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私の英国物語 Broadhurst Gardens NW6 (35) 日本の家庭料理

月日の経つのは早いもので、9月から始まった英国国際教育研究所での英語講座と日本語教師養成講座もいよいよ終了の日が近づいてきた。 
日本語教師養成講座では、緊張しどおしの教育実習もなんとか終わり、Certificate の認定試験も終わって、あとは結果を待つのみ。
 
日本語教師養成講座のクラスメイトは、年齢も20代から50代と幅広く、他の英語学校に通う学生や英国南東部 Kent から電車で通ってくる現役の大学生や駐在員の奥様、英国永住者のシニアの方など、背景も様々で、とても楽しいクラスだった。
クラスメイトのフラットに集まって、教材を作ったり、教育実習の予行練習をしたりしたのも楽しい思い出。
 
教育実習には mock student を募集するのだが、実習生による無料の講座とはいえ、平日の昼間に生徒になってくれる人たちが集まってくれるのだろうか、と思っていた。
しかし、大都会ロンドンでは、そんな心配は無用。20代から60代まで、日本語や日本文化に興味をもっている人々が、教室に足を運んでくれた。
「ひどい授業だ。」と、翌日から来てくれないのではないか、という心配も無用で、教育実習期間中、熱心に授業を受けて下さり、本当に感謝!
 
試験も終わってほっとしていた、3月も半ばを過ぎた頃、Vivian から何か日本料理を作ってほしいと言われた。
Mrs. Martine や Vivian、Andrea、Inken、Kathrin に、いつか、何か日本のものを紹介できたらな、と思っていたので、快く引き受けることにした。
 
さて、メニューは何にしよう。 寿司は、もちろんヨーロッパでも人気だが、ほうれん草をくてくてになるまで茹でるミセス・マーティンに生の魚は無理だろう、かといって、凝った料理ができるほどの腕前はないし、と日本から持参した料理の本をパラパラ捲っていて目にとまったのが、これぞ日本の家庭料理、「肉じゃが」。 これにお味噌汁、そして、ご飯は付け合わせにするといいかも。
英国ではジャガイモが主食。ジャガイモは、フライ、ローストやマッシュ、シチューなど、色々な料理で食される。

ヴィヴィアンには肉じゃがの材料をそろえてもらった。 ジャガイモ、にんじん、玉ねぎ、インゲンやグリーンピースは英国では定番の食材。 牛肉は、お店で薄く切ってもらうように、とお願いした。
炊飯器などはないので、ご飯は鍋で炊くことにして、お味噌汁はインスタントのものにする。
調味料は何でも使っていいとのことなので、足りないものを買いに行く。
醤油は、英国のスーパーマーケットでも売られている。 そして、Soho の Brewer Street の日本食料品店で料理用の酒、みりん、インスタントのお味噌汁、手鞠麩、お米は一番小さい袋を選んだ。

 日曜日の夜に催した「日本食の夕べ」は、皆の好奇心を満たして、好評に博した。 お味噌汁の彩りに入れた手毬麩、「これは、何からできているの?」との質問も。
いつか使う機会があればいいな、と日本から持参した、お箸と桜の花片形箸置きも趣を添えることができた。
日本の家庭料理 「肉じゃが」は、英国の “beef stew” が元になっているという蘊蓄話も食卓の話題に。

1871年から1878年、英国に官費留学した東郷平八郎は、その後、日本海軍の司令官として日清、日露戦争の勝利に大きく貢献し、日本の国際的地位を引き上げた。
「肉じゃが」は、彼が、英国海軍食だったビーフ・シチューを日本で取り入れられるように命じたことによって誕生した。
「東洋のネルソン」と称された東郷元帥の遺髪は、英国海軍提督 Horatio Nelson の遺髪とともに、瀬戸内海、江田島の海上自衛隊幹部候補生学校に厳重に保管されているといわれる。

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