食べることについて
炭水化物多めのランチをガッツリ食べたり、
夜は連日会食続きな生活をしていたところ、
現実から目を逸らしてはいたが、体重は着実に増えていた。
ダイエットのために散歩したりしたけれど、
習慣にならず数日で終わり、効果はなかなか、見た目にも数字にも表れない。
ひと月後には妹の結婚式もあるし、妻は「太ったよね」とハッキリ言う。
何としても痩せなければ・・・
「ファスティング」という名の、酵素を飲みながらの断食の存在は知っていた。
知人友人が成功して痩せていたからだ。
だが会食続きの生活を送っていたので、やりたいと思いつつも、ずっと手を出せていなかった。
しかし、今年のゴールデンウィークはノープランで、
せっかくの機会なので、夫婦でファスティングに挑戦することにした。
挑戦することを決めたが、どうやればよいのか?
ネットで検索するも、なかなか良いところが出てこないし、値段も高かった。
必要なのは安全な進め方を指導してくれるプロと酵素ドリンクだが、
ネットだと見つけることができなかった。
ファスティングに成功した友人に聞いてみたら、
すぐに友人のファスティングマイスターを紹介してくれた。
Zoomでカウンセリングしてくれたファスティングマイスターは心身ともに健康的な美女であった。
同じZoomには我々夫婦の、食べ過ぎでむくんだ顔が映し出されていた。
Zoomは慈悲なしに現実を映し出す。
余談だが、最近、男性の美容意識が高まっている理由は、
コロナでオンラインミーティングが増えて、
普段、鏡を見なかった男性が、PC画面に表示される自分の顔を見るようになったためと言われている。
話を戻す。
僕はファスティングについて無知であったが、
マイスターが丁寧に説明をしてくれた。
ファスティングで酵素ドリンクと水以外は何も食べない期間は3日間だが、
準備食2日間、断食3日間、回復食3日間になるので、8日間自由に好きなものを食べることができない生活が始まる。
夫婦二人で8日間コースの費用は、
酵素ドリンク2本とカウンセリング料でだいたい7万円くらいであった。
金額だけ聞くと高い気もするけれど、
ファスティングをしていなければ、連休中いろいろな場所でいろいろなものを食べていただろうから、結果としては安いのかもしれない。
物は考えようだ。
こうしてファスティングプログラムが始まった。
まずは準備食。
準備食は動物性食品を避けた野菜が中心の食事を食べる。
食べたメニューを送ると、マイスターが次回の食事に向けてアドバイスをしてくれる。
いつもよりも量が少ないのでお腹が空いたが、
今回はお金を払っており、何としても成功したかったので我慢できた。
そして3日目から断食に入った。
ここから3日間、口にできるのは酵素ドリンクと水、そしてマグマソルト(岩塩)だけである。
酵素ドリンクの原液を500ミリの水に溶かしたものを一日4本飲む。
写真の茶色い液体が酵素ドリンクである。
うんこみたいな色である。
このドリンクを毎日2リットル飲む。
断食1日目:
指示通りに一日中酵素ドリンクを飲み続けた。
今回は夫婦でファスティングしていたが、子どもにはご飯を作る必要があった。子どもにも断食をさせるわけにはいかない。
子どものご飯が我々を誘惑すると思ったが、
酵素ドリンクの効果はすごく、
子どもが食べる姿を見ても全く食欲がわかなかった。
お腹が空きすぎて寝れないということもなかった。
1日目は不思議なことに全然お腹が空かずに終了した。
断食2日目:
さっそく体の変化が起こった。
朝起きると、体が軽く、目覚めが良かった。
また鏡を見ると顔のむくみも取れていた。
心なしか顔がシュッとしていた。
2日目も酵素ドリンクを作って飲み続けた。
何も食べてないが、この日も一切食欲はなかった。
夜に体重を測ると2kgも減量していた。
断食3日目:
この日も朝の目覚めは良く、体が軽かった。
3日目でも食欲はなかった。
この日は断食最終日であるが、試練の日であった。
友人達を呼んで、我が家で人狼大会をしたのだ。
食事は一人一品持ち寄り形式。
7人くらいの友人が来てくれて、各自が美味しそうな料理を持ってきてくれた。
