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ブルアカ『百花繚乱編』1章感想──物語る行為の裏と表

 ブルーアーカイブのメインストーリー百花繚乱編第1章(いつかの芽吹きを待ち侘びて)の感想です。あまり整理できていないので取り留めない感じになっています。

 ネタバレを含みます。

 

 物語る行為について

 物語というのは基本的にフィクションだけど、物語るという行為は必ずしも虚構のみを対象にしていない。つまり、まったくの嘘八百を物語ることも可能だし、現実に起こった出来事を物語ることも可能だ。ただし、現実は物語ではないので、現実を物語ろうとするといろいろと齟齬が生ずる。吉村昭や司馬遼太郎の小説が必ずしも史実とイコールではないように、「物語られた現実」には虚構のヴェールがかかっている。
 人間というのは虚構と現実を綯い交ぜにして扱える(というか多くの場合はそのようにしか扱えない)ので、物語の中に現実と虚構が混在していても違和感は抱かない。むしろそのほうが自然に見えたりする。

 シュロが使う「百物語(かいだん)」はそうした「物語る」行為の負の側面を強調したもので、要するに虚構の存在とひとつまみの現実とを一緒くたに物語ることでそれらを並列して顕現させる。特に感情というものは自分でもなかなか言葉にできないものだから、他者から「お前はこういう人間だ」という言霊をぶつけられると知らず知らずにそういう認識が育ってしまうこともある。ナグサに対する精神攻撃はそうしたものの延長線上にある。

このへん、物語ってるな〜

 逆に、「偽りだとしても、それを演じ続けていけば、いつしかそれは本当になる」という先生の台詞は、「物語る」行為の正の側面を示している。ここで先生はシュロの持ち込んだ虚構を腑分けして解体することはせず、より強い物語で上書きすることを選ぶ。実際にアヤメが黄昏に飲み込まれたという事実は揺らがないわけだし、ナグサの精神的な弱点は真実なので、そこを掘り下げても勝ち目はない。それならば、虚構であるとはわかっていても、物語の力に縋るしかない。

 ただ、現時点ではナグサの「演技」はまだ未熟で心もとない。いつしかそれが真実になる日が来てほしいし、来てくれなければナグサは真に己の弱点を克服できないままだろう。2章以降でそういう話が展開されることを勝手に期待している。個人的に、コクリコがより強力な論理で「物語」を操ってくる敵だったら嬉しい。

一撃で本質を突いた煽りをしてくるの好き

 ストーリーの展開について

 今回のストーリーはこれまでのブルアカメインストーリーの定番展開を踏襲しつつ、新たな設定開示や今までにないタイプのキャラクターの登場もあり、いろいろ考えたくなるところが多かった。ただ第1章ということもあってか、まだ問題が山積みの状態で、よくわかっていないところも多く、そのあたりとどう向き合っていくのかが難しい。
 カリスマ不在の環境を描く話はこれまでも繰り返されてきていて、アビドス(ユメ先輩)、ミレニアム(リオ会長が失踪)、ティーパーティー(セイアが姿を隠していた)、SRT(FOX小隊が失踪)など、折に触れて同じテーマが出てきている。共通しているのは、優秀な先輩がいなくなってしまったあとにどうにか残されたメンバーでやっていかなければいけないという問題意識で、そのあたりは学園もの・部活ものらしい味がする。ブルアカ世界だと退場の仕方が基本的に失踪(or死亡?)なので不穏だけど、ベースにあるのはそういう普遍的なシチュエーションだ。
 そもそも物語全体が連邦生徒会長の失踪に端を発しているので、こういうテーマは今後も繰り返し描かれて掘り下げていくんだろうなという感触がある。
 (ところで、今年のガルパンの映画もそういう話でしたね)。

 もうひとつの定番の展開として「仲間を助けに行く」というやつがあって、今までならホシノとかアズサとかが助けられる側だったわけだけど、今回はユカリがそのポジションだった。いなくなってしまった先輩を救うことは現状できないけど、大切な後輩に迷惑をかけるわけにはいかないだろということで百花繚乱の上級生三人が動くことになるというのは、わりと明快な流れだった。
 ユカリは先輩にめちゃめちゃに愛されてるんだなあという感じがして良かった。キキョウ先輩、ユカリに渾身の手料理振る舞ったあと若干の後ろめたさとともに歯磨きチェックしてそう。レンゲ先輩は帰り道にその日良かったところとかをさらっと褒めてくれそう。
 ただ難しいことに、百花繚乱の「楽しかったあの頃」を先生としては知らないし、そのノスタルジアを共有できないので、先生の預かり知らないところで話が進んでいる感は否めない。妄想と幻覚で補うしかない。できればそのあたりを今後も(イベントとかでもいいから)掘り下げてもらいたい。

百花繚乱過去編をやってほしいという祈りを込めてタカネの顔になっている


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