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【ラジオドラマ台本】恋と雑談とストーカー

 本記事は私が高校時代に制作した創作ラジオドラマの台本に加筆修正を行ったものです。高校放送コンテストのラジオドラマ部門の規定は、上映時間8分程度のものなのですが、自分で声に出して読んでみたら30分程度かかりました。結局世に出すことも形になることもなかったため、この場で供養いたします。






※車内の会話。
SE:車の走行音

A:高校生
B:高校生
C:教員
D:高校生

午後7時。部活で帰りが遅くなった生徒(AとB)を顧問(C)が車で家まで送り届けている。

A「デートってさ」
B「うん?」
A「デートって何話せばいいんだろうな」
B「え?……まぁ、天気の話とか?」
A「ダメ、つまらない。2点」
B「なんなんだよ、せっかく答えてやったのに。つーか何、急に」
A「ほら、初デートでさ、会話が続かないのも嫌じゃん?」
B「そりゃあな」
A「一応考えておきたいんだよ」
B「……なるほど?」
A「なんか、無いの?いい話のネタ的なさ」
B「……まぁ、とりあえず相手に質問してそこから話広げてみたらいいんじゃねぇの?」
A「ふむ、どんなふうに?」
B「いや、どんなって言われても」
A「あぁ、じゃあわかった、お前ちょっと恋人役やって」
B「……なんで?」
A「シミュレーションしたいんだよ。答えるから何か質問してきて」
B「えー…………えっとじゃあ……ご趣味は?」
A「読書」
B「特技は?」
A「掃除」
B「好きな食べ物は?」
A「ラーメン」
B「嫌いな食べ物は?」
A「梅干し」
B「休日はどうやって過ごす?」
A「いや一問一答の面接かよ。話広げろって」
B「うーん。ゴメン、難しいわ。てか、趣味読書ってなんだよ。平凡すぎて話広げにくいな」
A「そこはこう、最近どんな本読んだの?でいいじゃん」
B「無理。聞いたところで本読まねぇから話ついていけねぇし」
A「あ、そうか。うーん……やっぱ共通の趣味って大事なのかもな」
B「…………というかさ、お前いつの間に恋人できたの?」
A「え?できてないけど?」
B「……は?じゃあなんだったのこの会話。意味ねぇじゃん」
A「まぁ、意味なくはないでしょ。いつかできるかもだし」
B「どうだろうな」

(しばらく沈黙)

A「はぁ……恋人欲しい」
B「……あのなぁ、先輩も言ってたぞ。“恋人がほしい、じゃなくて付き合いたいって思える人を見つけなさい”って」
A「付き合いたいと思える人ねぇ。そういうお前はどうよ。彼女にしたい人とかいるの?」
B「いない。興味ない」
A「即答かよ。つーかなんだよ興味ないって。モテるために軽音部入ったんじゃないのかよ?」
B「違ぇよ。お前と一緒にすんな」
A「マジか。お前音楽好きなイメージなかったからてっきりモテるためだと思ってた」
B「んなアホな理由じゃねぇよ」
A「じゃあせめて気になる女子とかいないの?」
B「いないな」
A「えー……あ、あの子は?一年生の、ドラムの」
B「あぁ、最近入ってきた」
A「そう、佐藤さん」
B「佐野さんな」
A「…………で、どうなの。結構かわいいと思うけど」
B「いや、別に……なんつーか、そもそも俺には異性を好きになる機能的なものが備わってねぇんだよ。多分」
A「そうか?今は気になる子がいないってだけの話なんじゃないの?」
B「どうだろうな」
A「例えばさ、誰かから”好き”って言われたら、なんかその人のこと好きになっちゃったりさ」
B「…………あるかも」
A「な?」
B「あるけど、でもそれなんかズルくね?」
A「そう?」
B「だって、こっちは好きでもなかったのに、好きって言われたから好きになりましたって。なんかズルいじゃん後出しじゃんけんみたいでさ」
A「ズルいかなぁ」
B「ズルいだろ」
A「ズルい……かぁ……」
B「え、なに。言われたの?"好きです"って」
A「まぁ、言わ……れた」
B「マジで?」
A「……マジ」
B「え、誰?何組?」
A「いや、名前とかは分かんないけど、下駄箱とかロッカーに手紙入ってて」
B「はぁ?聞きました先生。コイツ誰かもわからない子からラブレターもらったんですって」
A「ちょ、お前」
B「許せねぇと思いません?ひとこと言ってやってくださいよ」

