福田赳夫元首相とロスチャイルド
福田赳夫元首相とロスチャイルド
この章の最後に、当時、欧州駐在の財務官僚だった福田赳夫元首相が、折に触れて周囲や家族に語っていたという逸話を紹介しましょう。
1932年頃、英仏に駐在していた大蔵省の福田赳夫氏は、高橋是清蔵相の命で、上司である海外駐箚財務官の津島寿一のお供をして、ロスチャイルド邸を訪問しました。
間もなく償還時期が来る日露戦争資金として発行したフラン建て日本国債について、フランスが1920年にフランを切り下げて金本位制に復帰していたので、切り下げ後の新フランで償還することを通告しに行ったのでした。
会話の中で、はじめは高橋是清の噂話をしながら友好的であったロスチャイルド(パリ家第3代当主エドゥアール)は、津島が新フランでの償還を持ち出すや否や激昂し、卓上の呼び鈴を押しました。すると隣室から銃器・棍棒などを持った数人の屈強な男たちが部屋に入って来て、「撤回しなければ一命を奪う」と津島を脅したと言います。
津島と福田赳夫が這うようにして逃げ帰って、高橋蔵相に報告すると、高橋は「已むを得ぬが、一応言うてみただけだ」と津島を責めず、国債は旧フランの価値で償還されました。要するに、パリのロスチャイルド家に損をさせなかったということです。
1933年に帰国した福田赳夫氏が調べたところ、このフラン建て国債が新フランで償還したように処理されていて、旧フランとの差額を調達した証拠は省内、大蔵省内の何処にもなかったので、狐に摘ままれた思いであったそうです。
「契約とか国際ルールよりも上に、ロスチャイルド家の意向がある」というのが世界の現実だということを、故福田赳夫元首相が逸話として証言しているという話です。