"悠久戀"其乃四
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「最近部活とかどう?」
成生慧と別れて歩き出したら、1歩分くらい前を進む奈森先輩がそう話しかけてきた。
「んー…私は書いてますけど、やっぱり部室は静かですよ。たまにきてくれる部員が2,3人いるくらいで」
「そっかぁ。新しく入った一年もきてくれてるんでしょ?」
「はい。ちょっと参加率の高い一年生の男の子もいます」
「そうなんだ。ふーん」
その言葉を口にすると奈森先輩のトーンが気持ち下がった気がした。
「もし良かったら今度遊びに来てくださいよ。高確率で私しかいませんけど」
苦笑まじりに提案してみると、一歩前を歩いていた奈森先輩が、ばっ、と何簡易反射するような勢いで私の方に振り返った。
「いいの?」
「先輩に時間があるときにでも。受験とかもあるでしょうし」
「……ならさ?」
「はい?」
いつもならいいたいことは、ばしって言ってくれるのにどこか言いにくそうな先輩の口調が気になって問いかけた。
「……もし、良かったら」
「……はい」
期待がなかったといえばきっと嘘なんだろう。
「…今からうちに来ない?もし時間があれば」
「え…い、今からですか?」
反射的に躊躇が口をついて出てしまう。警戒心などまるでないのに、だ。
「あ、ごめん!課題とか予定とか色々あるよね。いいや。また今度、誘うね」
「あ、いいえ!まさかそんなこと言ってもらえるなんて思っていなかったのでビックリしただけです。遊び、行きたいです!」
私の言葉に嘘はない。先輩の趣味嗜好が詰まった部屋に、かつて部員達と一度行ったことがあるけれど、特に先輩の話ができなかったのだ。だから先輩自身ときちんと対面して、その先輩の濃度が詰まった部屋にも興味深くって仕方なかった。尊敬の念からくる執着みたいなもの。まさかそんなチャンスが今日訪れようとは。
「ほ、ほんと?なら、いいよ。おいでよ」
「はい!」
嬉しい。ただそれだけで私は先輩の自宅に向かうことを決めた。