ちいさな贈り物
パンッ!という音が車内に響いた。
日曜日の夕方、街中から家路を急ぐモノレールの車内。
皆の視線が音のした方へ向かう。
視線の先には小さな女の子とお母さんが座っていた。
小さな手には、1本の紐が握られていた。
もう手を離しても飛んでいくことはない、けれど、数秒前と同様にしっかりと手に握りしめている。
先程まで風船であったであろうピンクの欠片のついた1本の紐を。
びっくりした顔をしたまま固まっていた女の子は、次の瞬間ワッと泣き出した。
向かい側の席に座っていた男の子が立ち上がり、黙って手を差し出す。
その手には小さな黄色い風船が握られていた。
女の子は泣きやみ、恥ずかしそうにうつむきつつ、受けとる。
女の子のお母さんが遠慮するも、男の子のご両親といくつかの会話を経て黄色い風船は女の子の元に渡った。
ゆっくりと減速し、列車が駅へとたどり着く。
お母さんは何度も頭を下げ降りていく。
女の子の手には黄色い風船がさっきよりも大事に握られていた。
Boy meets girl
扉が閉まり、ゆっくり走り出した車内にふたたび大きな音が響いた。
堰を切ったように先程の男の子が泣いていた。
小さな風船は女の子同様、彼にとっても宝物だったのだ。
あまりのいじらしさに思わず目頭が熱くなる。
ふたたび扉が開いた。
階段を降り、改札へ急ぐ僕の目はこらえきれず涙目になっていた。
明日へ向かう心があたたかく、前向きになっていた。
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