ラインクラフトのまばたき —第3章—

曇り空が厚く垂れ込め、湿り気を帯びた風が学園内を重たく吹き抜ける。灰色に染まった風景はどこか不穏な気配を漂わせ、胸の内には漠然とした重苦しさが広がる。
パソコンの画面から目を離し、窓の外を見ながら、僕はその原因が何なのかをぼんやりと考えていた。

———数日前、クラフトがトレーナー室を訪ねてきた時のことだった。いつも通り、手にカメラを携えて。顔も、これまたいつも通りの笑顔・・・でもその瞳には、どこか緊張感が滲んでいるような気がした。

「・・・トレーナーさん、その・・・最近撮った写真で、すごく良いのがあって・・・・・っ!」

彼女はカメラを手にして僕に見せようと近づいてきたが、途中で何かに気づいた様子で、カメラを引っ込めた。普段なら、嬉々として自慢げに写真を見せてくれるクラフトなのに、このときはだけは違った。

『どうしたの、クラフト?・・・あ、もしかして・・・見せられない写真でも撮っちゃった〜?』

そう冗談めかして聞く。胸の内に沸いた、ほんの少しの違和感を隠すために。

僕の言葉に、彼女は微笑みながら首を振った。

「いえ、ただ・・・今はまだ、お見せするのはやめておきます。きっと・・・もっと良いタイミングがありますから。」

・・・もっと良いタイミング・・・?なんだろう・・・何かのサプライズ・・・とか?

いつもは写真を見せることを楽しみにしているような彼女が、それをためらう理由が何なのか、気にはなった。でも、彼女が見せられないというのなら、仕方ない。いつか見せてくれるようだし、彼女からのサプライズをお楽しみに、ということで・・・・・・僕はそう、思うことにした。

『そっか。クラフトがそういうなら、君の“一番いいタイミング”が来たら、見せてくれたら嬉しいな。』

「・・・はい!」

そうして僕は、またパソコンとの睨めっこを始めた。

「・・・・・・・・・・・♡」


———口元を歪ませ、昏い瞳で見つめているレンズが、こちらに向いていることにも気づかずに———