私の英国物語 West End Lane NW6 (9) British English
日本の英語教育は、戦前は British English が主流だったが、戦後は American English が主流となっている。 映画やTVドラマもアメリカのものが多く、耳にするのもアメリカ英語の方が多い。
英国で生活するからには、British English を話さなくては通じないので、語彙や言いまわし、発音をイギリス英語にしていくことになる。
語彙や言いまわしは、本やテキスト・ブックで知識を得ることができるが、発音に関しては、半ば意識しながら発音して矯正していく。
アメリカ英語独特の巻き舌で発音される “r” や誇張された母音、はっきりしない子音の発音は、英国ではご法度。
特に “t” は、はっきりと発音する。 “water” は「ワラー」ではなく「ウォーター」、“twenty” は「トウェニィ」ではなく「トウェンティ」、“vitamins” は「ヴアイダミンズ」ではなく「ヴィタミンズ」など。
これらの発音は、Standard English の RP (Received Pronunciation) 、つまり、社会的に容認された標準発音といわれる。
Standard English は、中世以来、政治、商業、学問の中心だった英国南東部、ロンドン、オックスフォード、ケンブリッジのこれらの地域で話されていた言語で、上流階級のクイーンズ・イングリッシュ、知識人を中心としたオックスフォード・イングリッシュ、誰にもわかる BBC イングリッシュが元になっている。
しかし、British English は一つのものではなく、その国名 The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland が示すように、多くの地域に方言があり、また、封建時代からの社会的階層において話される言葉がある。(現在では、これらの社会的階級は、教育や経済活動の向上によって流動的になっているといわれている。)
ゆえに、スタンダード・イングリッシュを話すのは人口の3%くらいだといわれ、人々は方言に愛着をもって話している。
最初は何を言っているのかわからなくて絶望してしまうが、やがて耳に慣れてくると方言が好きになってくる。
ロンドン東部、ポスト・コード E に住む人々、 East Enders の発音は Cockney といわれ、コックニーといえば、有名なハリウッド映画 My Fair Lady (1964) で Audrey Hepburn 演じる Covent Garden の花売り娘 Eliza Doolittle が貴婦人になるべく、音声学者の Henry Higgins 教授から発音の矯正レッスンを受ける印象的なシーンを思い出す。
タイトルの “My Fair Lady” は、”Mayfair Lady” をコックニー・アクセントで発音したもの。
Mayfair は、裕福な人々が多く住むといわれる地域で、高級ホテルやおしゃれなレストランもある、日本大使館の裏手一帯の地域。
英語を話すにあたっては、日本人が苦手とされる “R” と “L”、“V” と “B”、“Th” と “S” の発音の克服もあり、アクセントやイントネーションも重要。抑揚のないスラスラとした話し方は、上手に話せているように聞こえるが、実はそうではない。
口の筋肉をしっかり動かして、そして、額と背中に汗をかかないと、なかなか習得するには至らないものだ。
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