見出し画像

【あし #7】パラ競技団体をほぼゼロから作り上げる先

上岡 央子さん(後編)


前編から続く)

 小さい頃から障害のある方と交流してきた上岡さんは、パラカヌーの体験を通じて、目線もコミュニケーションも完全なバリアフリーになる水上の世界の素晴らしさに気付き、カヌーを通じてその世界観を広めたいと決意する。決めたら即行動。2016年暮れに大阪から上京し、『一般社団法人日本障害者カヌー協会』の事務局長に就任した。


 事務局長といっても、当時の協会はまだ任意団体で法人化されておらず、初めての従業員。競技の仕組みから学ぶどころか、組織の運営についても「引継ぎもなければ聞く人もおらず、すべてが初めてだった」。最初の2年間は休みなく毎日出勤してキャッチアップした先には、もう2020年の東京パラリンピックが目の前に迫っていた。

 そんな2019年に、コロナですべてが動かなくなった。アスリートにとっての良し悪しが議論されたオリパラの延期問題は、上岡さんや協会にとっては「助かった。追いつけなかった部分を埋める期間になった」。ガバナンスコードに対応するための理事会の体制を整えたり、選手強化にも余裕ができ、結果的に東京パラリンピックを無事に迎え終えることができた。


 「東京大会までの目標は、なるべく多くの選手に自国開催を経験してもらうこと」。上岡さんの仕事が本国開催でひと段落することはない。次は、選手の強化体制を整えること。一から監督もコーチも選手もスタッフまでもフラットに一般公募し、組織の体制もさらに強化した。

 他方で、「(パラカヌーは)認知度も低く選手も少ない。観戦会場も地方にしかなく、競技団体として収益を上げられるわけではないし、助成金だけでは賄えない部分もある」。企業スポンサーの獲得にも色々と取り組んできたが、パリンピック東京大会まではあくまで広告として出してくれても、それが続くわけではない。

 上岡さんはいま、協賛によって得られる価値を、「1年ごとの広告効果ではなく、もっと先の日本の将来に何をもたらすのか、自分たちでも考えて提案しないといけないし、協賛企業とも一緒に考えていきたい」。

 パラスポーツ団体の資金繰りはどこも厳しいが、協賛の形はお金だけには留まらない。スポンサー企業から団体への出向や、イベントだけ手伝ってもらうなど、多様な現“人”協賛の形もあり得る。『一般社団法人日本障害者カヌー協会』は現在、従業員1名とアルバイト1名という体制だ。企画を考えるにもイベントをするにもゼロから始める必要がある。裏を返せば、スポンサー企業の社員が社外でプロジェクトをゼロから立ち上げる“小さい成功体験”を積むにはもってこいの環境とも言える。これも、社内教育の一環として、1年ごとの数字で測れる効果ではなく、もっと先の会社の将来に何をもたらすのかという視点だろう。


 上岡さんは、ご自身の経験からインクルーシブな社会をどうつくるのか、その目標に向けて完全なバリアフリーである水上のパラカヌーをどう広めていくか、同じ目標を目指してくれる企業にとってどんなメリットをもたらせるか、「これから何か始めようとしてる会社さんとこそ、一緒に一から考えたい」と強く話された。

 『一般社団法人日本障害者カヌー協会』を応援してくれる会社さん、是非ご連絡をお待ちしています。
 


▷ 一般社団法人日本障害者カヌー協会




⭐ コミュニティメンバー登録のお願い ⭐

 Inclusive Hubでは高齢・障害分野の課題を正しく捉え、その課題解決に取り組むための当事者及び研究者や開発者などの支援者、取り組みにご共感いただいた応援者からなるコミュニティを運営しており、ご参加いただける方を募集しています。


Inclusive Hub とは

▷  公式ライン
▷  X (Twitter)
▷  Inclusive Hub


いいなと思ったら応援しよう!