようにならないと」と感じた灰谷さんが向かったのは、たまたま眼鏡の専門学校だった。
 そこで、目だけではなく眼鏡の勉強も始める中で、「色は波長だから」という言葉に開眼する。「ただ光を眩しく感じるのではなく、波長の得手不得手ではないか」。レンズに色を付ければ波長のコントロールが可能だ。



 「最初は半分遊びみたいな感覚で、眼鏡の左右で違う色を入れてみた」
 左右で違う色を使うことは眼鏡業界的に異色だが、実際に身に着けた人の感想は「めっちゃ気持ちいい」「体のバランスが整う」「心地よい感覚」といったものだった。
 そんな実験から、冒頭で紹介した、左右での色の得手不得手、視線のズレ、度数のバランスなどに配慮したオーダーメイドの『イノチグラス』が生まれていき、身に着けた時の感動による口コミが広がっていった。
 原点は発達障害だったが、今や、障害の有無に関わらず、視覚に「何かしら困っている、良くしたいというチャレンジを抱えている人」が灰谷さんのもとを訪れる。プロ野球選手からも問い合わせがあることが、その証左だ。


 しかし、灰谷さんは、こういった選択が「特別なものではなく、普通の生活で選べる文化になるまでやっていきたい」と考えている。
 眩しさ一つにしても、視覚を取り巻く環境は、省エネ対策の一環としてLED化が進むなど、必ずしも「感覚の多様性」を尊重しているとは言い難い。それを身近なツールで解決できる世界にしたい。
 ただ、今の時点で『イノチグラス』は、スーツで言えば、フルオーダーメイドだ。「体験してもらうと、自分の体で感じるから、否定のしようがない」一方で、フルオーダーメイドの価値を知らない人がいきなり手を出すにはハードルがある。そんなハードルを下げるために、「気軽に体験できる機会や仕組みを作っていく必要がある」と考えている。


 実は灰谷さん自身も、かつて自身の特性に苦しんだ時期があった。文字や文章を書くことに困難が生じる学習障害の一種の『書字障害』や、色を識別する能力が一般の人と異なる『色弱』。それを説明できないままに、周囲から「こうやったらいいって言われても、全然解決しないじゃん」と子どもの頃から疑問に思ってきた。


 そんな灰谷さんは今、視覚の大事さだけではなく、自閉症の子どもたちから、聴覚の大事さも教わったことで、新しい挑戦も始めている。
 「身近なツールを使って、自分の心地よい五感を実現する」研究対象を、視覚だけではなく、聴覚や嗅覚にも広げているのだ。「主観的である故にアカデミックには難しい分野」でありながら、当事者との実験を起点にしつつ、研究者も巻き込んでいっている。


 『イノチグラス』は、障害が直面する困難をヒントに、障害の有無を問わない心地よさを生み出した。灰谷さんの挑戦は今、視覚のみならず、他の五感にも及ぼうとしている。
 しかし、そんな挑戦を社会に広げるのは、まず体験してみよう使ってみようと思う利用者だ。障害をヒントに社会全体を良くする。そんな挑戦こそ一利用者から後押ししたい。





ここまで読んでくださった皆さまに‥


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