(それまで沈黙し、運転を続けていたCが口を開く)

C「…………や、いいんじゃないの?青春っぽくて」
B「いや青春じゃないですよ先生、裏切りですよ」
A「裏切りってお前」
C「まぁ許してやれよ。どうせ付き合ったとしてもすぐ別れるんだからさ」
A「先生……?アンタそれ、大人としてどうなの」
C「や、実際結構別れるぜ。高校生の恋愛なんてチュートリアルみたいなものなんだから。お前らだってソシャゲのチュートリアルでもらったキャラいつまでも大事にしてるわけじゃねぇだろ?」
A「それとこれとではなんか違う気もしますけどね……」
B「……で、どうするんだよ青春ゾンビ」
A「青春ゾンビってなんだよ。意味わかんねぇよ。……どうするって何を」
B「付き合うか付き合わないかだよ」
A「え?それは……まぁ……」
B「うーわコイツ一人で青春するつもりだ。打ち首にしてやる」
A「なんなんだよお前、急に怖いな……あ、先生、そこ左っすね」
C「うい」

(しばらく沈黙)

B「で……付き合うの?」
A「え?いや、わかんない」
B「わかんないってお前」
A「いやほら、さっきのさ、後出しじゃんけんの」
B「あぁ、ズルってやつ」
A「考えてもみなかったけど、確かにズルいかなぁって。それにさ、なんか勇気が出なくて。一歩踏み出す勇気的な」
B「あぁ、お前そういうところ弱いもんな」
A「弱いか?」
B「弱い。プレッシャーとか、緊張とか、大事な決断に対してお前は弱い」
A「確かになぁ……欲しいなぁ、勇気。……あ、先生はどう思います?」
C「……なにが?」
A「いや、この話全体を通して。大人としてアドバイスとかないっすか?」
C「アドバイス…………まぁ、勇気云々はともかくとして、好きって言われたから好きになるってのは、俺は別にズルくはないと思うけどな」
B「え、どうしてですか?」
C「どうしてっていうか、多分誰だって後出しじゃんけんだと思うぜ。相手に対する想いの熱量は人それぞれなんだから、熱量の少ない方は後出しになっちまう。恋愛が後出し禁止だったら同じ熱量同士の両思い以外成立しない。それはもう、運命でもない限り恋なんかできなくなるんじゃねぇの?」
A「…………すみません。よくわかりません」
C「Siriみてぇな返事だなオイ。真面目に答えたこっちが恥ずかしいわ」
B「まぁ、ズルとか勇気とかはこの際どうでもいいんだよ。問題は、お前だけ一人楽しく青春しようとしてることなんだよ」
A「いや、してないって」
B「してるだろ。なんだよ手紙もらって読んでみたら"好きです"って。青春そのものじゃねぇか」
A「いやでも、手紙もらってるだけだし、名前とか書いてないから相手わからないし」
B「十分だろ。なんだ、何が不満だ。言ってみろこの浮かれ青春ドグサレ野郎」
A「お前さっきからテンションおかしくなってるぞ……いや、不満っていうかさ、量がちょっと多いんだよ」
B「……量?」
A「うん。毎日十通くらい下駄箱とかロッカーに入ってるの。最初はイタズラかなって思ってたんだけどそれにしては手が混みすぎているし……まぁ好かれているのはそれはそれで素直に嬉しいんだけど」
B「え、ちょっと待て。毎日十通?」
A「うん」
B「下駄箱やロッカーに?」
A「うん」
B「手紙の内容は?」
A「まぁ……どれも"好きです"とか"いつも見てます"とか」
B「…………一応確認なんだけど。お前さ、最近なんか身の回りで変なこと起こってない?手紙以外で」
A「変なこと……?まぁ、強いて言うなら無言電話かかってくるようになったかな」
B「…………お前さぁ」
C「役満じゃねぇか」
A「へ?なんすかそれ」
B「いや、お前……それ、ストーカーだって」
A「えぇ?でも別にあとをつけられたりとかそういうのはされてないけど」
B「いや、でもさ……」

