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ALUMNI STORY 株式会社エピグノ 志賀 卓弥 (医学系研究科卒) さん

東北大学の出身者や関係者でスタートアップ界隈で活躍されている方、そして官公庁や大手企業などにいるこれから東北大発のスタートアップに関わっていきたいと思われているOBOGの方々をご紹介する「東北大学スタートアップアルムナイ100人カイギ」このイベントで収録された東北大学OBOGの講演内容を「ALUMNI STORY」として記事化してお送り致します。
※東北大学スタートアップアルムナイの詳細についてはコチラをご覧下さい。


自己紹介:東北大学病院で育った医師アントレプレナー

※こちらの収録は2022年6月に行われたものです
志賀卓弥と言います。宜しくお願い致します。Epigno(エピグノ)という会社、東北大学病院、皆さん出身の東北大で、私は育ったと言うような形です。
あなたは誰ですか?ということで、自己紹介になりますが、 東北大学の集中治療部で医師をさせていただいています。医者の中でバックグラウンドっていう言い方をすればいいのかなと思うのですが、麻酔科がオリジンで、それを元に救急や集中治療をやっているという形になります。Epigno(エピグノ)の話は後でさせていただきます。

株式会社Epigno(エピグノ)は東北大と東北大学病院が生んだ

もともと僕は、岩手生まれです。 岩山というところの、岩山パークランドの行く坂の途中で、生まれ落ちました。1978年なので、今回の登壇者の中では最年長で、まあレイタースタートのスタートアップみたいな感じになりますが 、皆さんと一緒に頑張っていきたいと思っています。それで、2005年に普通の医学部を卒業しました。
2005年に医学部を卒業してから、仙台の仙台市立病院で外科で初期研修をしました。当時、この病院は当時スーパーブラックで(苦笑)、ポケベル当番で当番じゃ無い日は1日もありませんでした。ということで365日オンコールみたいな感じでした。そして、住んでいるところも救急センターの上だったので、家に居るんだか、病院にいるんだかよく分からないような所に住んで、2年間を過ごしました。救急車がくると当番でなくても、皆んながぞろぞろ起きてきて、なんかきたみたいと診療に入り、雑巾のように楽しく研修を受けたという、最後ぐらいの学年になると思います。

ここまでは普通のお医者さんと、同じような道でした。ただ、ここで、体外循環というものに触れてしまって、今回コロナでECMOがすごい有名になりましたが、血を引っこ抜いて、ポンプで圧をかけて、人工肺で酸素化して体に戻すという、粗治療になるのですが、それを見て、体外循環を経験して、ここから道がちょっとそれちゃったというところになります。
そして、この体外循環を、もっと研究したいなと思い、東北大の人工心臓を開発している研究室が、加齢医学研究所にあったので、加齢医学研究所の心臓病電子医学という研究室で医学博士号を取りました。ここも全然ツテがなかったので、いきなりトントンと戸を叩いて「人工心臓の研究したいんですけど、入れてくれません
か?」と言って、かなり無茶言って入れてもらったという経緯があります。

それが終わって、ビジネスを勉強させて頂きたいと言うことで慶應に進学しました。そして慶應に行ってる間、 帰ったら絶対に起業しないだろうと思ったので、行っている間に起業してしまって、口実を作って、大学を辞めようと思っていたのですが、縁あってまた大学に戻ってきたっていう経緯があります。
そして、2017年にめでたく卒業(修了)できて、それからは集中治療部の方に戻ってきて、一般の集中治療を週5でやって、エピグノの方を週 8ぐらいでやっているという感じになります。

東北大学大学院では、加齢医学研究所の心臓病電子医学研究室で医学博士号を授与

大学院入学前:仙台市立病院で外科初期研修を修了

大学院に入る前ということで、皆さんと順番が違うので、大学を卒業して大学院に入る前という意味でお話すると、やんちゃな研修医だったなというように思っています。器械がいっぱい付いている患者さんが大好きで、基本的に喋らない患者さんが好きで、もう今にもこう心臓が止まりそうな人が好きな研修医でした。腎臓や心臓、肺が器械で取り替えっこしている感じですね。 器械で生きているような人が自分の治療対象でした。
古い仙台市立病院が私の古巣で、いま綺麗になってしまって、あんな綺麗な所で研修できないとも思ってますけれども、いまの研修医たちはきっと快適に勉強できてるんじゃないかと思います。
そして、粗治療、ECMOを使った治療で、救命できなかったような一部の患者さんが歩いて帰るとか、こういうのがすごいなと思って、この当時、蘇生後低体温療法(現在の体温管理療法:TTM)という治療法が立ち上がった頃の時期で、今まではその心臓が止まってから蘇生してもほぼ歩いて帰れることなかったんですけど、それが3、4割歩いて帰れるぐらいになったということで、これはすごいと思い、もっと研究したいなと思いで、東北大学に進学しようと思った次第です。

