リムブレーキロードバイクの戦闘力を高める方法

2024年11月14日 19:56

新車を売らなくちゃならない「自転車店」のスタッフとして、この記事を書く必要があるのか？と若干迷いはしたのですが、リムブレーキバイクを取り巻く状況やそこで為されている議論の一部に疑問も感じたりもしたので、改めて記事にしてみようと思いました。
先ずは現状の「リムブレーキの特徴やメリットとデメリット」をレースやイベントもしくはトレーニングなどについての視点から纏めていこうと思います。

ただ最初に書いて置きたいのですが「レース機材は大抵の場合ハイエンドかつ最新が最善」ということに変わりはありません。
「とにかくディスクブレーキは。。。業界の陰謀」「とにかくディスクでないと話にならない」という観点での話にはなりませんので悪しからず。
現有機材でなるべく長く闘うにはどうすれば良いか？という観点で今回は書いています。

リムブレーキバイクの利点は軽いバイクを作りやすい事

圧倒的にして現状唯一と言っても良いメリットはこれだと考えます。
この7.2キロのバイクに使用しているのはESR アルタイルというモデルのフレームで定価ベースで10万円台で現在特価で販売しているアルミフレームになります。これを11速時代のカンパニョーロのコンポで組み、ボントレガー製のチューブラーホイールで組み上げてあります。「サラッと組んで7キロ前半」「カーボンだと6キロ台は当たり前に組める」というのは魅力的です。

「バイクを手に持って軽い」

これは圧倒的に感覚に訴えかける事のできる性能で、尚且つ簡単に計測ができてしまいます。一部の（私を含めた）リムブレーキ信者はこの点において、ディスクブレーキへの移行に抵抗感を感じてしまうのです。
まぁ、それはそうだと思うのです。恐らくこの写真にある7.2キロの車重はディスクロードだとハイエンドモデルでないと達成が難しい数値になります。

「え？60万前後の予算で達成できるバイクの重量を150万超えじゃないと無理なの？」
「だったら今乗ってるバイクでいいわ」

そういう気持ちになるのは無理はありません。
「持って軽い＝乗って速いではない」
この部分に自転車業界人としてキチンと説明するのは大事な事と考えています。
またこの先に説いて行く「リムブレーキバイクの戦闘力を維持する方法」の軸になる部分であるとも言えるのです。

バイクの重量はライダーが思ってる程全体的な影響が少ない

恐らく一番の意見の分かれるポイントでしょう。ヒルクライムや0キロからの加速時以外はバイクの重量は然程影響が無いのです。1−2キロ程度の差だと走行中は気付かない事もあります。（と言ってもバイクを家から出す時に「重いじゃん」となるんですけどね）

ただ、レース活動などをしていてフィジカルレベルが高まってきている時などは、細かい部分に対する感度が上がってくる事もあり徹底的に軽くしたくはなるものです。
ただ、ホイールに関しては重量の影響が大きいパーツなので可能な限り軽くて空力の良いものを使った方が良いのは間違いがないです。

この記事でホイールへの投資をしつこく進めているのも同様の理由になります。
バイクの戦闘力を決めるのに覚えておいて頂きたいポイントとして「影響の大きい重量」と「あまり影響のない重量」とあるのです。

ここでいうと繰り返しになりますが「ホイール」は「影響の大きい重量」で「フレームやフレームに付属しているもの」は「あまり影響のない重量」と言えます。
重量に関してはサドル・シートポスト・ハンドルなど「バイクの外側にあるもの」はダンシング時に重さを感じやすいですね。

なんだよ！全部関係あるんじゃん

ただ、皆さんが感じてる程バイクの重量の影響は大きくないのは覚えておいてくださいね。

あとは「リムブレーキバイクはホイールの完成重量を軽くしやすい」というのは大きな特徴といえます。
理由は単純でディスクローターが無いからです。カタログスペックでは今やリムブレーキ時代と同等に近いディスクブレーキ用ホイールは存在しますが、回転部分に200g近いローターを装備する必要があります。と言ってもリム側ではなくてハブ側なので影響は限定的ではあります。

ブレーキに関しては「レスポンスとコントロール性」に圧倒的な差がある

ディスクブレーキとリムブレーキでの色々な論争で「ブレーキ」の話題は避けて通れません。ここで論点が交錯したりするので、条件を切り分ける必要があります。
大事なのは「バイクを止めてるのはタイヤである」という事実です。そのタイヤを止めるための装置がブレーキです。屁理屈のようにも思えますが、この部分を理解しないと議論が何時迄も堂々巡りしてしまします。

リムブレーキは基本ワイヤー引きブレーキで（マグラなどの例外あり）ディスクは油圧とワイヤー引きが混在します。ロードバイクの場合はグロータックなどを選択しない限り油圧のシステムが採用されています。
油圧ディスクとワイヤー引きとを実際に乗り比べてみると解るのですが、複雑なブレーキラインの取り回しをしてもホースが正確につながっていて、ブレーキラインを潰さずエア抜きさえキチンとされていたらレスポンスも引きも効き味も変わりません。

ワイヤー引きはワイヤの潤滑状況やインナーライナーやアウターワイヤなどの消耗など様々な条件によって性能が変化していきます。定期的なワイヤーの交換や潤滑をしてあげないと、初期の性能が発揮できません。一般的に「ワイヤー引きのリムブレーキと比べて油圧ディスクはメンテナンス性が」という方多いですが（プロでもそう言う方がいます）正直最初のセットアップさえ出来ていれば維持管理は楽です。

