『秩父観音霊験記』
秩父札所を巡ると、各寺院の観音堂や本堂に浮世絵で描かれた奉納額が掲げられています。この額は、秩父市在住の方が奉納をされたものです。
この額絵は、『秩父札所観音霊験記』という江戸末期の錦絵をもとに描かれています。
『秩父観音霊験記』とは
西国札所、坂東札所と合わせて百観音の霊験記として出版された『観音霊験記 百番目録』のうち、秩父札所の霊験記です。
錦絵の構成
上段 境内図、御詠歌、句
境内図 二代歌川広重(文政9(1826)年~明治2(1869)年)
奉納額として境内図が描かれており、御詠歌と奉納の句が書かれている
下段 錦絵、縁起
錦絵 三代歌川豊国(初代国貞)(天明6(1786)年~元治元年(1865)
縁起 万亭應賀(文政2(1819)年〜明治23(1990)年)
各寺の縁起と、それに合わせた錦絵が描かれている。
「秩父観音霊験記」の意義
境内図には、江戸末期の境内が描かれており、明治時代の廃仏毀釈や、火災などで消失する以前の境内の様子がわかります。
縁起からは、単に霊験譚というだけでなく、各札所の成り立ちを読み取ることができます。
参考資料
秩父観音霊験記 昭和復刻版(法性寺蔵。復刻時期、出版元は記載なし)
元の錦絵では、変体仮名などで書かれており読解が困難だったため、
縁起は昭和復刻版と合わせて印刷されていたものを使いました。
一部表示できない漢字などは、同じ意味の漢字に変換しました。
元版の出版年 安政6年(1859)
版元 南傳貮山庄板(江戸の南伝馬町二丁目にあった山田屋庄次郎)