仙台市立病院でやんちゃな研修医時代を過ごす

大学院入学後:大学院では全置換型人工心臓の研究を行う

東北大学大学院に進学して、人工心臓の研究をしていました。心臓は、右心房、左心房、右心室、左心室という形でお部屋が4つあるのですが、それを全て置換する形なので、ポンプが2つ必要になってきます。右側と左側ということで、両心室補助人工心臓(Bi Ventricurer Asisst Device:BiVAD)あるいは全置換型の人工心臓(Total Artificial Heart:TAH)という人工心臓の研究をしていました。
メソッドの図にあるように、心臓をちょん切って、ポンプを2つくっつけて、ヤギさんがちゃんと生きていけるかなというような研究をしていました。ヤギさんを何十匹も○○しているので、きっと僕は三途の川を渡りきれずに、ヤギさんに食い殺されるんじゃないかなと思っています。

写真の左下にあるように、ポンプが2つあるのですが、このポンプは女子医大の心臓外科の先生が開発した、女子大学発ベンチャーの心室補助ポンプになります。これがスタートアップに接する初めての瞬間でした。なぜここの従業員たちは、まだ保険収載されてないし、販売もされていないのに、お給料もらって、ちゃんと会社が成り立って生きてるんだろうと思い、その背景に投資家がいて、会社が生き伸びていて、それが保険が収載されて、ちゃんとビジネスになるまで育てていくというスキームがあるんだということを初めて知りました。

大学の知財を、社会実装することの重要性を実感する

医師とは全く違う世界があって、大学シーズからの産学連携、社会実装が醍醐味なんだなと思った記憶があります。その後も、血液ポンプの遠心ポンプの性能試験などをやって、産学連携をしていたので、いま実際にそのポンプが上市をされて、私どもの手術室やICUでも使っていて、感無量な部分もあり、そういったところもやはり価値があるなと思って、大学の知財を外に社会実装することが非常に重要だなと思って、次に何をしようか思ったときに、技術の社会実装をやるための一つの流れを作る人がいるんじゃないかな、大学にもそういう人材がいてもいいだろうと思いました。
大学の医師は普通は海外の大学等に臨床留学して、箔をつけて帰ってくるみたいなことが、一種のトラックレコードになるのですが、そういう人たちと同じことをしても面白くないかなということで、ビジネススクールに行かせていただきました。

就職活動時:すぐに医者に戻らず、ビジネススクールで研究する

慶應大学では、産学連携、大学の技術の社会実装をしたいと思ったので、研究テーマを決めて行きました。「日本における大学発ベンチャーがどうしたら成功するか」というのをテーマに決めていって、ベンチャーキャピタリスト、文部科学省の方、経済産業省の方、あとは厚生労働省の方など、様々な方にアンケートしました。あとは、スタンフォード大学に池野先生というバイオデザインをやってる先生がいるのですが、その人にもインタビューをしに、わざわざスタンフォードまで行って、アンケートを取ってきたっていうこともやっていました。今でも池野先生は私のメンターです。

「日本における大学発ベンチャーの成功のために」をテーマに研究を行う

当時は2017年、この数字は覚えておいてほしいのですが、この時「ベンチャー創出は民間による自律的なエコシステムが必要だ」というように結論付けました。民間というのがミソで、所謂、公的VCみたいなところが投資すると、ベンチャー企業のバリエーション(会社の査定価値)を上げてしまうので、結局投資としてあんまりうまくいかないんじゃないかということが、この時の私の結論でした。

研究では「ベンチャー創出は民間による自律的なエコシステムが必要だ」と結論付けた

現在の仕事内容:お医者さん+αで、一人でも多くの患者さんを救う

現在の仕事は、お医者さん+αということになります。
まず、お医者さんの仕事について、 東北大学病院の4階の部分がICUになっており、 色んな器械がくっついてる、昔と同じように僕の好きな患者さんがいっぱいいます。人工呼吸機やモニターがベタベタ患者さんにくっついているような感じです。日常は患者さんを診ています。