(しばらく沈黙)

C「……なぁ、ちょっといいか。そういう話なら一点気になることが出てきたんだけど」
A「なんすか?」
C「さっきからずっとバイクでついてくる奴がいるんだけどさ、アレ、お前らの知り合い?」
B「え?……いや知らないですけど……」
A「……俺も。ヘルメットで顔見えないっすけどバイク持ってる知り合いなんていないっすね」
C「あのさ、もしかしてなんだけどさ」
B「……ストーカー」
A「いやいやいや無いって。ただ帰り道が同じなだけだって」
C「でもアイツ、ずーっとぴたっと俺の車を追ってきるんだよ。なんか変だなーって思ってたんだよ」
A「え、マジすか!?なんで言ってくれないんですか」
C「いや別に言うほどのことではないだろ。ただ帰り道が同じだけかもしれないし」
A「でもぴたっと追ってきてるんすよね!?先生もなんか変だなーって思ってたんすよね!?」
C「おう」
A「じゃあそれはもうストーカーですって!」
B「確定だね……」
A「え、ガチどうするんすか先生!どうにかできないんすか?」
C「え、何?このまま家まで送っていくじゃダメなの?」
A「いやいやダメっすよ!ストーカーに家特定されたら詰みですって!」
C「面倒臭ぇ……じゃあどうすんのさ」
B「振り切ったりできません?」
C「無理無理。俺免許取って一年とちょっとしか経ってねぇし。しばらくペーパードライバーだったし、部活のあと生徒を送り届ける途中で事故りましたーなんてことになったら俺の首飛ぶし」
A「……意外とルーキーでチキンなんすね」
B「まぁ、軽自動車の時点でなんとなく察していましたけど」
C「……お前ら、次のテストの点数から30点ずつ引いとくな」
A「ちょ、冗談ですって」
B「いやぁコンパクトで素敵ですよねー、この車」
C「いや、嘘だから。引かないから安心しろ。それより、ホントにどうする。家特定されたくないなら適当なところで降ろすか?」
A「イヤっすよ!降りたらそれこそ逃げられなくてゲームオーバーじゃないっすか!相手バイクなんすよ!?」
C「まぁ、確かに」
B「どうします?家に送ってもダメ。先生のスキル的に振り切れない。下ろしてもダメ。他に方法あります?」
A「なんか八方塞がりっぽいけど……」
C「……ある。一つだけ」
A「おぉ!」
B「どうするんですか?」
C「通報」
A「えー……」
B「わぁ……シンプル……」
C「こういう時はお巡りさん頼っていいんだよ。ほら、お前らスマホ持ってるだろ。“ストーカーに追われています!”って通報するんだよ。俺運転中だから頼むわ」
B「わかりました……あっ……すみません充電切れてました」
A「おいおいしょうがない奴だな。それでも現代人か?何のためのスマホだよ。スマホなんて電源切れたらただのかまぼこ板じゃないの」
B「……なんで煽るんだよ。先生。コイツここで降ろしましょう」
A「やめろって!……全く…………あれ?」
B「何?」
A「ヤバい……スマホ、教室に置いてきた……」
B「はぁ!?」
C「オイどうすんのさ。通報はおろか外部に連絡もできねぇじゃん」
B「人を散々煽っといて結局自分は忘れてんじゃねぇか」
A「えーっと……あ、先生のスマホは?」
C「ん?ねぇよ?」
B「えっ、なんでですか?」
C「家に忘れてきた、そもそも俺、携帯電話はあんまり携帯しないから」
A「えー……なんすかそれ。てかよく生きていけますね。ホントに現代人っすか?」
B「だからなんで煽るんだよ。あと、お前が言うな」
A「でもどうするんすか。マジの八方塞がりっすよ」
C「…………あー……じゃあさ、もういっそストーカー氏とお話してみたら?」
A「はい!?」
C「だって恋人欲しいんでしょ?案外いい子かもよ」
B「先生ちょっと、何言ってるんですか」
A「そうっすよ刺されたらどうするんすか」
C「いや刺されないでしょ。それにさ、このまま逃げてたって状況は変わらないんだから、さっき言ってた一歩踏み出す勇気ってのが必要なんじゃないの?」
B「先生……」
A「いやいや、なんかいい感じのこと言ってるけど相手ストーカーっすから!走行中の車内から一歩踏み出したら道路に頭打って死にますからね!?」
B「ちょっと上手いこと言ってそうで言ってねぇな」
A「うるせぇ!とにかく、ストーカーと話すなんて無理!」
C「……それなんだけどよ、アイツ本当にストーカーか?」
B「どういうことです?」
C「いや、さっきから着いてくるには着いてくるんだけど、どうも様子が変なんだよ。パッシングしたり手とか振ったりして、こっちに何かを伝えようとしてるっぽいんだよ」
A「そりゃあ、ストーカーだから構ってほしくてアピールしてるんじゃないすか?」
B「……いや、おかしい。確かにストーカーって“お前のことを好きな人間がココにいるぞ”みたいなアピールはするんだよ。それこそ手紙とか無言電話とか。でも、わざわざ追いかけて来て自分の存在をアピールするのはストーカーにしては不自然だ。追いかけるなら、バレないようにこっそりあとをつけて家とか特定するはずなのに」
A「妙に詳しいな」
C「……よし、わかった。とりあえず一回どこかに車止めるぞ」
A「え、え、待ってください」
C「いつまでも逃げていたってしょうがねぇだろ。大丈夫。まず俺が話聞いてきてやるから。お前らは中で待ってろ。」

