就活が終わって
9月ごろから本格的にはじめた就職(転職)活動が終わった。これまでの仕事から職域を広げたかった、つまり仕事経験のあまりない分野に進みたいという思いが第一にあり、しかもこの景気のよくない状況だったから、日本に帰ることになりそうだなぁ(ドイツの就活では職歴がすごくすごくすごく大事だ。また、日本に帰ったとしてもその分野の仕事がしたかった)と正直思っていた。でも、半年はかかったものの、無事ベルリンで仕事が見つけられた。26社出して内定は2社。
職域を広げたいというのを身バレしない程度に具体的に書くと、これまではとてもニッチな分野のデザイナーとして働いていたのだけれど、広告代理店の中でブランディングの構想を練ったりコミュニケーション戦略を考えたりする仕事のほうに進路をとりたくなったのだ。
就活をはじめた時点では、実は英語で働ける会社を探していた。これまで僕がドイツで働いた会社はドイツ人ばかり!ドイツ語だけ!といった風で、「母語話者に対して外国語としてドイツ語を話す外国人」という立場を損に思うことが正直多かった。イギリスの大学院に通っていたとき、その後イギリスの会社に勤めたとき、あるいはフリーランサーとしてアメリカの会社と仕事をしたとき、国籍が多様な環境で英語で働くことがいかに楽かを痛感していて、できれば英語で働きたかった。
でも求人を探してわかったのは、ドイツの広告代理店の仕事で英語で働けるものなんてない!ということだった。ベルリンでも。これは本当に予想外だった(デザイナーやエンジニアなど手を動かす仕事・専門性の高い仕事の場合は英語でも見つかった。また、広告代理店の下請け会社や、広告に関するピンポイントの技術・サービスを提供する会社も英語で働けそうだった。日本・日本語が関係する仕事は探していないのでわからない)。グローバルに支社をもつ大企業であっても、訊いてみると「ドイツ支社の仕事はドイツ語圏に対するものが中心です」という回答ばかりで、英語で働きたいという夢はすぐに砕けた。ただそれは同時に、これまでドイツ語にかけた労力が役に立った!ということでもあった。ドイツ語やっててよかった……🥺
報われたのは嬉しいけれど、就職活動的には喜ばしいことではない。先述の通り、母語話者と競わなければならない一方、僕はドイツ語をそんな達者に扱える訳では全くない。しかも合致する職歴も欠けている。それでも面接官を説得できたことが自分でもものすごく不思議で、何がよかったのか、この間に少し考えていた。まず、何か新しいものを常に探している代理店の人たちに、デザイナーとしてやってきた内容があまりにニッチだったことや、極東から来た外国人であることを面白く思ってもらえたことはあると思う。
ただ、何よりも大きかったのは、ドイツ人の恋人のサポートだろう。どのような提出書類も面接の想定答案も、まずは僕が書いて、それを彼に修正してもらう形にした。だから内容は基本的に僕が考えている。でも、彼のドイツ社会への知識(常識)や言語能力のおかげで、添削の分量は少なくても、面接官の心に何倍も響くものができた感覚がある。そしてそれでやっと戦えたのだ。これは「現地人パートナーがいないと(ザ・手に職!という感じではない仕事の)就活はできない」という経験談になってしまう訳で、結果クソみたいな話だなぁとげんなりする。外国語として使う人がとても多い英語の世界なら、この部分が、こんなには厳しくないと思う。ドイツのビジネスの世界でも、ドイツ語の完璧さ・美しさへの要求がもう少し低く、外国人に優しくなってほしいのだけど、どうすればいいのだろう*。ああ、試用期間乗り越えられるのかなぁ。面接を複数回している訳だから(想定答案は彼とつくったが、どの面接もその通りには進まなかった)僕の本当の語学力は、ある程度伝わっているはずなのだけれど……。また報告します。
最後に3点、今回の就活で僕が経験した「みなさんのドイツでの就活でも役立つかもしれないこと」を挙げます。もちろん個別のケースそれぞれに、当てはまる・当てはまらないがあると思うので、当てはまりそう!と思われたら参考にしてくださいませ 😉
① 電話がとても使えると思いました。まず、応募する前に(適当に質問を用意して)電話すると、自分の経歴で面接に呼んでもらえる可能性を探りつつ、HRの人と面識をもっておけます。また、お祈りメールが来たあと電話で「なぜ落とされたのですか?」と尋ねると、次の応募・面接に活かせる情報が得られます。さらに、書類で落ちたあと、電話で問い合わせたことでひっくり返って面接が決まった会社が2社ありました。
② 学歴・職歴だけを見るとマッチしなさそうな印象を与えるので(職域を変えようと思っているのだから当然そうなります)CVや志望理由書に加えて、想定プロジェクトや想定業務への自分のアプローチの仕方・アイディア・答えをまとめた資料を作って同時に送るようにしました。これをはじめるまでは書類選考で落ちてばかりだったのですが、はじめてからは5割ぐらいの確率で面接に呼ばれるようになりました。「決まり・常識を守ること」が最優先のお堅い業界では、求められていない書類を勝手に送ると逆効果かもしれませんが、若い人の多い業界では有効なようです。
③ 突然「では次の質問は英語で答えてください」と急に英語を試される面接がたまにありました。
以上です。就活、疲れた……。でも働きはじめてからが本番なんですよね……🥺
* 僕は高3だった2011年に趣味でドイツ語の勉強をはじめて、2013〜14年にベルリン留学(これが初海外!)、2016年にゲーテのC2を取りました。大学の専攻はドイツ関係ではなく、また、ドイツ語から離れたイギリスの大学院時代をはさんではいますが、だとしてもかなりの期間、ドイツ語と触れています。今回の就活に際して相談したあるドイツ人の友人に「あなたのドイツ語力で問題があるという人がいたら、それは差別だとみなしてよいと私は思う。けれども、そういう差別主義者は残念ながら一定数、クライアントにもいるから、就活で苦戦したり、仕事で嫌な思いをしたりする可能性はある。それは覚悟した方がいい。そして、その面ではベルリンが一番やさしいと思う」と言われました。今のこのレベルまでドイツ語を引き上げても不十分とみなされるのは、ドイツ社会で変わってほしい部分です。心からそう思います。
ドイツ語の教材は英語に比べてとても少ないので、補助となるべくTwitterの運営を頑張っています。もしよければぜひご支援をお願いいたします!喜びます!🥺