見出し画像

【日本経済新聞要約・考察】第14回 国債購入制限撤廃、市場好感もギリアド治験失敗でリスクオフ強まる

※本要約・考察は2020年4月23日の日経新聞の記事をもとに書いております。

〈要約〉

新型コロナウィルスの感染拡大により、政府の景気判断は「急速な悪化」とし、日銀は27日の金融政策決定会合で追加の金融緩和策を打ち出す最終調整に入った。国債の購入額を、80兆円としている目処を撤廃し、企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)や社債の購入上限額を倍増し、政府との協調姿勢を鮮明にする見込みだ。

政府が財政支出を拡充する中で国債発行は急増する。金利の上昇を抑え込む手段が必要となる。大胆な金融政策を続ける姿勢を示すことにより、金融市場の動揺に備えると考えている。そのためには国債を無制限で購入で切るようにしておく必要がある。

足元では、経済収縮し企業は資金繰りに苦しんでいる。現在、CPと社債の購入枠は合計7.4兆円ある。これらの上限額の倍増により、金利が高止まりしているCPや社債をニーズに応じて柔軟に買えるようにし、大企業を支援する見通しだ。中小企業向けにも、日本政策金融公庫を特別オペの対象にすることと金融機関がオペ利用時に差し出す担保の要件を緩和することを検討している。

〈考察〉

今回の日銀の発表見込みに関する記事を踏まえて「市場の反応」「ギリアド」と「日銀の購入額のメドとは」について考察をする。

1. 「市場の反応」

日本経済新聞が上記の記事を報じた4/23の22:26からの日経先物とドル円の動きを見てみる。

画像1

画像2

実際、上記の記事が出てからは金利上昇抑制を意識したことから、円を売る動きがおきた。日経先物も好感して高騰した。27日の会合の前にと考えた投資家が多かったのだろう。

画像3

しかし、数時間後には反落した。本日の日経平均も下落から始まった。昨日の上昇トレンドと日銀の購入無制限の発表で続伸するかと考えていたが、このようになった理由は主に二つ考えられる。

ギリアドの治験失敗に終わったことが報じられたから、そして、現在の日銀の購入額を無制限にしたところで、現状の80兆円のメドすら満たせてないため大きな変化がないと考える思考が広がったからだ。

2. 「ギリアド」

先週の金曜日に米医薬大手ギリアド・サイエンシズの新型コロナウィルス治療薬候補「レムデシビル」の投与が重症患者の急速な回復につながったとのリポートを好感し、世界の株価指数は全面高となった。市場参加者の多くが、ギリアドの新薬へ期待を寄せる中でのこの発表を受け、コロナウィルスの終息が再度不透明となった。ギリアドサイエンシズの株価は暴落した。そして、リスクオフの姿勢が強まり、株式は売られ、円債や米国債が買われている(利回りは低下している)。そして、安全資産とされる日本円も買われたと考えられる。 

画像4

画像5

しかし、今回の治験失敗の報道には裏があるように感じてならない。今回の治験は中国で行われ、その報告書の流出により失敗が発覚した。加え、治験は参加者不足のため途中で中止されている。従来、データの公表の前には第三者が行うデータ確認も行われなかった模様だ。

4月15日にトランプ大統領が新型コロナウィルスの発生源が武漢市にある研究所だった可能性を調査していることを発表したことを受け、中国による報復の可能性も頭をよぎってしまう。

統計的に正しい結論がまだ出ておらず、途中で中止された今回の治験は最初の治験のため注目はされていたものの、不適切な治験と考えられるため、まだ期待を持ち続けていいと考えられる

3. 「日銀の購入額のメドとは」

日銀は現在、1年間の国債の購入額の目処を80兆円にしている。その「めど」と現実は大きくかけ離れているのが現状だ。昨年の日本銀行が保有する10年国債の残高は1,911,165 億円、2018年は1,777,853 億円だった。(日銀HPからデータ取得)

日本銀行は2019年に国債の購入額のめどを80兆円に設定しているのにもかかわらず、133,312 億円(13.33兆円)しか購入していない。めどの17%も満たせていないのが現状だ。

(2年分のデータをエクセルファイルにまとめましたので、ソースだけではなく、具体的な数値が見たい人は是非見てみてください。一応ダウンロードできるようにしておきます)

今回の発表は「購入枠の上限撤廃」が目標よりも、一段と日銀は流動性供給を拡大し、金融システムの安定・維持を目的としている意思表示を強く感じる。

27日の金融政策決定会合で追加の金融緩和策として注力して欲しいのは、新型コロナウィルスの感染拡大によっても最も影響を受けている中小企業の資金繰りだ。日本政策金融公庫をオペの対象にし、オペの利用時に差し出す担保の要件を緩和する策を強めるべきだ。「新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペレーション」をより強化できるかに個人的には注目している。

いいなと思ったら応援しよう!

NOZの経済分析
よろしければサポートお願いします!サポート頂けましたら、気になるニュースの要約と考察、もしくは気になるデータの統計分析をします!