電話対応の話
最近、私は他県から地元に戻ってきた。
地元に戻りたかったわけではないのだが、
主人の激務に私が耐えられず心身ともにぼろぼろになってしまったのと同時期に地元で丁度探していた仕事の求人が出ていた上に主人の頑張りが実り転職が成功したからである。
偶然なのか必然なのか。
陳腐な言葉で表すのならば運命とでもいうのだろうか。
わたしは仕事量さえ減ってくれれば他県のままでよかったのに。
他県は今住んでいる地域よりも田舎で、何もなくて不便だ不便だといいつつ慎ましやかに生活するには十分だった。
海までも近く何をするでもなく椅子をだし本を読む。幸せだった。
一生その地に留まるつもりはさらさらなかったのだけれども、もう少し長くは住んでいたいと思っていたのに。
と、いうか会社の上司にも掛け合ってくれて私の体調もどうもおかしいし(今考えると鬱の始まりだったのかもしれない)どうにかこうにかしてくれと何度も何度も頼んだうえでどうにもならなかったための【仕方なし転職】である。
そして地元に戻ってからというものの、不幸が続いている。(気のせいかもしれないけれど)
その不幸はまた今度においておいて、引っ越しでめんどくさいものは住所変更だ。
一番めんどくさいかもしれない。
私は何度も引っ越しを経験しているので、旧住所に置き去りになっている手紙たちも数多くあることだろう。
ごめんなさい、郵便局員さん、手紙を出してくれた人、あとからその部屋に住んだ人。
そして紙となる原材料の木、もっといえば地球よ、すまない。
なんて気にもなってくる。人間は生きてるだけで罪が多い。金もかかる。
息してるだけで申し訳なくなる。
まあ、そんなことは置いておいて
とにかく住所変更だ。
あらかた終わったと思っていたが、
細かいところまで気が回らず昨日電話がきた。
まさかの銀行からだ。
新しいカードを送付したのに届かないと。
住所変更をするように、と。
私は電話が大の苦手だ
昔ピザ屋さんで働いていた時に
初日にわけもわからず電話を取らせられ
てめぇじゃ話になんねぇから店長だせ!
と怒鳴られた時から電話は苦手だ。
美容室なんかも基本的にホットペッパーで頼むか、美容師さんと仲良くなってインスタのDMから直接予約を取るくらい電話が嫌いだ。徹底的に。
でも、銀行カードの住所変更をするには支店にいって行うか、電話でしかできないという。
悩む私。
支店までは距離が結構ある。坂道もある。あの場所までは自転車初心者の私はまだいけない。
いきなり怒鳴られることなどないと自分にいいきかせて話す内容を予め考え、受け答えの練習をしていざ覚悟をきめ電話をかけてみる。
拍子抜けするくらい明るく優しい声のおばちゃんだった。(おばちゃんじゃなかった場合猛烈に申し訳ないのだが)
これはもうこっちのターンだ。
聞かれたことを淡々と丁寧に答えていく。相手も丁寧で優しい。うれしい。
とてもゆっくり話してくれる。
聞き間違いがないように、ゆっくり話してくれているのであろう。
でもそんなにゆっくり話すの?電話代こっちもちなんですけど??なんて気もよぎる。
自分の中のもう一人の自分が、
優しいんだからいいんじゃないか。
滞りなく物事も進んでいるんだし。
なんて語りかけてくる。
でもでもでもでも
わたしはせっかちなのだ。
ちゃっちゃとすませて、
ちゃっちゃとしたいのだ。
ゆっくりしていってね~ができないのが
私なのだ。
それもまた、家庭環境が起因となっていて病気になった原因の一つなのだけれども。
穏やかになりたいと願いつつ、行動はスピーディーにやらないと不安になる臆病もの
それがわたしなのだ、That’s Me である。
お金もない、学もない、得意なものの趣味もない。
でもいつかThat’s Me というお店は持ちたい。
そんなことは考えているけれども。
とにかく電話だ。優しい電話対応のおばちゃんと話している最中に
そんなところまで意識が飛んでしまった。
おそるべき、優しいコールガール。
そのままゆっくりと、つつがなく作業は進み途中でお礼を伝えると少し嬉しそうにこちらこそありがとうございますと返事が来た。
あぁ、きっと電話で顔が見えないからといって横暴な人とのやりとりも何回もしてきたのだろうなと考えたりする。てめぇじゃ話にならねぇ、上の人を出せつって。
ゆっくりなくらいいいじゃない。
優しく丁寧なんだもの。
そんな風に思い直す。
ただね、
銀行カードの住所変更を行っただけなのにここまで力を使うのか、と。
生きていくとは本当に大変なことである。
銀行のコールガール、優しくて穏やかな声をありがとう。
今日一日また自転車に乗る活力がわいてきた。
今日はどこにいこうか。
なんてね。
おしまい
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