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【2020マリノス】英国海兵隊流のパニックコントロール

ちょっと大袈裟なタイトルをつけてみた。
マリノスのサッカーは相手チームの選手をパニックに陥れる。8点とった試合では、相手チームは完全にパニックになっていたと思う。逆にマリノスがパニックになってしまった試合もあった。

パニックになるとはどういうことなのか。
B級映画でありがちなパニック描写は、何かわけのわからない叫び声を上げながら闇雲に走り出し、その結果最悪の事態になるというパターン。しかし、死と隣り合わせの本当の戦場で兵士が陥るパニックはそうではないらしい。

パニックになると

「パニックに陥った部下は一目でわかる。動かなくなるか、動きがスローになる。その結果、死ぬ確率が高くなる。」
元英国陸軍将校 ジェームズ・キャメロン

確かにサッカーの試合でも、パニックになると選手の足は止まる。もし映画みたいに叫んだり走ったりしていたら、まだ本当のパニックにはなっていないということになる。

相手選手の足が止まれば、後はマリノスのやりたい放題。ではどうすれば相手選手をパニックに陥れることができるのか。更に踏み込むと、どうして人はパニックになってしまうのか。

パニックになる状況

「死ぬかもしれないという恐怖と、自分が何をすべきか分からないという状況が、同時に起きた時に兵士はパニックになる。」
元英国海兵隊将校 ジェッド・ストーン

サッカーに置き換えると「ゴールされるかもしれない恐怖と、自分が何をすべきか分からないという状況」だろうか。”同時に起きる”という条件がミソのようだ。

マリノスのポジショナルプレーは、誰をマークすべきか、ボールにチャレンジすべきか否か、など相手選手に高難度のプレー選択を次々と間髪なく迫り、思考を停止させる。
ただ、相手を本当のパニックに陥れるにはそれだけでは不十分で、仲川やエリキ、マルコス、エジガルが持つ、一瞬でも隙を見せるとゴールしそうな、相手選手に恐怖を感じさせる雰囲気が必要になってくる。

遠藤がなかなかスタメンに定着できないのは、この迫力を出し切れていないからかもしれない。何をするかわからないような、吹っ切れた怖さを掴んでほしい。インタビューでは何を言うかわからない雰囲気はある。

パニック対策 (=マリノス対策)

「恐怖を取り除く事は不可能だ。だが“何をすべきか”を明確にすることは出来る。恐怖だけならパニックにならない。やるべき事に集中し行動を起こせるからだ。」
元英国海兵隊将校 リチャード・ワッツ

戦場での死の恐怖に比べたら、サッカーの試合でゴールされる恐怖なんて、全く大した話ではない。オシムさんもそんなような話をしてた気がする。

そうは言っても、相手選手にそれなりの恐怖を与え続けなくてはならない。マリノスのFWは決して迷いを見せてはいけない。ちょっとクレージーなくらいがいい。それによって相手が感じる恐怖心を抑える対策などない。

となると、相手チームがマリノスとの試合でパニックにならないためにできる対策は、何があっても思考停止にならない準備だ。マリノスのポジショナルプレーによりプレー選択を迫られたら、決め打ちで一方を選ぶ。とにかくこのタスクだけをやる、という単純化で考えすぎて足が止まらないようにしておく。(某緑のチームをイメージ)

つまり、明確なマリノス対策をしてくるチームは、あまり複雑なことはやってこないはず。だからマリノスは対策の対策など考える必要はなく、相手の決め打ちプレーの逆を突き続ければ良い。

パニック対策 (=自分たち側の対策)

(再掲)
「恐怖を取り除く事は不可能だ。だが“何をすべきか”を明確にすることは出来る。恐怖だけならパニックにならない。やるべき事に集中し行動を起こせるからだ。」
元英国海兵隊将校 リチャード・ワッツ

マリノスと対峙してもパニックにならない自信があるチームは、複雑な状況になっても真っ向から頭脳勝負してくる。その場合もマリノスは受けて立つのみ。むしろプレースピードを上げて更に畳み掛けていく。マリノス強い!

と言っても、新しいパターンで対応された場合や退場者が出た場合などは、マリノスがパニックになってしまうこともあった。
それを防ぐ対策が〝何をすべきかを明確にし、やるべき事に集中して行動を起こす〟こと。これはボスや喜田が常々コメントしていることと同じ。
もともと練習していた事を愚直にやり続けることでパニックになることを防ぐ。これは理にかなっている。万一それで負けたら力が足りなかったと諦める。

マリノスの戦術は、相手チームから見れば難解だが、マリノスの選手にとってはシンプルなもの。なんと都合の良い戦術!
元英国海兵隊将校の言葉と並べて、なにか意味ありげに書いてみたが、特に面白い結論にはならなかった…

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ポジショナルにパニックと対峙する

〝やるべき事に集中し行動を起こせ〟これがパニック対策の原則である。
しかし、今私たちが置かれているのは、迫る新型コロナウイルスの恐怖、情報過多で自分が何をすべきかわからない、加えて外出自粛で実際にも行動できない、という状況で、パニックに陥る条件がすべて揃っている。恐怖と思考停止の同時発生。

大した病気じゃない、自分はかからないと思い込み、それによって恐怖を回避する。或いは、マスク確保を自分の役割として、とりあえずドラッグストアに並ぶ行動をすることで気持ちを落ち着ける。(本当の)パニックを避けるため、こうした振る舞いをしてしまうのは、仕方のないことかもしれない。

無理やりこじつけると、私たち1人1人がメインテインポジション(自宅待機)を意識し、他のポジションにいる味方もそれぞれ役割を果たしているはずと信じて、チームとしての勝利を目指す。王者の自信を持って新型コロナウイルスパニックと対峙したい。
今やるべき行動は、#StayAtHome である。


参考にしたページ
多国籍軍に学ぶ組織変革
https://www.mckinneyrogers.co.jp/rensai/rensaibn/#8
ジェッド・ストーン 元英国海兵隊将校, 王立海軍学校幹部養成プログラム卒業、山岳共同作戦のスペシャリスト、鋼鉄ワイヤー滑降世界記録保持者。
ジェームズ・キャメロン 元英国陸軍将校。英国陸軍参謀本部最優秀将校(受賞2回)。大英帝国三等勲爵士(CBE)。最年少でサンドハースト王立陸軍士官学校教官就任。元英国国防省テロ対策部長補佐。2005年のロンドン市内テロ発生時の政府の危機管理対策委員会(COBRA)メンバー。
リチャード・ワッツ 元英国海兵隊将校。大英帝国四等勲爵士(OBE)。アシュリッジ・ビジネススクール、マンチェスター・ビジネススクール修了。

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