私の英国物語 Broadhurst Gardens NW6 (29) Richoux, Piccadilly
冬休みも終わりに近づいてきたある日、フラットの電話ボックスからベルの音が聞こえてきた。
電話ボックスは、コイン式の pay phone と stool が置いてあるだけの極小部屋。 携帯電話も今ほど普及していない頃のこと、大家さんに気兼ねなく使える電話があるのは、学生たちにとって、とても便利なことだった。
「アンドレアたちの友達からかしら、でも、まだドイツから戻ってきていないし。」と電話にでてみると、英語講座のクラスメイトのCNさんの声。
クリスマスをご主人とドイツで過ごし、英国に戻ってきたとのこと。
旅行の土産話も聞きたいし、久しぶりに外でお茶をしましょう、ということになった。選んだティールームは、Piccadilly にある "Richoux"。
Richoux へは、地下鉄 Jubilee Line の West Hampstead から地下鉄に乗って、Green Park で下車。Green Park 側の出口から出て、The Ritz を通り過ぎ、Piccadilly Circus 方向へ歩いて行くと 高級磁器 Royal Doulton のショップの隣に赤い看板のカフェ・レストラン Richoux が見えてくる。
Richoux は、19世紀に流行した William Morris のデザイン、バラ、ユリ、チューリップ、柳などの植物をモチーフにしたデザイン、の壁紙も美しく、落ち着いた雰囲気の中で “classic afternoon tea” を楽しむことができる。
旅行のガイドブックに英国航空のフライト・アテンダント推奨のカフェ・レストランと掲載されていて、ロンドンで暮らし始めるずっと以前に旅行で訪れて以来、お気に入りのティー・ルームになっていた。
Richoux は、1909年、2人のフランス人によって “Patisserie and Confectioner” として Baker Street で創業された。 第二次世界大戦後は the Richoux Tea Room として事業を再開、そして、レストラン・グループを展開している。
カフェ・レストランは、Piccadilly (W1)の他にも Mayfair (W1)、Knightsbridge (SW3)、 St. John's Wood (NW8)、High Wycombe, Buckinghamshire にも支店がある。
Richoux に姉妹店があるとは知らなかったが、その後、偶然にもKnightsbridge と St. John’s Wood にあるお店を訪れる機会ができた。
ロンドン在住のフランス人とイギリス人の知人に連れていっていただいたが、白を基調にしたモダンなインテリアだったりと、それぞれにインテリアも違っていて、趣も違ったものになっていた。
お気に入りのカフェ・レストランの一つだった Richoux は、その後、経営者が変わったり、また、昨今の The COVID-19 pandemic の影響を受けて、次々と姉妹店を閉店し、Piccadilly のカフェ・レストランも Soho へと移転して、新たにオープンするということである。