#36 『百貨店』のコア・コンピタンス
2024年1月某日
名古屋の百貨店を訪れる機会があった。ここ数年、オンラインコマースに慣れて、だらしないカラダになってしまっていた。やっぱり、リアルな買い物には相応の魅力があるとあらためて感じた。
さて、最近は百貨店も様々に独自色をだそうと、空間づくりやキュレーション面で面白い取り組みが増えていると思う。名鉄百貨店では、中部の工芸品らを中心に取り揃えた「名鉄商店」なるセレクトショップもできていた。かっこいい。
まがりなりにも地方創生に関わる者として、このような店舗は大好物であるが、品揃えを見ているといつも疑問に思うことがある。それは、「高付加価値路線を目指す伝統工芸・地場産業系アイテムは、実際なんぼほど儲かってんねやろか。」ということである。
想像して欲しい、全国津々浦々、様々な伝統工芸品や地場産業が存在するが、近年の「稼ぐ力向上」のアプローチのほとんどが、「高付加価値化」ではないだろうか。そのため、百貨店などのセレクトショップにおいては、和紙、金物、陶器など、普段使いには少々贅沢な価格帯で、アート性を高めたアイテムが並んでいるのではないだろうか。
無論、これらのアイテムが生産者が企図したとおり、インバウンドなどのリッチな層を中心に、バカ売れしていればなんの問題もない。むしろ喜ばしい。ただし、それは当該産業が持続可能なものとなるような、トレンドに影響を与える程度に大きなインパクトを生んでいるのだろうか。
筆者の仮説に過ぎないが、おそらく「小売」という事業体でアイテムを取り扱うだけではその実現は難しいのだろう。一方、「流通」という事業体として関わることで、可能性は大いに飛躍するのだろう。具体的には、宿泊・飲食を中心とする「観光体験」にアイテムを介した価値提供をするとか、貿易を絡めることで、世界各国の上位数%の富裕層を束ねた市場を作りにいくとか。そのような複合的アプローチを積み重ねながら、予期せぬ市場機会を探索していく動きがあることで、中長期的な成果が生まれる「可能性」を高めることになるのだろう。そういう意味では、百貨店のような企画力・流通力を兼ね備えた業態は、地方創生の立役者として存在感が大きいと思う。
足元の業績などについては、色々大変なのだろうけど、たまにいくとやっぱり楽しい百貨店。「センスがよい」という競争力は、今後ますます重要な意味を持つことになるのだろう。楽しかったです。
ほなら。