【けつえき #4】脳卒中患者のために保険外に挑む理学療法士
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針谷 遼さん
脳卒中(脳血管疾患)は、国内の患者数が174.2万人と推計され(厚生労働省「令和2年患者調査」)、日本でも世界でも4人に1人程度が経験するとも言われる。
一般的に、手足の麻痺や言語障害など障害が残るイメージも強いが、脳卒中の発症直後からのリハビリテーションなどを通じて、職場復帰など回復する場合も少なくない。
針谷さんは、理学療法士を目指す中で、そんな「後遺症が治らないまま生活しなければならない状況を目の当たりにした」ことから、そんな継続サポートがしたいと、脳卒中専門の道に進んだ。
大学卒業後すぐに脳卒中専門の病院に勤めるとともに、自ら学術大会にも通い、貪欲に学んだ。海外の学術大会まで足を運ぶと、「”こうすればよくなる”という明確なエビデンスが出始めている」ことを知り、国内との差を実感することになる。
例えば、手や高次脳機能のリハビリであれば週5〜7回、足のリハビリであれば週3〜5回など、集中して行えば、発症から時間が経っていたとしても機能が改善する可能性がある。しかし、日本の医療保険の下で、または介護保険の訪問介護として受けられる「保険内」でのリハビリは、制度上、それだけの回数を受けられる形にはなっていない。
こうして、針谷さんは、あくまで患者さんの回復を中心に考え、「保険外(=全額自費)」のリハビリに挑戦することを決める。保険外でのリハビリを提供する大手企業への勤務を経て独立し、その後、脳卒中専門の保険外リハビリ施設『BRAIN』を起業した。
『BRAIN』のセラピストは全員、経験年数8年以上で、脳卒中の臨床実践に秀でている『脳卒中認定理学療法士』や、作業療法の臨床実践など一定水準の能力を有する『認定作業療法士』、幅広い知識と専門性の高い技術を備えている『認定言語聴覚士(失語・高次脳機能障害)』の資格保有者だ。それぞれ、理学療法士全体の約2%、作業療法士全体の約1.4%、言語聴覚士全体の約1.6%の、稀少なセラピストになる。
そして、その全員がフリーランスであり、利用者一人ひとりに「完全担当制」として付く。病院のリハビリであれば、完全担当制ではなく「複数担当制」が一般的だが、『BRAIN』では、自身の技能が成果に直結する。全額自費サービス故に、それを支払う利用者の目も厳しくなる。
リハビリの内容も、世界的に有効性が実証された手法や機器だけを揃える。その上で、海外論文で示された研究データを元にした効果予測や、『BRAIN』でリハビリを受けた同じ症状レベルの利用者の効果データを説明することから、リハビリを始める。
開始後はリハビリ効果が測定されて、予測通りになっているかを示され、予測通りになっていなければ、その人なりに改善を繰り返してしていくのだ。
これらは患者目線を貫けば譲れない一線ではあるが、事業を広げるにあたって人材の採用・育成は大きな課題になる。
近年、フリーランスとして活躍する理学療法士や作業療法士は増えているそうだが、海外の先進的なリハビリの情報を貪欲に吸収しようとする人はまだまだ少数だ。さらに、実際に「保険外」に飛び込んできても、前述の「完全担当制」や「全額自費」という真に実力が試される世界に、早々に辞めてしまうセラピストもいる。
そこで針谷さんは、エビデンスに基づく脳卒中リハを体系的・網羅的に学習できる場として、サッカークラブの育成組織も参考に、セラピストの知識・スキルに応じて学習できる『BRAINアカデミー』も開講し、意欲ある有望な人材を引き上げる取り組みも進めている。
もう一つの大きな課題が、集客だ。
前述したように、脳卒中のリハビリとしては、医療保険の下で、または介護保険の訪問介護として受けられる「保険内」でのリハビリが、まだまだ一般的だ。近時、大学病院でも自ら「保険外」のリハビリを提供する動きも出始めてきたが、まだまだ一般的ではない。
例えば、介護保険の下では、ケアマネージャーが利用者と一緒に最適なサービス利用を考えたり、地域包括支援センターにリハビリを必要とする方の情報が集まったりする。しかし、そういったプレーヤーの中にも、まだまだ「保険内」サービスの発想が根強く、「保険外」まで含めて感謝に最適なサービスを組み合わせる発想が広がっているとは言い難い。
針谷さんも一民間企業として、自社サイトへの流入や、Youtubeでのコンテンツ発信などに注力をしているが、地域の特に高齢者にとってはまだまだ日常的な情報源にはなっていないのが現状だ。
針谷さんのような挑戦は、例え起業はできても、「開業半年まで全然ご利用者様が来ないことが普通」だ。起業支援の観点から行政には、販路開拓としての、ケアマネジャーや地域包括支援センターとのコネクションづくりの支援を期待している。
こうした課題に直面しながらも、針谷さんが挑戦した目的は、誰もが「世界標準のリハビリを受けられるように」することだ。
「世界では、”こうなればよくなる”というリハビリ手法が出てきているのに、それらが国内に届いていない。それが普通に受けられる社会になってほしい」
こうした挑戦を活かすも殺すも、社会側だ。もちろん、これだけ日本に根付く保険制度には素晴らしい点もたくさんあるが、利用者にとって望ましいサービスがすべて保険でカバーできるわけではない。
良いサービスがあっても、保険でカバーされていないからと言って使われなければ、それは消えていってしまう。それで恩恵を受けられないのは、結果的に利用者であり、利用者の回復を通じた参画を得られない社会側なのだ。
針谷さんは、こうも話した。
「世界に、有効性が証明されたリハビリはあるが、治るまでには至っていない。自分が働けるのは、あと30年から40年。現役のうちに、治るまでのリハビリの方法を見つけたい」
そんな未来を応援するためにも是非、保険外であっても一度、サービスを利用してみることから始めてみてほしい。
ここまで読んでくださった皆さまに‥
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