(効果音:チェンジレバーを操作する。駐車。シートベルトを外す)

A「え、いやちょっと先生?」

(効果音:運転席のドアが開き、閉まる)

A「行っちゃった……」
B「バイクも止まった。追いかけてたのは本当だったらしいな」
A「うわぁ、先生話しかけた。大丈夫だよな……刺されないよな」
B「いや、ないだろ…………ん?」
A「……なんか、俺らのこと呼んでる?」
B「みたいだな」
A「どうする?」
B「どうするって……まぁ、先生が呼んでいるなら大丈夫なんじゃねぇの?」
A「えー……怖いって。相手まだヘルメット取ってないし」
B「何、お前顔見て付き合うかどうか決めるの?」
A「いや違うよ!?得体が知れないから怖いって話!」
B「大丈夫だろ。先生もいるし」
A「いやでも……」
B「いいから行くぞ」
A「え、いや、ちょっと待ってまだ心の準備が」
B「うるせぇ。いいからとっとと一歩踏み出しやがれ」

(ドアが開き、閉まる)

A「わかったから、ちょ、引っ張るなって」

(歩道を歩く二人の足音。片方は半ば無理矢理進むようなイメージ)

B「先生、どうしたんですか?」
C「おう、よく分かんねぇけど、なんかお届け物だって」
A「お届け物…………?あ!それ、俺のスマホ!」
D「……最初は放っておこうと思ったんですけどね」

(ヘルメットの向こうからくぐもった声)
(ヘルメットを脱ぐ。Dの声がはっきりと聞こえる)

D「さすがにスマホは無いと困るだろうなと思って届けることにしたんです」
C「……あぁ、なんだ君か」
A「佐藤さん!?」
D「佐野です。スマホ届けに来ました」
A「あ……あぁ、うん。ごめん、ありがとう」
D「いえ、お役に立てたなら何よりです」
B「佐野さん、バイク通学だったんだ」
D「はい。バイク、好きなんです」
A「へぇ……かっこいいな……じゃなくて、なんで追いかけてきたのさ!?」
C「そうそう。スマホくらいなら明日でもよかったんじゃないの?」
D「いえ、追いかけてというか、私の家もこっち方面なんです。帰宅するついでに届けてしまおうかと思いまして」
A「そっか……よかった……てっきりストーカーかと……」
D「ストーカー?」
B「あぁ、いやゴメン。こっちの話」
A「……あのさ、一応確認なんだけど、佐野さん、俺のロッカーに手紙とかいれたりした?」
B「おい」
D「……手紙?なんですかそれ」
B「いや、コイツに毎日大量に届くらしいんだよ」
D「私じゃないです。そもそも私、先輩方のクラス知りませんし、ロッカーや下駄箱の場所も知りません」
A「そっか……じゃあ結局誰なんだろうな……」

(Cが少し離れた車の前から声をかける)

