ーZ世代が描く未来のモノづくりー『Z世代のクラフトマンシップ展~ファッション×サステナビリティのお勉強』
大阪文化服装学院の学生が、「サステナブルなファッションクリエイション」を目指した作品を展示した『Z世代のクラフトマンシップ展~ファッション×サステナビリティのお勉強』。
たまたま知って、見に行ってみたらとても面白かったので、今回はその展覧会の様子を紹介します。
Z世代のクラフトマンシップ展とは
大阪文化服装学院の学生が、様々なアプローチを用いて手がけた、サステナブルなクリエイション。
そのアプローチは、廃棄衣料のアップサイクルから、フィッシュスキンを使用した作品、3Dモデリングなど最新テクノロジーを活用した作品まで多様。
大阪中之島美術館で、2023年3月14日〜16日までの日程で開催されました。
本展覧会に作品を出品しているZ世代の学生さんは、コロナ禍でたくさん学生生活に制限があったものの、その一方で、「考える時間」を手にしたそうです。
未来のデザイナーに絶対に求められる、サステナブルな考え抜かれたクリエイションが並んでいました。
新たなエコレザー、フィッシュレザーの魅力
レザーといったら皆さんはどの動物を思い浮かべますか?
牛、馬、豚、羊…などが一般的ですよね。
今、魚の皮から作られる フィッシュレザー(フィッシュスキン) が注目を集めています。
フィッシュレザーとは、その名の通り、なめし処理を施した「魚の革」のことを指します。
食用として消費される魚の皮を使用しているため、少ない環境負荷で生産が可能です。魚がレザーに加工されるとは、驚きですね!
フィッシュレザーブランド tototo の公式サイトにフィッシュレザーの生産過程について説明されているので、気になる方は下記をご覧ください。
会場には、そんなフィッシュレザーを取り入れたコレクション、大阪文化服装学院スーパーデザイナー学科4年生 岡田太陽さんによる「TAIYO OKADA」が展示されていました。
魚ならではの目を見張る美しい鱗模様、
他の動物のレザーと全く違う風合いが特徴的です。
また、同校の他のコレクションには、本来廃棄予定だったレザーを用いた作品もありました。色むらや傷物と呼ばれるレザーを使用しているとのことで、リアルレザーとの向き合い方について考えさせられました。
昨今では一切動物由来の原料を使わず、サボテンやパイナップルの葉といった植物から作られるヴィーガンレザーも登場しています。
リアルレザー、フェイクレザー、エコレザー…。
それぞれのメリット・デメリットをよく理解し、サステナビリティの観点で心から応援できる商品を選択していきたいですね。
再利用をスタンダードに
ファストファッションがすっかり定着し、店頭には毎シーズンごとに新商品が並び、安く手軽に衣服を買い替えることが当たり前になった現代。
今回の『Z世代のクラフトマンシップ展』のテーマである、
‟サステナビリティ”。
豊かさの裏の代償について考える上で、これからのモノづくりに欠かせない大切な視点ですよね。
同学科4年生 中本 美衣奈さんによる「MiINA NAKAMOTO」、そして市川 龍一さんによる「RYUICHI ICHIKAWA」。
両コレクションの共通点は、もともと廃棄されるはずだった衣服に着目した点です。
廃棄予定だった着物のアップサイクルコレクション「MiINA NAKAMOTO」は、異なる柄の着物の組み合わせがとても印象的でした。
和柄特有の落ち着いた色調や趣が効果的に用いられることで、ケンカしがちな柄×柄の調和が取れており、着物の新たな可能性を感じさせます。
<リーバイス® 501®>のユーズドストックをアップサイクルした 「RYUICHI ICHIKAWA」では、一枚一枚異なるデニムの表情がとても面白かったです。
ゴールドラッシュに沸いた19世紀半ば、リーバイス501は、破れにくい作業着として生まれました。そのため、耐久性が非常に高いことで有名です。
そのように長く着用できる衣服が大量に廃棄されている現状には疑問を抱かざるを得ません。
市川さんが提示した『服×アート』というアイデアは、衣服の廃棄量を減らす新たな道となりうるのではないでしょうか。
おわりに ~Z世代が描く未来のものづくり~
今日の大量消費・大量廃棄社会では、リサイクルのシステムでさえキャパオーバーになり、どうしても廃棄される衣服を生み出してしまいます。
先にご紹介したフィッシュレザーの例のように、今日の繊維業界では、環境に配慮した新素材が続々と誕生しています。消費者である私たちの選択は、企業の戦略を変え、社会を変革しうる力を持っています。
また、今回のようなアップサイクルの試みは廃棄される衣服を減らすだけでなく、生産⇄消費サイクルの加速を抑え、これからのモノづくりを根本から見直す良い機会となるのではないでしょうか。
この記事が未来のものづくりの在り方について考えるきっかけとなれば幸いです。
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