チャチュンサオにあったカフェ

タイでのアパート暮らしで何よりも重要なのは静けさかと思っている。今回、バンコクにやって来て、今住んでいるオンヌットのアパートは非常に静かだということに気がついた。

外の音がするといっても、たまに工事をやっている時の音、自動車やバイクの走る音がするぐらいだ。気になる音量ではない。

以前にチャチュンサオのアパートに暮らしていた時には、特に夜などは全く音がしない静寂の中で暮らしていた。田舎ということもあって、だだっ広いアパートを借りて一人で住んでいたが、あれこそ田舎暮らしの楽しみと言えただろう。

ただ、田舎暮らしは移動が不便ではある。そのチャチュンサオのアパートもバイクや車が無ければ、主要なデパート(ロビンソンがバイクで10分ぐらいのところにあった)やスーパー(ビッグC)などに行くのもしんどい距離であった。

チャチュンサオに住んでいた頃、ひょんなことから、沿道沿いにあったお洒落カフェの若いタイ人オーナーと知り合いになった。

やたらと広々とした駐車スペースもあるカフェで、大木が何本も植えられた緑豊かなカフェであった。

オーナーも相当、カフェ類の勉強はしたらしく、そこに行くといつも美味しい飲料を飲むことができた。

何度か顔を合わせるうちに、オーナーの家にも呼ばれて食事もご馳走になったこともあった。どうも、土地の富裕層の息子らしい。家には大きなコーヒー豆の焙煎機などもあって、焙煎した豆を法人向けに販売するようなビジネスもやっているらしかった。

富裕層の息子ではあったが、嫌味なところがなく、カラッとした、気にいい青年であった。

それから半年後ぐらいして、私もチャチュンサオを離れてしまい、ふとあのカフェが気になって訪問してみたのだが、カフェは閉店してしまっていた。駐車場の入り口も施錠されていた。

仕方がないことなのかとは思う。あのカフェはプチホテルぐらいは経営できそうなぐらい、敷地面積は広かった。お洒落カフェのコンセプトも、実際の外観も、内装も、飲料の味もどれもこれも素晴らしかったが、商売というものを成り立たせて、続けていくことは難しいことなのだと改めて実感させられた。

ただ、私はカフェや喫茶店の類に求めるものと言ったら、やはり、第一には静けさであって、人口密度が低ければ低いほど良い。人気がなくて、客があまり入っていないカフェが落ち着く。

イーグルスの曲で『Sad Cafe』という曲があるが、異国の地でカフェを探す時には、この曲をついつい思い出してしまう。居心地の良いSad Cafeは少ないものだ。

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