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東インド・魚釣りとブレッドオムレツ

肉、魚、魚、魚。

「肉は高級で貴重だから、せいぜい月に2,3回食べられたらいい方。肉の種類は3種類で最も多いのはチキン。次にビーフ。マトンは年に何回も食べない。その代わり、僕たちは魚をよく食べています。魚は週に2,3回。多ければ一度に2,3種類食べることもあるし、お客さんが来たら高級な魚を買うこともあります。この沿岸地域はみんなそんな感じだと思う」

そう話してくれるのは今回のステイ先ご主人A氏。38歳の料理人です。目の前はベンガル湾。網を引きながらゆっくりと泳ぐ漁師たちが見えます。

ベンガル湾チャンパ川河口付近

我々は今、インド東部のウエストベンガル州の港町Digha Mohona(ディーガ・モホーナ。グーグルマップにはディア・モホーナと訳されていますが、ここでは現地人の発音のまま記します)の波止で釣りをしているところ。7キロほど西へ行けばもうそこはオリッサ州です。

A氏の実家はディーガからややオリッサ寄りに向って、バイクで15分ほどのとある農村にあります。家は代々のムスリム。この地に住んで3代目となるそうです。

「このあたりは私が子供の頃は本当にのどかな農村漁村でしたが、現在はリゾート開発が急速に進んでいて、地代が10年で10倍以上。20倍以上というところもざらです。インド国内の大勢の人が海を観たくて集まってきます。オールドディガとニューディガがあって、今いる波止場はオールドのすぐ東側。みんなここに朝陽を観にやってくるんですよ」

今はまだインド人ばかりだがそのうち外国人観光客もやってくるかもしれないディーガ。

大通りから左に入り、川沿いの道を進むとそこは卸売市場となっており、コルカタ都心にも供給されるような格の市場だそうです。床こそコンクリートで埋め尽くされていますが、上は木造にトタンやビニールの屋根が張られただけの簡易なもので、1990年代までの築地市場とよく似た匂いと気配に満ちていました。

コンクリートに魚のニオイが染みついている。ディーガ・サンカプール・エスチュエリー・フィッシュ・マーケット

「同じノンベジでも東インド・コルカタは肉より魚を食べることが多くて、特にこのあたりは魚が中心。インドでもここまで魚を食べる地域は他にないんじゃないかな。種類も数えきれないほどあって、現代の日本よりはるかに多いと思います。ソルトウォーター(海水)、フレッシュウォーター(淡水)、半々というところでしょう」

A氏は日本に10年住んでおり、日本の魚事情についてかなり理解している方だと思います。釣りは子供の頃からの趣味。幼馴染の多くが今でも釣り好きで、日本土産は決まって釣り竿なのだそうです。今日もA氏の幼馴染3人と波止場で合流しました。

そのうちの一人が先ほど穴子を釣り上げるも、こちらで穴子を食べる習慣はないらしくそのままリリース。もう一人が30センチのチヌを釣りました。そして僕の竿にもついにあたりが。なんとハモです。関西では夏の高級魚。でもこちらでハモは食用とならず、捌くのも難しいのでこれまたリリース。

A氏の幼馴染が釣り上げた良型のチヌ。ウェイトは直系1.5㎝ほどのナット、糸は20号以上もありそうな太いものを使用というテキトーさ。


1mほどのハモ。この日の気温42℃

この後、僕がゆうに40センチオーバーのおばけチヌを釣るのですが、A氏の幼馴染が興奮して僕から竿を取り上げ、ぎゅっぎゅっとリールを巻きまくり、テトラにこすれてプッツン。逃した獲物はデカい、とはまさにこのことで、以降誰の竿にも辺りはなくなり、これにて終了。港の一般人向け市場へ行き、ブレッドオムレツをおごってもらいました。

これもウエストベンガル名物。ブレッドオムレツ・マサラ並み。マサラとはタマネギとグリーンチリのことで、パンとオムレツの間にみじん切りが挟まっている。スパイスはチャートマサラ。



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