いつでもだれよりも、したいことができるのはどの人? (こどもてつがく低学年)
こどものような大人たちが乱入
もともと登録人数が少なめな低学年。
今日はお盆ということもあって、なんと参加は女の子(すーちゃん)ただひとり。
でも安心してください!
てつがく屋は、子どもの心を持った大人、取り揃えてますよ!!
ファシリ+大人2人(お兄さんとおじさん)も混じって一緒に対話しましょう。
今日もカードを使います。テーマは
「いつでもだれよりも、したいことができるのはどの人?」
どうやらこのテーマは「自由」に関係がありそうですね。
テーマは「いちばん自由なのはどの人?」 と言い換えられるかもしれません。
カードは、
鳥
学校の先生
大忙しのお母さん
妖精
お金持ち
ホームレス
仕事後の私(参加した大人が勝手に命名)
スキップしている子ども
王様
警察官
南の島にいるシロクマ
自由な順にランキング付けしてみよう
このカードを「いつでもだれよりも、したいことができるのはどの人?=自由だと思う人」の順番に並べてランキング付けしてみます。
ランキング付けは重要な作業です。何が自由の条件なのかは多岐に渡り、この作業をすることによって、テーマについて自然に多角的に考えることになるからです。
すーちゃんがまず並べた順番は、
・妖精
・王様
・お金持ち
・鳥
・仕事後の私
・学校の先生
・スキップしている子ども
・南の島にいるシロクマ
・警察官
・ホームレス
・お母さん
という順番。
妖精が1位なのは「空を飛び回れるから」。
飛び回れるのは確かに自由でしょうな……。
同じく空を飛べる鳥が4位なのは「これはひよこだから、高く飛べなくてすぐに落ちちゃう」とのこと。理由も明確です。
王様は2位。王様もいつでも飛行機に乗って飛べるけど?
「王様はパイロットに運転してもらってるから」
なるほど。毎回人に頼まないといけないのは、不自由と言えば不自由。
大人に対する高い解像度
お母さんは意外にも最下位。
「お母さんは、赤ちゃんをだっこしてるから手が離せない。
今は料理しないといけないのに、できない。だから夜寝るのが遅くなる」
すーちゃんのお母さんに対する解像度が…異様に高い……!!
南の島にいるシロクマも結構下位です。
「暑そうなのに、水を飲むことができないから。食べたらダメな魚を食べたら病気になる」
自由の前に生きのびることは確かに重要!
でもシロクマは、お母さんより上位なんだね。
「お母さんは手が離せないけど、シロクマは何もやってないから」
確かに、忙しいかどうかというのも、自由と関係がありそうです。
忙しくなく、能力がある=自由?
ホームレスが下の方にあるのは?
「家がないから、お部屋やクローゼットもない。時計もないし」
物がないと、不便だし好きなことができないということですかね。
お金持ちも上位にいますね。
「お金持ちはお金を払って、家を建ててもらえるから」
「お金があったら、なんでもできるん?」と大人が問いかけると
「わかんない」とすーちゃん。
「ホームレスなら、公園で遊びまくれるかもよ? 時計も公園にあるのも見ればいいし」と大人が聞いてみます。
「でも目が悪かったら見れない。家の中にメガネがあったら、時計も見えるし」
「やりたいことを自由にやるためには、そういう能力が大事かな?」とファシリ。
「能力は大事だと思う。頭が良くなかったら、次何をするのかわからなくなっちゃう。勉強もそう。こうしたいから、こうしようと考えて」と。
「お金持ちと王様の能力はどう違うの?」とファシリ。
「お金持ちの人は能力がとってもいい。王様は家来にいっぱい頼むから、どこに何があるのかわからない」
自由に行動するためには、能力が大事?
それを踏まえて、順番を変えてみます。
能力順にランキングが変動
「スキップしている子ども」と「仕事後の私(テレビ見ている)」の順番が変わりました。
「遊んでると何かが見つかるかもしれないけど、こっち(仕事後の私)はテレビ見てるだけだから目が悪くなるかも」
すーちゃんにとっては、目が良いのはとても大事な能力のようですね。
やらなくちゃいけないことが多いのは不自由?
そして突然、王様は、2位から10位に転落。
「やらなくちゃいけないことが多いから。お母さんは料理、警察はお仕事。王様は国を攻めるために王様になったから。国のことを考えたり、兵士のことも考えたり」
確かに、やらなくちゃいけないこと=義務と責任感、だとすると、王様はやらなくちゃいけないことも多く、責任感も大きそうです。権力があっても、自由になんてできないのかも?
先生の順位も下がりました。
「先生は点付けをしたり、土日も働かなきゃいけないから」
相変わらず、大人への解像度が高いすーちゃん……。
「お金持ちの人はやらなくちゃいけないことはないの?」とファシリ。
「お金って使ったらなくなるよ」と別の大人も聞いてみます。
「家を持っているから、大丈夫。この人、カバンにお金がパンパンに詰まっているから、何もしなくてもいい」
そしてこのランキング付けは、やらなくちゃいけないことが少ない人が上位になり始めたようです。
やらなくちゃいけないことが、したいことだったら?
お母さんは安定の最下位。
「子どもの面倒を見るのが、やらなくちゃいけないことじゃなく、お母さんのしたいこと、やりたいことだったら?」と聞いてみると、
「途中で嫌だと思ってもやめられないし、毎日だと飽きることもある」とすーちゃん。
自由であるためには、ここまで出てきた条件は、
●しなきゃいけないことが少ない、忙しくない
=時間がある、したいことができる、責任がない
●能力がある
=やりたいことができる
●お金がある
=頼んで誰かにやってもらえる、しなきゃいけないことが少ない
などなど。
何かやりたいことがあると、そのためにはしなきゃいけない、やりたくないことは邪魔になるのかもしれない。さらに、やりたいことを達成するためには、能力も、お金もあった方がいいのか……?
王様はホームレスよりランキングでは下位にあります。
「じゃあ、王様になるんだったら、ホームレスの方がいい?」「幸せなのはどっち?」と問いかけてみます。
「幸せなのは王様。ホームレスはまず家を建てないといけないし、家具も買わなきゃいけない。そのために仕事死なきゃいけないし、お金も貯めないといけない。でも王様は、家来たちにあれこれやってと言ってるから、どこに何があるかも知らないし、自分が座ってる場所しか知らない」。
自由であるかどうかと、幸せかどうかの関係も気になるところです。
すーちゃんにどれになりたいか聞いてみると、
「妖精!」と即決。
「妖精の役割は? 妖精はやらなくちゃいけないことはないの?」と問いかけると
「お空をパトロール」とすーちゃん。……メルヒェン。
なりたい職業をきいてみたら
最後にすーちゃんに将来の夢を聞いてみると、
「お医者さん」との答え。
「お医者さんは、めっちゃ忙しいし、責任感もあるよ?」と聞いてみました。自由かどうかのランキングで言えば、上位でもないのかもしれません。
それでも「人助けが好きだから」とすーちゃん
「どうして人助けが好きなの?」と問うと
「お礼を言われるから」と。
何を持って自由とするのか、複数の視点から考えることができたようです。
そして、自由かどうか、幸せかどうかと、人が選ぶ道は必ずしも一致しないのかもしれませんね。