新人弁護士向け刑事事件対処法(1)ー取調べ対応編
もうすぐ70期の方々も弁護士登録するとのことなので,今回は刑事事件での基本的なことに,プラスアルファすることを書いてみようかな,と思いました。
今後シリーズ化する予定……
1.オススメ書籍(※2019年12月に修正)
以前「新人~若手街弁向けオススメ書籍等」でも書きましたが,「刑事弁護ビギナーズver.2.1」(現代人文社)と,「取調べ対応・弁護実践マニュアル第3版」(日弁連)はオススメです。
あと,「刑事弁護の基礎知識」(有斐閣)もいいです。
2.方針
「メリットなければ黙秘」でしょう。
「メリット」が何なのかは,ケースバイケースで非常に悩みますが,上記書籍を参照してください。
認め事件であっても,私はやはり「メリットなければ黙秘」のスタンスです。
あと,どうやって黙秘をさせるかは,私は今も試行錯誤しています。
供述することによるリスクを説明し,警察官・検察官が口を割らせるために言ってくるであろうことをリハーサルしますが,それでも黙秘できない人はできません。
そういうときは,いっそ署名押印拒否を最初から目指した方がいいのかもしれませんが,そういう人かどうかの見極めがまだできていません。
今後の課題です。
3.酷い取調べがあった場合
特に警察官での取調べが録音録画がなされない事件において,警察官が酷い取調べをしてくることがしばしばあります。
そういうとき私は,「被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則」による苦情申出を行い,申出書を検察官にもFAXで参考送付します。
警察官が少なくとも一度はおとなしくなります。
場合によっては,しばらくしてまた酷い取調べをしてきますが,そのときはまた苦情申出書を送ります(もちろん,このときも検察官にも参考送付します)。
2回送れば大体その後もおとなしくなります。
苦情申出書に記載する内容としては,「犯罪捜査規範」167条以下を使って,同規則3条1項2号の「監督対象行為」に言及するようにしています。
理論的なこといえば,犯罪捜査規範167条以下と「監督対象行為」は別物な気もしますし,そもそも弁護人が犯罪捜査規範にどれだけ依拠していいか,という問題はあるかもしれません。
しかし,少なくとも犯罪捜査規範に違反すれば任意性は認められないように思われるので,取調べの適正化のためには一定程度説得力があると自分では思っています。
実際,私の経験上,警察官もおとなしくなっています。
以上,参考になれば幸いです。