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【認知科学に基づく経営のススメ⑦】コーチングとの親和性:個人と組織を変える二重のアプローチ

はじめに

こんにちは、株式会社風凜の小澤哲也です。
前回は、評価制度とアファメーションの組み合わせで組織を活性化させる方法をご紹介しました。

今回のテーマは、「コーチング」との相性についてです。個人に焦点を当てるコーチングと、組織やチーム全体を見据えるアファメーションのアプローチは、実は非常に親和性が高いのです。


認知科学に基づくコーチングとは

近年、コーチングの世界でも心理学や脳科学の発展により、「クライアントの脳内情報処理を前向きに再構築する」というアプローチが注目されています。これは、相手の感情面を受容するだけでなく、「どのような認知パターンが行動を阻害しているか」「どうすれば脳が新しい行動を選択しやすくなるか」を科学的に分析し、支援していく方法です。具体的には以下のような考え方を重視します。

  1. 脳の可塑性(ニューロプラスティシティ)
    人間の脳は、繰り返し与えられる刺激や情報に応じて神経回路が再編されます。コーチングでは、クライアントが抱える「自分にはできない」「失敗するに違いない」といった固定観念を、「できるかもしれない」「むしろ成功のイメージを描ける」という形に再構築することで、行動や思考の回路を変えていきます。

  2. 思考のフレームとスキーマ
    認知科学では、私たちが世界を理解し行動するために用いる「スキーマ」が注目されます。コーチングでは、このスキーマを自覚し、新たな行動に合った形で修正・拡張していくプロセスを促進します。

  3. 目標やゴールの脳内先取り
    「すでに目標が達成されている状況」を脳に繰り返し提示することで、実際の行動をそのイメージに近づける。これは潜在意識に直接働きかける効果があり、プラスの自己発話とも深く連動します。

認知科学に基づくコーチングは過去の投稿で詳細に記しておりますので、本記事では割愛します。是非、過去の投稿を参照ください。

プラス言葉との相乗効果

アファメーションをコーチングの場に組み込むと、お互いの強みがより引き出されます。具体的には、

  • 自己肯定感・自己効力感の強化
    コーチングでは自分の内面を掘り下げることが多いですが、その過程で「こうありたい自分」をプラスの言葉で表現する習慣が身につくと、クライアント(受け手)の潜在意識がさらに前向きになりやすい。

  • 目標設定がスムーズ
    コーチングで明確になった目標やビジョンを、プラスのフレーズとして繰り返す。これによって、行動につながるモチベーションが持続しやすい。

  • 行動へのフィードバックがポジティブに
    コーチングのセッションでは、「今回どんな行動を取ったのか」「どう感じたのか」を振り返ります。プラスの言葉がベースにあることで、改善点を見つける場面でもネガティブに陥りにくく、建設的な学びが得られやすくなります。

組織コーチングへの展開

近年注目されている組織コーチングは、個人だけでなくチーム全体がコーチングの手法を用いて成長していくアプローチです。ここでも、アファメーションをうまく組み込むと、大きな相乗効果が生まれます。

  • チームビルディング
    全員が「自分たちはこういうビジョンを持って動いている」「私の強みは●●で、チームにこんな形で貢献している」と言い合うことで、相互理解と協力が深まります。

  • エンゲージメントの向上
    ポジティブな言葉をベースにコーチングの対話を重ねると、「この組織で働く意義」や「自分の存在価値」を社員が再認識しやすくなります。Z世代のみならず、すべての世代にとって大きな動機づけになるはずです。

  • 継続的な学習文化の醸成
    コーチングでは、「できなかった点」ではなく、「次どうするか」に焦点を当てます。これにプラスの言葉が加わることで、失敗を恐れず挑戦する風土が育ちやすくなります。

現場での活用例

私が支援したあるIT企業では、組織コーチングを定期的に行い、各チームがプラスのフレーズを共有する時間を設けました。たとえば「私たちはこの新サービスで、ユーザーの課題を確実に解決し、圧倒的な支持を得ている」というイメージを全員で共有。すると、メンバーの行動が自然とその言葉に近づくように変わり、実際に顧客満足度が上昇。結果として売上にも好影響が出ました。

まとめ

コーチングとアファメーションは、相互に支え合う関係にあります。コーチングで生まれる自己理解や目標設定の精度が、プラス言葉によって行動力に変わりやすくなる。一方で、プラス言葉の継続には、コーチングでの定期的な振り返りや指導が欠かせません。Z世代を含む多様な人材が混在する組織では、こうした二重のアプローチが高い効果を発揮するでしょう。

次回は、目標設定との連動についてさらに詳しく解説し、実際の数値目標やKPIとどのように組み合わせるかを考察していきます。

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