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子どもが産まれるということ⑤ - 準備万端
前回の記事はこちら(22の壁)
ようやく28週に入った。
妻のお腹の中の子の内臓はほぼ完成に近づいて、体重も1,000グラムを超えた。生存率95%。生まれたら、生きられる。ホッとした。
僕は仕事をしていたのでそれほど長い時間には感じなかったが、寝たきりの妻はとにかくこの日だけを待ちわびていたようで、深夜0時ピッタリに「28週に入った!」と連絡がきていた。
次の目標は1カ月後の32週。ここまでいくと排泄機能が完成する。
人間がどう出来上がっていくのかアプリで見ながら1週1週が過ぎていき、32週も過ぎ、妊娠34週目に入った。
この日は妻が通っている病院でマタニティレクチャーを夫婦で受けることになっていた。
この病院では夫もこれを受けないと、出産時に立ち会いできないことになっている。妻の車椅子を押して院内を移動した。
普段は集団で赤ちゃんの人形を使って沐浴の練習などを行ったりもするようだが、コロナなので個別に助産師から口頭で説明を受けるだけだ。
助産師から出産に向けての冊子を渡されて、説明を受けた。
僕は冊子のイラストが高校生に見えて、なんでこんな若い夫婦のイラストを使ったのだろうとどうでもよいことが気になっていた。
レクチャーが終わり、妻の実家に戻った。
今日この日は、赤ちゃんの名前をそろそろ決めようと話をしていた。
これまではお腹の子を胎児ネームでずっと呼んでいた。
胎児ネームは”ターボちゃん”。
アラレちゃんに出てくる則巻ターボのターボである。
理由は特になかった。
赤ちゃんなのでターボちゃんで良いかといった程度である。
(ちなみに後日知ったのであるが、Dr.スランプではターボは宇宙船にはねられて、命を失うが、宇宙人の蘇生技術で蘇るという少し縁起が悪かった。。不死身という意味では縁起が良いのかもしれない)
なので赤ちゃんを流産しかけたときも、
「ターボちゃんが死んじゃうかも」「ターボちゃんはまだ生きてる!」というやり取りをしていた。
名前を決めるといっても、初めてのことなのでどのようにやったら良いかわからなかった。
性別が男の子とわかったので、名前をターボにするというのもあったが、
画数が悪かったので却下になった。
名づけで画数にこだわるか否かは人それぞれだと思うが、義父が画数を大事にする人だった。義父から名前は親から子どもへの最初のプレゼントなので、真剣に考えるようにアドバイスをもらった。
義父がもう一つ大事にしているのが、名前の最初が「A」の音になることだった。つまり「さ」とか「な」とかである。
ちなみに僕の名前は、神社の神主に決めてもらったそうだ。
岡山県の笠岡市に神社があって、そこの神主に両親名前、生まれた日時を伝えると、一つだけ名前を考えてくれるらしい。希望の名前がある時はそれを見てくれるそうだ。
出生届の提出は生まれてから14日以内と決まっているので、それまでに神社に行って名前をもらう必要がある。
僕の時も、生まれてからすぐにおばあちゃんが神社に行って、出生時間を伝えて、名前を教えてもらって決まったらしい。画数も良かった。
妻と相談して、まずは自分達で名前の候補をいくつか考えて、最後にその神社に見てもらう順序で進めることにした。
画数には新字体で数えるものと旧字体で数えるものがある。
同じ漢字でも新字体か旧字体によって画数が変わるのである。
姓名判断で新字体を使うところもあれば、旧字体を使うところもある。様々な流派があるそうだ。
どうせなら新字体、旧字体、どちら見ても最強の名前にしようということになった。義父が新字体と旧字体の良いものが数値でわかるプログラムを組んでくれた。
それを参照しながら僕の苗字と相性の良い画数の新字体と旧字体をピックアップし、エクセルに落とし込んでいった。こんな感じだ。
このリストの中から妻と一緒に音の響きや漢字の意味などを見て、さらに絞りこんでいった。
そして最終的に決まったのが、大善(たいぜん)という名前である。
実は大善以外の名前は、画数から逆算して考えたが、大善だけは違った。
ある時妻がLINEで「大善」と送ってきた。
読み方を聞くと「たいぜん」で、いいなと思っていた。
画数も良かったので名前の最終候補にも入っていて、最後は二人とも大善でなくなったら寂しい、という気持ちになっていた。
神主さんに見てもらって、もし大善がダメだと言われても、僕らは大善を選ぶだろうと思った。
こうして妻と満場一致で大善になった。
漢字もシンメトリー(左右対称)で見栄えも良い気がする。
小さい時は”たー坊”、つまり”ターボ”とも呼べなくはない。
この頃、妻がどうしてもマタニティフォトを撮りたいと言い出した。お腹の大きさをアピールしながら綺麗な写真を撮るやつである。
妊娠期間は寝たきりで辛過ぎたが、ターボちゃんが大きくなったら妊娠中も楽しかったという写真を見せてあげたいという。
スタジオアリスでは衣装も貸してくれて、一枚無料でマタニティフォトを撮れるそうだ。子どもが生まれる前から顧客を取り込んでいくやり方は素晴らしいと思った。
もちろん妻は歩けないのでこの時も移動は車椅子だ。スタジオアリスの方たちも、妻が切迫早産中ということでスピーディーに対応してくれた。
写真を撮る時にカメラマンから、お父さんと呼ばれて、少し動揺した。
そうか、僕はお父さんになるのか少し実感が湧いてきた。
妻の両親もおじいちゃん、おばあちゃんと呼ばれて少し動揺していた。
子どもが生まれると、みんな呼ばれ方が変わるのだと思った。
妻と義両親と撮った写真がこれだ。
モザイクを入れてみたところ、映画のパラサイトみたいな写真になってしまった。
でも、義理の両親にだいぶお世話になっているので、間違ってはないかもしれない。
マタニティフォトをSNSにアップしている人は多いが、皆幸せそうな笑顔だった。だから妊娠期間というのは幸せなものだと思っていたが、実際は大変だった。
でも僕らも笑顔で写真を撮った。これまで笑顔の写真をアップしていた人も、裏ではいろいろ大変なこともあったのかもしれないなと思った。
スタジオアリスはイオンモールの中にあった。その足で、ベビー用品を買いに行った。
ベビー用品コーナーは以前も見かけたことはあったが、自分には関係なかったのでスルーをしていた。
しかし、改めてしみじみと見て、いろいろと気づかされた。
こんなにいろいろなものが必要なのかと。
抱っこひもに人形の赤ちゃんを入れて試しに着けてみたが、
着け方もよくわからなかった。
何が必要で何が不要かもわからなかった。
良くわからないから全て必要にさえ思えてきた。
全くの素人であった僕たち夫婦を先導してくれたのは妻の両親であった。
経験者ということもあり、本当に必要なもの、不要なものを教えてくれて非常に助かった。
細かいものは揃えていったが、ベビーベッドをどうするか問題では長いこと悩まされた。
そもそもベビーベッドはいるか、布団でいいのではないか、レンタルがいいか、購入するのが良いか、大きさはどうするか、どうするのが安く済むか、ベビーベッドで寝てくれる子になるかなどなど、永遠に悩んでいた。
僕の同僚がナイスベビーというところでハーフサイズのベビーベッドをレンタルしたときいて、結局それと同じにすることにした。
出産予定日の三週間前に、レンタルのベビーベットが妻の両親の家に届いた。
準備万端。
つづく
つづきはこちら
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