ピンチをアドリブで乗り越える技 97/100(強調)
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
今日はセリフの意味を伝えるために、イギリスの役者が心掛けるツールをご案内します。
ピンチに陥った時、何に気をつけて話せばいいのかの、ヒントになると思います。
一文の中で強調するべき単語は、基本的に一つであると教わります。
例えば、
Mary had a little lamb.
(メアリーは小さな子羊を持っていました。)
という文章でアクセントをつけて強調すべき単語は一つです。
あれ、今気がついたんですが、この例文って元々はアメリカの童歌から来てるのですが、「メアリーは、小さなラムを食べました。」にもなりますね!(Mary had a little piece of lamb. が自然ですが)
また脱線してしまいました。
さて、どこにアクセントをつけるか、付けていいのは一箇所だけです。
単語によって、強調する意味合いが変わってきます。
MARY had a little lamb.
(他の子達は、別の動物を持っていた)
Mary HAD a little lamb.
(今は持っていない)
Mary had A little lamb.
(一頭だけである)
Mary had a LITTLE lamb.
(大きくない)
Mary had a little LAMB.
(子羊である)
と、それぞれどの情報を重要視するかによって、意味合いが変化していきます。
そしてこれを、長い一文においてもするべきだと言われます。
多くの単語の中から、その分において一番重要な単語を、一つだけ選ぶのですが、これが結構、非情の選択でして、とても悩みます。
しかし、こうすることによって、セリフの意味が相手に伝わりやすくなるとされています。
強調すると決めた単語だけに気をつけて、あとの部分はほぼ流すように言ってしまう方が、むしろ相手に文章全体の意味合いが伝わりやすいです。
先述の、すべての単語を滑舌良く、区切りながら話すスタイルとは真逆ですね。
私たちの耳は、よく聞こえていると思うと、聞かなくなるものです。
どこか安心してしまうのでしょうか?内容が全然入ってこなくなります。
逆に、少し意識的に、耳を傾けなくては聞こえないような状態だと、単語一つ一つの意味でなく、文章全体の意味合いやニュアンスが掴みやすくなります。
日本語でも同じです。
「夕焼け小焼けの赤とんぼ」
は、「赤」を強調しますね。
赤という色が夕日の情景を誘います。
狂言では、「ヤマを作って張る」と表現します。
「この辺りの者でござる。」は
「この辺りの」は沈ませてさらりと言い、
「者で」が張りで、
「ござる」はスパッと落とします。
文章でこう書いても、いまいちピンとこないかもしれませんが、要は、一つの文章の中で、強調すべき単語は一つであり、その他は流すように話したほうが、むしろ自然に聞こえるということです。
ピンチに陥った時って、自分が何を喋ってるのかも分からなくなりますよね?
私も何度も経験があります。
そんな時は、重要な単語だけに意識を集中してください。
その単語さえ相手に伝わっていれば、その前後はある程度あやふやでも、たいして問題ではなく、むしろ全体のニュアンスを受け取ってもらうことができます。