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【日本経済新聞要約・考察】第9回 日本のクジラの構成見直しで円安を引き起こせるか

※本要約・考察は2020年3月4日の日経新聞の記事をもとに書いております。

〈要約〉

世界最大規模となる160兆円の運用額を誇る年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用資産の構成を見直す。マイナス圏を推移する国内債券がポートフォリオを占める割合目安を35%と設定している中、その比率を引き下げ代わりに外国債券の比率を高める観測が出ている。長期の実質的な運用利回りを1.7%と設定した上で、月内にも新たな基本ポートフォリオを策定し2020年度から運用を開始する。

160兆円の巨額な運用規模は市場に与える影響も大きく、第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「14年の見直しは日経平均株価を2000円程度押し上げる効果があった」と分析している。

コロナウィルスの感染拡大が内外の株価の重荷となっている中、相場のテコ入れ策として政権が株式比率を上げるのではないかという見方もあるという。しかし、すでに株式の運用比率が50%となっているため現実的ではないという見方が支配的だ。

GPIFの高橋理事長が19年7月に「国内の債券に再投資するのはなかなか難しい」と表明したことも受け、新たな投資先として有力なのが外国債となる。

外貨建ての外国債の購入には円を売り、外貨を入手する必要があるため、為替は円安に振れる。米長期金利が引き下げられたこともあり、新規で外債を買い進めるのは難しいものの外債比率を上げることで円高を抑える余地が残る。

〈考察〉

今回のGPIFのポートフォリオ見直しに関する記事では「外債」と「他国の政府年金基金」について着目することにした。

1. 「外債」

現在、アメリカ10年債券の利回りは0.942%だ。3月3日に米連邦準備制度理事会(FRB)は新型コロナウィルスの経済活動への影響を懸念し、0.50%の緊急利下げに踏み切った。1.00%~1.25%に設定されたのにも関わらず、ここ150年で初めて1.00%台を割り込んだ。

通常であれば、利下げに相応して、米株式市場は下落から反発し高騰するはずが、前日比785.91ドル安の2万5,917.41ドルと急落している。その理由としても、2週間先の定例会合まで待たず、利下げしたことが大きいだろう。リーマンショック以来の緊急利下げにマーケットも経済の悪化を想定させる材料となった。

そんな中、外国債の比率を22~25%まで高めそうなGPIFはFRBにとっては脅威だ。今後、マイナス金利には懐疑的ではある中、市場はあと一回程度の利下げを織り込んでいる。その場合、GPIFが米国債の購入はさらに難しくなる。

外債の比率を5%引き上げることになれば、約6兆円の金額が動くことになる。世界的な低金利が生じている中、クジラとも言われるGPIFがどこの外債を購入するかは見所となるだろう。

個人的にはGPIFは長期投資をしているため、利息や配当を重視すると考えられるため、米国の30年国債などを多めに購入するのではないかと考えている。

2. 「他国の政府年金基金」

現在、大きな積立金を有し、金融市場で運用している国は少ない。カナダ、アメリカ、ノルウェーと日本が主な運用国となる中で、資産規模とそのポートフォリオは下記のようになる。 

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(GPIFホームページより)

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(GPIFホームページより)

ポートフォリオの割合を見てもわかるように、GPIFの債券比率は極めて高い。これは運用目標を低く設定しているからと考えることもできる。

この4つ公的年金基金の運用実績は2004~2018年までの平均を見ると、

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となる。GPIFの運用実績の低さが明らかだ。リスク性資産の保有比率が高い方が実績も高いという当たり前の結果となるが、同時にGPIFの性質が顕著に現れている。リスク性の少ない投資をすることで確実に資産目標を実現しようとしている。それ以上の欲はなく、今回1.7%に設定された運用利回り目標もポリシーアセットミックスの債券と株式の割合は変化しないことを前提にしているのだろう。となる。GPIFの運用実績の低さが明らかだ。

リスク性資産の保有比率が高い方が実績も高いという当たり前の結果となるが、同時にGPIFの性質が顕著に現れている。リスク性の少ない投資をすることで確実に資産目標を実現しようとしている。それ以上の欲はなく、今回1.7%に設定された運用利回り目標もポリシーアセットミックスの債券と株式の割合は変化しないことを前提にしているのだろう。

そのため、GPIFが相場のテコ入れ策として株式比率を引き上げることはないと考えられる。そして、債券側での6兆円規模の巨額な資産の動きがどの商品で起きるのか、そしてそのディールをどの証券会社が獲得できるのか見所だろう。

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