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新作試演会『桜の森の満開の下』出演者コラム / 黒橋拓

同じく桜がモチーフになっている作品に、梶井基次郎の『桜の樹の下には』という短編があるのですが、僕はこれを大変気に入っています。

どう気に入っているかというと、とにかく口に出して読むのが気持ちいいんです。演劇を始めて少し経った頃に出会って、それから事ある発声練習の度にこの作品をそらんじています。「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という書き出しからもう最高です。

すぐ読めるしネットにあるのでぜひ調べてみてください。

今回の『桜の森の満開の下』は2か月前くらいに初めて読みました。その時の印象はなんというか、圧倒的な狂気に浸されてずっとぞくぞくし続ける、みたいな感じでとても好きでした。

で脚色された今回の舞台なんですけれど、僕は今回は自分の演じる人物と向き合うというより、『桜の森の満開の下』という作品の文章と向き合う、ということが時間のほとんどを占めています。

稽古が始まっていざ台詞を口に出して読んでみたら、これがもうめちゃくちゃ読みにくかったんです。どう発話すればいいかが難しかったです。でも稽古が進んで台詞も頭に入って、繰り返し繰り返し口に出すことをやっていくと、だんだんと馴染んでリズムを掴めてきた感覚があります。

正直、まだ『桜の樹の下には』を読むときほど自分のものにはできてないんですが、ここから本番までの間で、作品の文章の性格とリズムをより理解して、それを僕自身と、自分の役とうまいことミックスして、世界観を立ち上げていきたいと思っています。

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