東北大学病院の4階の部分のICUで患者さんを診ている

コロナ禍になったここ2年ぐらい、宮城県内で患者数が激増したり、具合悪い患者さんが増えた時期があったので、本当にしんどかったです。宮城県新型コロナ対策本部の重症担当本部員もさせていただいて、宮城県のコロナ患者さんのほぼ8割ぐらいは、東北大のICUで診ていました。全員は助けられませんでしたが、約72%の方は救命できたという成績でした。
そしてその+αは、Epigno(エピグノ)という会社を、2016年の慶應義塾在学中に起業しました。私は元々麻酔科がオリジンだっていう話をしましたが、やはり手術室が効率的に運営されていると思わなくて、もっと効率的に動かせるんじゃないかと思い、手術室のマネジメントシステムを一番最初に作りました。
そこで問題になってきたのが、病院では人の情報が全然わからなくて「今日誰がいるんだっけ?」「今日何時から誰がいなくなるんだっけ?」というのが意外に分からなくて、管理を始める前に人がどこに行って何をしているのかを可視化するところから始めないといけないということで、HRのシステムを作ろうというふうに少しピボット(スタートアップなどがサービス内容を変えること)したっていう経緯があります。

日本で初めて医療・介護に特化した医療人材マネジメントシステムを提供する会社ということで、色んなところに協力していただいて、東北大学THVPさんも投資していただき、現在M3(医療従事者を対象とした医療ポータルサイト「m3.com」のサービスを行っている企業)が最大投資先になっていますが、ありがたいことにちょうどシリーズA(Product market fit:PMFが終わりGo to Marketに行くフェーズ)が終わって、走り続けているような状況になります。

日本で初めて医療・介護に特化した医療人材マネジメントシステムを提供する

メンバーは、ビジネススクールで社長を捕まえてきて、一緒にやっています。そして慶應にいたら、なぜかスーパーエンジニアも連れてくることができました。この人はグランゼコールを首席で卒業、日本語ペラペラで、しかもSFCにいたのに法医学の研究室に行って、医療の漢字をバリバリ書けるという、しかも日本語だけでなくて、中国語も喋れるし、アラビア語も書ける、よくわからないエンジニアです。スーパーすぎて時々何言ってるか分かんない時もあるのですが、こういったメンバーで運営させてもらっています。

慶應で出会ったメンバーで会社を運営

話は変わりますが、2035年問題というものがあります。3人に1人が高齢者になってしまうのですが、保険医療の課題が出てきます。日本は課題先進国なので、これらを解決するソフトパワーを持つことで、いわゆる中国などが後から急激に高齢化が進んでいきますので、そういったソフトを海外に売れるのではないかと目論んでいます。

3人に1人が高齢者となる2035年問題にも向き合う

そのため、そういった時の人材管理等のナレッジが 海外に展開できるんじゃないかなと思って考えているところです。また、医師としてスタートアップすることの価値とは何だろうと思った時に、やっぱり一人でも患者を助けてあげたいなと思い、目の前の患者さん1人を助けることは勿論できるけど、10人も100人ぐらいまでだったら、自分1人でなんとかなるかもしれないけど、それ以上はやはり厳しい。病院を運営するとか、医療機器を開発するとか、創薬する、公衆衛生に入る、WHOに行くみたいな、そういうことをやらないとできないので、私の場合は病院管理というところに興味を持ったので、ヘルスケアの人材管理のシステムを作りたいと思って、今やっております。

一人でも多くの患者を治したい思いでスタートアップする

社名はEpigno(エピグノ)と言います。古代ギリシャ語で「叡智」を意味する「Epignosis」から病院の叡智になれるような企業を目指しています。またプロダクト名は「エピ」をとって、ホスピタルの「タル」、あとHuman Resourceの「HR」で「エピタルHR」という安直な名前にしています(笑)。

カードベースで、Horizonta SaaSを、Verticalに置換していると言ったら、一番わかりやすいのではないかと思っています。

病院のスタッフ情報を一元管理・分析できるエピタルHR

あとは、2017年にビジネススクールで私が提言していたことを、ありがたく5年後に言ってくれた方がいて「経済成長を考えた場合、イノベーションの担い手であるスタートアップ企業の活躍が欠くことはできない存在だ」ということですね。首相も言っていますが、これかなり前に僕も言ってたよな、ここに居る人たちもみんな言ってるよなとか思いながら、今更言うなよと思いながら聞いていました。

