ピンチをアドリブで乗り越える技 53/100(Objective)
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
前々回で、Objectiveに少し触れましたが、今回は詳しくご紹介したいと思います。
私たち役者は、一つの場面を演じるにあたり、
自分のキャラクターの目的は何か?
を定めることが重要であると考えます。
ピンチに陥った時に置き換えるならば、ピンチの前と後では、この目的が変わってきますよね?
そのため、この「Objective」のコンセプトを理解することによって、コミュニケーションの効率が上がるのではないかと思います。
一つの場面を演じるにあたり、私たちは
感情を追うのではなく、
何をしたいのか?
を、明確にすることによって、演技を組み立てていきます。そうすれば、感情というのはそこに付いてくる、と捉えます。
この時、できるだけ自分の中で完結する目的ではなく、相手を念頭に入れることが重要です。
たとえば、告白のシーンを想定してみましょう。
「告白をしたい」
これは、シナリオ上の事実を追っているだけで、キャラクターの目的ではありません。
「好きだという気持ちを伝えたい」
これも、独りよがりなので相応しくありません。ひとりでも「気持ち」を口に出すことは出来ます。
「好きだという気持ちを相手に知ってほしい」
うーん、相手という単語は入ってますが、まだ一方的ですね。
「相手に自分の告白を聞いてほしい」
主語を相手にしたことで、一方的でないように見えますが、よく考えると自分勝手ですよね。まだ自慰行為的です。
ここで考えるべきなのは、
キャラクターが求めている最終的な状態とは何か?
好きだという気持ちを伝えるというのは、目的ではなく、別の目的を達成するための手段、というパターンはないでしょうか?
「相手とお付き合いをしたい」
ちょっと行き過ぎましたね。それは将来的な関係性の話をしているだけであって、この場面で起き得ることではないです。
正解はいくつもありますが、
「相手に笑顔で首を縦に振ってもらいたい」
例えばこれはどうでしょうか?
この時、台本上ではフラれる場面であっても構いません。あくまでも何が起きるかではなく、この状況下の登場人物が何を目指しているかです。
これを「Objective」といいます。
非常にややこしいものなので、説明するのも難しいのですが、単純に捉えれば、願望とも言い換えられるかもしれませんね。
極論を言えば、何を目的と選定すれば、演技がしやすいか?を軸にして考えます。
「相手に笑顔で首を縦に振ってもらいたい」からは、
「こっちも笑顔を多くして、促す様にするべきか」
「首を縦に振ってもらえるように、振る舞わなくてはいけない」
「笑顔で、ということは深刻な感じは出さない」
「かっこよく見えるようにする」
など、その目的へ向かうための、演技として表現できる手段が浮かびやすいです。
でも、これだけじゃドラマにはなりません。
「Objective」が理想の願望だとしたら、そこには相反する現実も必要です。