新人弁護士向け刑事事件対処法(4)ー1回で結審を求める事件の公判期日の進め方
前回の続きです。
今回は,公判期日の進め方について,自分なりのチェックポイントについても言及しつつ書きます。
0.裁判所に集合する時間
情状証人(在宅のときは,依頼者も)と裁判所に集合する時間は,私は原則として開廷20分前にしています。
早めに着いて,当日の進行について確認して心を落ち着かせます。
また,開廷10分前には裁判所の職員が来るので,出頭カードと宣誓書に署名押印してもらいます(なので,証人には予め印鑑の持参を忘れないよう言っておきます。)。
なお,当日も証人尋問のリハーサルをした方がいいと思った場合には,集合時間は開廷30分以上前にしています。
身柄事件で情状証人いないときは,私は10分前に着くようにしています。
1.冒頭手続
人定質問,起訴状朗読,黙秘権告知,罪状認否の順ですね。
一回で結審を求めるような事件ですと,そんなに意識することはないかもしれないですね。
2.冒頭陳述
一回で結審を求める事件であっても,冒頭陳述要旨を受け取ったら即時に目を通し,「証拠とすることができず、又は証拠としてその取調を請求する意思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめる虞のある事項」(刑事訴訟法296条但書)の有無を確認するべきです。
そして,もしこのような事項があった場合には,異議を申し立てるべきです。
私自身の体験としては,起訴されていない余罪について言及していると思われる記載が冒頭陳述であったので,「これは起訴されていない余罪について言及しているのですか?そうであれば異議を申し立てますが。」と求釈明をし,裁判所も検察官に冒頭陳述の訂正を求めた,という事案がありました。
また,実名報道されているのでニュースの記事そのものは引用しませんが,とある傷害事件で,事件と関連性が薄い事項が詳細に引用されていると異議が申し立てられた事件もありました。
3.検察官請求証拠に対する証拠意見・証拠の取調べ
私は全部同意する場合でない限り,証拠意見書を用意します。
証拠意見書は4部(裁判所用・書記官用・検察官用・自分の控え)用意しています(もっとも,最近は「検察官には事前開示しているから,3部でいいか。」と思い始めています)。
不同意書証について,「検察官がこの条文で請求してきたら自分はこう返そう。」というのは,公判に臨む前に用意します(この記事の下方に私のメモを載せてます。)。
検察官の要旨の告知の際は,内容が間違っていないか,不同意部分を読んでないかは確認しています。
4.弁号証の請求,書証の要旨の告知,情状証人の尋問,被告人質問
私は証拠請求書に証拠等関係カードをつけたものを4部用意して提出します(もっとも,先述の理由で,3部でいいかと思い始めています。)。
情状証人の尋問や被告人質問は,また改めて記事を投稿します。
5.論告・弁論・最終陳述
論告要旨も,配布されたら目を通す必要があります。
私は平成30年1月27日現在で50件くらい公判を行いましたが,論告に対し「証拠に基づかない」として異議を述べて論告を訂正させたことは2回あります(1つは1回で結審を求めた事件ではなく,無罪主張事件ですが。検察官が情状で,証拠に表れていない事項に言及してきたので異議を述べました。)。
弁論要旨は4部持参しています。
弁論の内容は改めて記事を投稿します。
最終陳述は,端的に述べるように予め被告人に助言します。
6.判決期日
判決謄本ができるまでは時間がかかるので,判決はメモをとります。
在宅事件や保釈されている事件で執行猶予を得られた場合には,控室で「猶予期間中にはどんな犯罪やっても実刑判決になる可能性が高いから気を付けてください」とか,「執行猶予期間が終わっても,次同じことやったら実刑になる可能性高いですから二度とやらないでください」とか釘を差します。
さらに最近は,控訴の意思がないことを確認した場合には,刑事部に一緒に行って,上訴権放棄の申立てをします(判決を早く確定させて,執行猶予期間を早く始めるため。)。
実刑になってしまい,保釈を望んでいた場合には,保釈請求書を持って判決期日に臨み,判決言渡し後すぐに保釈請求書を出します(ちなみに,先に控訴状を出してしまうと,一審弁護人は保釈請求できなくなるので注意)。
実刑になった事件は,判決言渡し後すぐか,遅くとも数日後には接見に行き,控訴の有無を確認します。
少し長くなってしまいましたが,こんな感じです。