ひとつ目提灯の道標
思いがけず、嬉しい感想を頂戴した。
ので、私もつらつらと思った事を書いてみたくなった。
竹書房さんが毎月開催している怪談マンスリーコンテスト。
2月の最恐賞に輝いたのは丸太町 小川さんだ。
以前よりTwitterやコンテストの選考通過者でお名前は拝見していた。
名前の字面とアイコンのかわいらしさが妙にツボなのも相まって。
どんな方なのだろうと探れば、エブリスタで実話怪談を掲載していた。
ペタペタと、素足で近づいてくるような物語の運び。
シンプルでいて純文学的な表現。
怖い話を読み慣れてない人でも、スッと読める。
慣れている人は想像力を極限にして楽しめる。
これを1000文字に閉じ込めるのは並大抵のことではない。
いつぞやのマンスリー総評で書かれていた「読者に考察させる余地が必要」というのが理解できる。
ここで丸太町さんの受賞作品『あとから、ひとり』を読んでほしい。
https://kyofu.takeshobo.co.jp/2021/03/01/gotochi/
ここからネタバレを含みつつ語らせていただきたいと思う。
まず大分県にある横穴墓群。
これを写真検索すると、集合体恐怖症にはきつそうな遺跡が出てくる。
低めの崖をくり抜いて巣穴を並べたような、またはRPGの世界にあるダンジョンもこういう造りではないだろうかと妄想できる見た目だ。
子供ならば探検したくなる場所だろう。
しかもあの世に繋がるとあらば、そんなはずはないと思いつつ遊びに行ってしまいそうだ。
そこに数の怪異。
「イカニモ」な場所に息づく怪異というものは数が変わることが多い。
その中でもこの話は特殊なのではないだろうか。
全員が記憶を持っているのにも関わらず、誰が増えたのかわからない。
数の妙が活きる。
数字をいれることによって引き立つ恐怖が見事だ。
合わせてこのお話の怪異は現在進行形。しかもこれ以上何も解決しないのだろう。
人数の謎も、友情も、そのままに時間が経過していく。
怪異の事象を口にすると展開が変わる、というのもありがちな話だが、このお話では口に出したところで謎のまま。
人間は不都合が生じないと動かない。
気付けば最後に怪異ではない、別の種類の恐怖が頭をもたげているではないか。
いい意味で裏切られたと悔しくなった。
単調に増えただけで終わらない。怪異の原因とこれからへの考察。
話の広がりとはこういうものか。
物語の余韻とはこういうものか。
改めて他の方の作品に触れることの大切さに気付かされた。
素敵な作品を生み出してくれた丸太町さん。
もう一度この場を借りてお礼申し上げます。