焼き鳥、唐揚げ、寿司、中華、ケーキなど食べ物がテーブルに並んだ。
その誘惑に食欲が湧くかと思ったが、さすが最強の酵素ドリンクである。
それでも一切、食欲は湧かなかった。
もはや、僕の防御力は岩石の巨兵並みであった。
鉄壁の守りなので、食べたいという気持ちにはならなかったが、
どこか寂しい気持ちになった。
周りが、「これ、美味しい!」と言っても僕は食べることができない。
僕はそれに対して、「それ、美味しそうだね!」と言い返す。
しかし、食べない。
外野の観察おじさんである。
テーブルの上には酒と食べ物が並ぶが、それらに手をつけなかった。
傍から見ると、僕の姿は、酒も飲まず、食べ物も食べずにガチで人狼で勝ちにいってる人に見えただろう。
なお、人狼大会はとても楽しかった。
こうして、一切何も食べることなく断食期が終了した。
ファスティングは意外と簡単だったなと思った。
しかし、翌日から始まる回復食が断食期間よりも過酷であった。
回復食1日目:
人によってはここからがファスティング本番という。
3日間空っぽで休んでいた胃と腸が再び活動を開始するのである。
回復食の初日はスッキリ大根と梅干しであった。
大根で茹でて柔らかくしたものと梅干を食べるが
こんなメニューでさえ、身体に入るとガツンとくる。
食後は消化にエネルギーが使われて、身体に力が入らなかった。
すぐに横になりたかった。
こんな経験は人生で初めてであった。
正直、断食期よりもこの時期の方が辛かった。
回復食2日目:
この日の朝はフルーツとみそ汁だった。
みそ汁は具なし。
こんなメニューでも、すぐにお腹が一杯になり、
消化にエネルギーが使われて、身体に力が入らなかった。
食べて疲労感を感じる、、
その日の晩御飯は、ぬか漬けであった。
普段、ぬか漬けは特に美味しいとは思わないが、断食後は味覚が研ぎ澄まされており、とても美味しく感じた。食べ物の有難みがわかる。
回復食3日目も同じような食事を食べた。
消化に慣れてきて、少しずつ以前のコンディションに戻ってきた。
プログラムの最終日の夜に体重を測ったところ、
断食期は3kgの減量であったが、さらに3.5kgまで減量していた。
こうして、無事にプログラムは終了した。
結果的に8日間で3.5キロ減量することができた。
最初は本当に効果があるのかわからず半信半疑であったが、
ファスティングをやって良かったと思う。
そして、ファスティングから大きな学びを得られた。
それは「”食べること”が日常をどんなに彩ってくれていたか」ということに気づけたことだ。
これまで「食べる」というのはごく当たり前のことだった。
その当たり前が今回、ファスティングで奪われた。
断食期は先ほども書いたように食欲は一切なかった。
最初はすごい!何も食べなくて良い!と感動していた。
しかし、途中から感動は虚無感に変わっていった。
日々の生活の中に楽しみがないのである。
どこかに出かけても、ただ見るだけで何も食べずにそのまま帰宅する。
何か物足らない。
人狼大会の時のように、誰かと一緒にいても、美味しいものを食べる時間を共有できない。
さらに食事の時間もないので時間が経つのが遅く感じる。
食事というのは健康を支えてくれる大切なものであると同時に日常の小さなエンタメであると気づいた。
今日のランチは何を食べようとワクワク考える。
日々忙しく過ごす我々にとって、
食事というのは毎日、自分が選ぶことができる小さな楽しみなのだ。
今日の晩御飯は焼肉。
それだけで朝から気持ちが高まる。
食事ができない生活に、日々の楽しみを見出すのは難しかった。
食を断ったことで、食の大切さ、重要さに気づいた。
それが大切なものだったと気づくのは、大抵失った後だ。
病気になって健康の大切さを感じる。
転職して、前の会社の良さを知る。
海外に行って、日本の良さを知る。
別れて、その人の大切さを知る。
などなど、例を挙げるとキリがない。
そうして何かを失ってみることが、人生を深く味わい深いものにするのかもしれない。
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