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2006年4月 バンコク バックパック旅行

 17年ぶり人生2度目の海外旅行先にタイを選んだ。1週間の旅程。
 とか言いつつ、ぶっちゃけ本当のところは日本での生活が嫌になって、気分一新のために逃げたといったところ。
 深夜便でドンムアンに到着しバスでカオサンに向かう。空港から外に出てバス停のベンチに腰を下ろした。どこか甘く何かが発酵したような匂いの空気に包まれる。目前には南国の木々が夜空にシルエットとなって浮かぶ。日本から着てきた長袖を着たままだ。じっとりと汗がにじみ、玉となって鳩尾を流れていく。静かに興奮が湧いてくる。違う国に来たんだ!もう日本の法律も常識も通用しない。人も文化も違う。自分の体に縫い付けられていた、無数の日本のしがらみという糸が全て切れたように感じていた。いま、俺は自由だ。
 カオサンに向かったのは、「地球の歩き方」で深夜に到着してもカオサンなら宿の確保が容易という情報を得ていたから。まだネットの時代ではなく、情報はもっぱら「歩き方」などの紙媒体からだった。宿によってはまだ情報ノートが置いてあった時代。

カオサン通りと一本南のソイ・Dam Noen Klang Nueaの間にあるSEVEN HOLDER GUESTHOUSE。タイで初めて泊まった宿。当時はシングル・ファン部屋、シャワートイレ供用で一泊250Bの安宿だった。ここは2024年の現在も健在。いまは2つ星の宿になり、日本円で一泊2000円程度。
ストリートスナップぽく撮った1枚。バンコクのどこで撮ったかは忘れた。

 2日目はカオサンからちょっと離れただけの別の宿に移った。サワディーなんとか、あるいはなんとかサワディーという名前のゲストハウス だった。夜、電気を消して眠りにつくまでは何も異常はなかった。電気を消してしばらくすると何かを感じた。電気をつけてみるる。カチッとな。ぎゃーーー!ベッドの上を無数の赤色の小さな虫が動きまわっている。 なんじゃこりゃー! とりあえず指で押し潰すとシーツに赤い線が残った。そのときはいまいち判然としなかったが、これが南京虫だった。照明に照らされるとワザ〜と逃げて行き、明かりを消すと毛布やベッドのフチなどからワザ〜〜と出てくる。ベッドだけではなかった。床のタイルの割れ目や壁、柱の裂け目にこいつらが詰まっていた。部屋ごと南京虫の巣だった。その夜は電気をつけっぱにしてろくに眠ることもできず、翌朝すぐチェックアウトした。

 3日目はBTSナショナルスタジアム近くのB&Bに部屋を確保した。チェックイン後、洗濯してシャワーを浴びるとそのままベッドに寝そべりうとうとしてしまった。暗くなってから目が覚めると強烈な頭痛がする。本当に頭割れるかと思うほどに強烈だった。眠っている間に熱中症になっていた。これだという思い当たる節があった。変な根性を出してカオサンからここまでろくに水分も摂らず歩いたのがいけなかった。痛いー。頭割れて死にそうなくらい痛い。こままではヤバいと意思の力を振り絞りコンビニまで歩いて行き水やポカリスエットを買い、屋台でしょっぱそうな串焼肉を買って部屋で全部食べた。串の入ったポリ袋に溜まった汁まで飲んだ。塩分と水分を摂り、頭痛薬も飲んで一眠りすると奇跡的に回復していた。
 自分の失敗をもう少し詳しく書こう。熱中症は炎天下に水分をろくに摂らず歩き続けたのが原因。歩き続け、気がつくと顎の下にザラザラと塩の結晶が溜まっていたくらいだった。おまけに足の裏に水膨れができたまま歩き続けたものだから、水が皮膚を割いてなんとか大陸みたいに大きく広がり、痛くて歩き続けるのは困難になっていた。部屋で爪切りを使い、小さな穴を慎重に開けて水を抜き消毒して軟膏を塗った。しばらくは浮いた皮膚と真皮の摩擦が痛かったけれど、徐々に真皮とぴったりくっついて硬くなり歩けるようになった。
 まだある。水と塩分を買いに部屋から出る時、いくら探しても部屋の鍵が見つからなかった。弁償を覚悟して出て行って、戻って来た時に部屋の外側のドアノブに刺さったままの鍵を見たときは凹んだ。まあ、失敗に失敗を重ねいろいろ学んだがもっとスマートに学びたい。

バンコク3日目。BTSナショナルスタジアム駅近くにあったB&B(朝食付きの宿)の朝食。タイに初めて来たものだから、朝食が激辛だったらどうしようと本気で心配していたら、普通じゃん!
BTSナショナルスタジアム駅から続くスカイウォークと今は無き露店。こっちのほうが人と街の関係は健全に見える。
たぶんプラトゥナムあたり。
「写真」をかじっていたこともあって視線が普通の観光客じゃない。もっと普通のパッカーぽいのとか、今で言うなら映える内容を期待してここまで読んじゃった方には申し訳ない。
休息中のおじさん。
スヌーカーをする男性。歩道橋から見えたビルの一室を撮ったもの。
OLさんかなあ。バンコクのどこか。
バンコクの街中の繕い屋さん。
ヤワラー通り。後日タイ中部のリゾート地ホアヒンに行く計画があり、駅のあるフアランポーンに移ってきた。
チャイナタウンの片隅で朽ち果てていく車。
地球の歩き方に載っていた有名な宿、Baan Hualampong Guest Houseに投宿するつもりが対面のYour Place Guest Houseに部屋をとることに。
ソイの更にソイ。
ユアプレイス、バーンフアランポーンのあったソイ。
Your Place Guest houseのレセプション。
バーンフアランポーンの真向かいということで当時のユアプレイスには日本人客も多かった。
Your Place Guest Houseからの眺め。Your PlaceもBaan Huaiampongもいまはもうない。コンドミニアム建設のためソイごと更地になってしまった。
こんな夕暮れ時の僅かな時が好きだ。
Your Place Guest House の自室。
国鉄フアランポーン駅前のラマ4世通り。ソンクラーンが始まり、カメラを見つけて手を振る陽気なタイ人達。
手前の女性が髪も服も水浸しなのはソンクランで水をかけられたから。懐かしいソイの光景。
ゲストハウスの前で。手前はユアプレイスの夜間のレセプションをしていたチャーリーさん。
国鉄フアランポーン駅構内。
当時のソンクランは容赦なかった。列車に乗っていても外からホースで水をかけられた。笑顔で。

南へ南へ

ホアヒン編につづく。


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