C「おーい、そろそろいいか。送ってくから早く乗れ」
A「あぁ、すんません。大丈夫っす。俺の家ここからなら歩けばすぐ着くんで。送ってくれてありがとうございました」
C「そうか。お前は?」
B「え?あぁ……俺はもうちょっと先です」
C「了解。もう遅いから、早く行くぞ」
B「はい。それじゃあ、また明日な」
A「おう、お疲れー」
D「お疲れ様でした」
C「お前らも早く帰れよー」
A「はーい」

(遠ざかる二人分の足音、車のドアが閉まる音。横を道を通り過ぎる複数の車の音)

A「…………あのさ」
D「はい?」
A「スマホ、本当にありがとう」
D「いえ」

(沈黙)(通り過ぎる車の音)

A「……夕焼け、綺麗……だね」
D「そうですね」

(沈黙)

A「…………佐野さんの好きな食べ物、何?」
D「パンです」
A「嫌いな食べ物は?」
D「メロンです」
A「ご趣味は?」
D「急にどうしたんですか。面接ですか?」
A「あぁいや……ごめん、なんでもない。」
D「そうですか」

(沈黙)

A「……お腹空いたね」
D「そうですね」
A「……どこか……食べに行こうか」
D「…………え?」
A「奢るよ。スマホのお礼に」
D「…………いいんですか?」
A「えっ、うん。お礼……したいし」
D「……わかりました。では、お言葉に甘えて」
A「じ……じゃあ、行こうか」
D「はい」

(AとDの会話。徐々にフェードアウト)
(エンディングっぽいBGM)


シーン転換(突然BGMが途切れる。車の走行音。車内に戻る)

C「あの二人、なんかいい感じだったな」
B「名前間違えてましたけどね」
C「あぁ、佐野を佐藤な。あれは無いわな」
B「…………あの、先生。ちょっと気になるんですけど」
C「どうした」
B「佐野さんのことなんですけど、どうしてあの子がアイツのスマホ持ってたんですかね」
C「え?そりゃお前、たまたま見つけたとかで」
B「でもアイツ、教室にスマホ忘れたって言ってたじゃないですか。なんで二年生の教室にあるスマホを佐野さんが見つけたんですかね」
C「……なんか、通りがかったんだろ」
B「でもあの子、”先輩方のクラスは知らない”って言ってたんですよ」
C「お前、なんか怖いこと言おうとしてないか」
B「いや、ただ気になっただけで……あぁ、あと、"ロッカーや下駄箱の場所も知らない"とも言ってたんですけど」
C「続けるのかよ。というか、よく覚えてるな」
B「俺らが手紙の話の中で話題に出したのはロッカーだけなんですよ。どうして下駄箱のことまで否定したんでしょう」
C「…………」
B「もしかして、アイツに毎日大量の手紙を送っていたのって……」
C「なぁ、この話やめようぜ」
B「…………そうですね」

(しばらく沈黙)

C「お前はさ、」
B「はい?」
C「お前はさ、賢いんだよ」
B「何ですか急に」
C「まぁ聞け。賢いから色々なことに勘付いちまうんだろうけどさ、世の中には謎のままにしておいたほうがいいこともあるんだよ」
B「よくわかりませんね」
C「言うと思った。まぁ俺はお前のそういう賢いところは嫌いじゃねぇぞ。教えやすくて非常に助かる」
B「……前もそんなこと言ってましたね」
C「言ったか?」
B「えぇ、”扱いやすくて好きだ”とか」
C「言ったっけ?」
B「言われました」
C「覚えてねぇなぁ」
B「……無責任ですね」
C「まぁな」

(しばらく沈黙)

C「にしてもすっかり遅くなっちまったな。なぁ、ちゃんと親御さんに連絡したか」
B「いや、スマホの充電切れているんですって」
C「あ、そうか。まずいな……どうする?」
B「いや、どうするって言われても……」
C「まぁいいや。俺の家すぐそこだから携帯取ってくるわ」
B「あ、そうだったんですね…………わかりました。…………あの、先生」
C「ん?何?」
B「俺実は、車とかそういう閉所で一人きりになるの苦手なんですよ」
C「……?おう」
B「お家まで、ついて行ってもいいですか?」

 終

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