【後編】大阪文化服装学院卒展レポート2023〜世界を見据えた学生が切り開くファッションの新境地〜
前回に続き、2月11日(土)に行われた大阪文化服装学院(OIF)の卒業作品発表会レポートの後編をお届けします。今回は、大阪文化生が学生生活の集大成として創り上げる、卒業作品ファッションショーの様子を紹介していきます!
関西最大級の服飾専門学校、大阪文化服装学院
1946年に洋裁女学院として創立され、77年の歴史を歩んできた大阪文化服装学院(OIF)は、世界各地で活躍するデザイナー、クリエイターを数多く輩出しています。
大阪文化服装学院には、スーパーデザイナー学科、ファッション・クリエイター学科、ブランドマネージメント学科、ファッション・ビジネス学科、スタイリスト学科といった様々な学科があり、デザインからアパレル経営まで多岐にわたり、ファッションに関する知識が学べます。
では、、、いよいよファッションショーの模様を紹介していきます!
卒業作品発表会優秀作品
学びの集大成、卒業作品発表会2023 ファッションショー
まず始めに、ショーの内容をご紹介します。約1時間半のショーでは、スーパーデザイナー学科4年生による個人ブランドコレクション、ファッション・クリエイター学科3年生によるグループ及び個人のコレクション、スタイリスト学科によるスタイリングショー、更に、イタリアポリモーダ校に交換留学したスーパーデザイナー学科卒業生 森上ひかりさんによる特別コレクションが披露され、とても盛沢山で見ごたえがありました。
ショーの後、各賞の発表に移り、受賞した学生及びブランド名が次々と呼ばれていきます。名前が呼ばれるごとに、学生たちの歓喜の声があがっていました。
手編み100時間!?一人一人の思いがこもった作品
見事、コレクション部門グランプリに輝いたのは、ファッション・クリエイター学科3年生のグループブランドの(beg)。
「感情ガチャ」をテーマに掲げた、(beg) は、なかなか思い通りにならない毎日をポジティブに、且つポップに生きようというメッセージが込められたブランドです。コロナ禍で閉塞感が未だ漂う現代社会を、カラフルな色使いで明るく照らすような希望に満ちたコレクションでした。
表彰式では、制作過程での苦労話を話されていました。なんと一体あたり100時間もの時間をかけて手編みしたとのことです!腱鞘炎をものともしない、恐るべし服飾学生…。学生のカワイイに懸ける想いが存分に伝わってくる作品たちで、へんてこりんな世界観が一体一体に表現されていました。ファッションって自由だ!!
ホラー映画の新たな表現の可能性を探る
続いて、スタイリング部門グランプリに輝いたのは、スタイリスト学科マオさん、チホさん、セイカさんの三人が手掛けたMIDSOMMAR × rebellious spirit 。
映画「ミッドサマー」からインスピレーションを得たというスタイリング。主人公の抱える不安や侵食されていく恐怖感を、敢えて黒を使わずに表現したそうです。白を基調に、赤や黄色、緑を用いたカラーリングはエネルギッシュでありながら、ホラー映画の不気味さが漂います。耳元に一点投入された青のアクセサリーも際立っていて素敵ですね。
鮮やかな緑色は、映画に数多く登場する植物を表しているそうです。
個人的備忘録
ー3Dモデリングの可能性ー
個人的に今回の取材で最も印象的だったのは、3Dモデリストコースとニットコースが共同で手掛けた3Dニットコレクション、その中でも「UN」と「Melting Depth」です。大阪文化服装学院では、島精機製作所のホールガーメントコンピュータ横編機を導入しており、完全無縫製のニット制作ができる設備が整っています。上記2つのコレクションにはそのホールガーメントと業界でも広がっている3Dモデリングの技術が同時に取り入れられており、自由自在にカタチを成すニットの表現力に驚嘆しました。
近年では、3Dモデリングを使用した製品に取り組む企業が増加していますね。3Dデータを用いた生産は、デザイン案から量産決定に至る期間の短縮やサンプル経費の削減、先行受注などによる需要予測、更に産業廃棄物の減少など多くのメリットがあり、サステナブルな社会へ向けたアパレル業界全体の動向にマッチしているように思えます。大量消費、大量廃棄の悪循環から抜け出し、無駄のないものづくりへと社会は確実にシフトしてきています。3Dモデリングを用いた新たな生産形態が、現在のファストファッションの生産サイクルを根本的に変革する鍵となるかもしれません。
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