ホイールの制動システムとして油圧が有利なのは間違いがないので、これが主流になっていくのは致し方がない事だと思います。
完璧な状態でなければブレーキのレスポンスに差が出てしまうのは弱点といえます。

ライダーの大半がリムブレーキであれば相対的に弱点にならないのですが、徐々に少数派になっていく現状としては弱点となっていくのは否めません。

対策としては「より小まめなメンテナンスと消耗品交換」に尽きるでしょう。

リムを挟む制動を捨てた事でリムとタイヤの設定に自由度が上がった

上の写真は大好きな「カンパニョーロ11S時代のブレーキ」です。設計上は17mmリムに25Cタイヤが限界ですが、製品の組み合わせによって21mmリムに28Cタイヤまではギリギリ使う事ができます。
ただ「ブレーキがリムを挟む」という構造上「ブレーキ自体の寸法の限界」が生じます。ディスクブレーキにはそれがありません。リムの内幅を広く取る事ができ低圧にしてグリップを稼ぎ、タイヤの剛性も確保する事ができます。
リムブレーキ時代に全盛だったチューブラータイヤは、構造上転がり抵抗を軽くする事がチューブレス比で徐々にできなくなってきています。プロレースの世界で一気に潮目が変わったのはここ5年位だと思います。チューブラーを貼る作業楽しいんですけどね。

また積層もリムブレーキの制動面を考えなくて良いのもメリットです。
ただ、現状で言うと主流は23mmリムでタイヤが28〜30Cが主流です。市販されている製品によっては21mmリムのリムブレーキホイールは現存しますので、組み合わせを慎重に選べば28cのチューブレスタイヤを21mmリムで運用できるので、不利を大分埋められると考えます。

タイヤのキャパシティ向上がロードバイクのダウンヒルを変えた

これはあまり言及する人が多くないようにも思いますが、タイヤとホイールの変化によりタイヤのキャパシティ（グリップレベル）が向上したのは事実でしょう。プロレベルのレースを見ていると、ドーピングバリバリだった時代と比較して上りはともかくとして、ダウンヒルに関してはかなり速くなってると感じます。
我々一般ライダーからすると「余裕を持った機材を使えてる」という事になります。

それに伴って「ブレーキング」についての考え方も自分自身も変わりましたし、テクニックも変わってきています。定期的に奄美大島に行くのですが、毎回いろいろなバイクを持ち込んでいます。今回はリムブレーキのバイクでのライドをしたのですが、ディスクブレーキバイクと同じように下る事はできるのですが、やはり同じように減速するのに「ブレーキを操作する時間が長くなったな」と言う事と「リアブレーキが使いづらいな」と感じました。同じような速度域でダウンヒルは出来ますが、必要なテクニックの引き出しが必要ですし「余裕度」は違うでしょう。

同じ事をする為に必要な技術がディスクの方が少なくて済むイメージです。例えば「もてぎ」の上り終わってからの下で速度が乗る区間なんかをイメージして頂けると良いかもしれません。
技量にバラツキのある集団なら、全体の速度も「それなり」だと思うのです。全体的に脚力も技量も同じくらいレベルが高い集団に入ってしまった時は明確にディスアドバンテージになる可能性はあります。ここで何が言いたいかというと。

「なるべく同じ武器を装備して、不利な部分を補う技量を身につける必要がある」

と言う事です。「上りで挽回」と言うことではなくて、今後ホビーレースでも下りの速度は上がっていくと思います。基礎的な練習を是非積んでいただけたらと思います。

機材でブラッシュアップするポイントはどこか？答えはエアロハンドルとTLRホイール

先ずは空力を見直しましょう。
「え？エアロフレームでもないのに？」
そう思われるでしょう。バイクフレームのみの空気抵抗削減効果は見た目と値段程大きくはありません。先ずは徹底的にフォームを見直しましょう。
昨今はフレア系のエアロハンドルラインナップされています。これを活かさない手はありません。「丸ハン教」のスズキですら最近はこれですよ？
ちなみに丸ハン系ハンドルを10本近く捨てられずに持っています。シャッス！
あ。そこの若者！バートップが丸いハンドルは「丸ハン」じゃねーからな！

はい、取り乱しましたw

昨今のハンドルは機械式変速のワイヤを含めて4本通すだけの余裕がない場合も多くありますので、その辺はかなり注意が必要です。できればバートップ側がエアロ形状である事も望ましいのですが「低く」「狭く」出来るのが大事です。
狭くなるとコントロールがシビアになるので、より一層の鍛錬が必要ですが「速さ」を得る為にはかなり重要な部分になります。費用対効果は高いと思いますので是非チャレンジしてくださいね。

空力の高いなるべく新しいTLRホイール

これも欠かせない要素でもあります。可能であればリム幅21mmで28C程度のTLRが運用できるホイールです。これでタイヤのグリップ面とホイール側では同じ武器を手に入れる事ができます。
ブレーキ面でのデメリットは既に書いている通りで「人間側のスキル」で補う必要があります。不利になるのは雨天時のブレーキの初期制動の安定度です。あとは制動力が落ちてしまう点ですので、場合によっては潔く退く決断も必要になるのは覚えておいてください。