2022年、岸田首相が「スタートアップ創出元年」に策定

先ほど2017年を覚えておいてくださいと言ったのですが、研究をやっていた時が2016年なので、ベンチャーの数が頭打ちになっていて、そこに危機感を覚えていて、私なんかは大学のスタートアップはもっと頑張んなきゃいけないんじゃないかなということで、自分みたいな人が大学の中で頑張って立ち上げるサポートをしたり、自分もその一社になるというのがいいかなと思って、今頑張っているところになります。今はまた右肩上がりになっているので、数だけ増えればいいという訳でもないと思いますが、少なくとも数が増えないと成功する数も増えて来ないので、数字的にもいいのかなと思っています。

ベンチャー企業数は、近年再び増加に転じている

投資額についても、コロナ禍にあったにも関わらず、右肩上がりになっていて、このうちのヘルスケアの金額は100億超えてきていて、私たちの領域も最後のフロンティアと言われているので、投資額もちょっと増えてくるんじゃないかなと思いつつ、ここ数ヶ月、投資額が冷え込み始めている感じもするので、早いところで上がりきらないとまずいかなということを考えながらやっているところです。

コロナ禍にあったにも関わらず、投資額は右肩上がりに

東北大学は、スタートアップサポートがかなり手厚いかなと思っていて、「JAPAN biodesign」これはちょっとヘルスケアに特化したものですが、デザインシンキングを取り入れた医療機器開発だったり、「EARTH on EDGE」だったり「未来型医療創造卓越大学院プログラム」だったり、「Clinical AI」のAI人材プログラムみたいなものが走っていて、卓越大学院プログラムとClinical AIに関しては私も講師させていただいて関わらせていただいているような形になっています。こういったものがある大学はやっぱりいいなと思って、学生がこういうものを受けられるというのは、自分のときはなかったので、羨ましいなと思ったことがあります。

東北大学で提供される手厚いスタートアップ支援

これからスタートアップ業界の挑戦において、何をしたいかというところになりますが、僕はIPOを目指していますので、ここを頑張って目指して、エピグノがないと病院や施設が成り立たない、考えられないというような企業になりたいなと思っています。日本初のヘルスケアマネジメントのVertical SaaSで上場を目指します。

日本初のヘルスケアマネジメントのVertical SaaSで上場を目指す

今後貢献していきたいこと:「未来の患者さんと家族のために」

今後貢献していきたいところになりますが、Existをやれなかったとしても、「①集中治療に革命を起こしたい」集中治療をもっと研究することで、革命を起こした治療法をできるようになりたい、そのためにもう1度臨床に戻ってやってみたい、「②臨床研究を加速させたい」集中治療を支える臨床研究をやりたい、「③スタートアップ支援したい」自分がやってきたことを支援していきたい、「④東北でエンジェル/VCとして応援したい」仙台の地、東北の地で、もし可能であれば、エンジェルとかVCみたいな立場で投資もできたらいいなと思っていて、場合によっては「⑤シリアルしようかな」とシリアルアントレプレナーとしてでもいいかなと思っているので、もう1社もう2社という形で可能性があればやってみたいなと思っています。

一人でも多くの患者さんを救うために、今後もお医者さん+αを展開

私たちは「未来の患者さんと家族のために」資するようなことをやりたいということを理念に掲げてきて、それに資するものだったらなんでもやっていこうかなと考
えています。

「エピグノジャーナル」というオウンドメディアを展開中

いま僕が力を入れてやっているのはジャーナルオウンドメディアになります。コンテンツをどんどん作って、私が構成して週1で毎週出すというのを目標にやっていて、やっと5万PVに達したところなので、来年ぐらいに10万ぐらいまで持っていきたいなというように考えています。

現在、 絶賛CS・エンジニア等募集中

ご興味がある方は、東北大学スタートアップアルムナイ、または株式会社エピグノまでお問い合わせください!

[東北大学スタートアップアルムナイ-コミュニティについて]

「東北大学スタートアップアルムナイ」コミュニティは、ハッカズーク社提供の「https://official-alumni.com/」を活用し、有志が運営しております。

現在本コミュニティへの登録は、招待/承認制とさせていただいております。東北大OBOG(および関係者)であったかなどの在籍確認や、本コミュニティへの貢献意思、スタートアップ業界でのご活躍状況などを登録の際に確認させて頂いております。その為、ご登録までにお時間がかかる場合がございますので、その旨あらかじめご了承ください。
https://app.official-alumni.com/register/tohoku-u

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