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ライブ表現とデザイン表現

映像を作る目的の多くは何かしらの情報やメッセージを伝えることだと思います。一言に映像で伝えると言っても表現方法はたくさんあります。
ドキュメント? ドラマ? イメージ? インタビュー? アニメ?CG? などなど。
どの表現方法でも重要なのはライブ表現デザイン表現をどれくらいのバランスで調整していくかを考えなければなりません。

ライブ表現というのは時間が常に途切れていないように感じさせる表現方法です。
例えばテレビのスタジオ収録みたいにカメラが5、6台あってスイッチングされた映像はカットが変わっても時間が途切れているように感じません。
映画は一般的に1カットずつ撮影していますので撮影時は当然ながら演技を止めているのですが、出来上がった映像は生放送でスイッチングしているかのように時間が途切れていないように感じます。
以下のような映像の流れに違和感を感じさせないテクニックは専門学校や制作会社に入れば徹底的に教えられる基本中の基本です。
・寄りと引きを撮っておく
・ジャンプカットは避ける
・間に差し込めるインサートカットを撮る
・イマジナリーライン(対話軸)を超えて撮影しない

ライブ表現は映画のように疑似体験させるための技術です。流れに違和感や刺激の少ない映像は臨場感を与え、登場人物に感情移入をさせることができます。
デメリットとして表現に時間がかかるため視聴時間に対しての情報密度は高くありません。そして流れに違和感やショックの無い映像はビジュアル的な派手さが地味になりやすいため瞬間的な「感情喚起」が起こりにくいです。

ライブ表現
時間の連続性を感じさせ、違和感の少ない撮影編集手法
ストーリー映像、ライブ配信、インタビュー、記録など
メリット
・自分がその場にいるような臨場感を感じるので疑似体験させやすい
・考えたり想像する間がある
・リアルで嘘っぽさを感じさせない
デメリット
・表現に時間がかかるため、尺に対しての情報密度が低い
・映像が地味になりやすいため興味が無いと退屈しやすい

それに対してデザイン表現を一言で言えば作り込まれた映像表現のことです。
MVのように視覚変化の高い編集、CGやテロップなどの特殊効果を多用した手法をデザイン表現と呼んでいます。
作り込まれた表現は人の感情を分かりやすく揺さぶりますから「情動喚起」を発生させやすいです。そして時間の流れや空間の持続性にとらわれないので時間に対しての情報密度を高くすることができます。
デメリットとして感情移入させにくい、そして作為感を与えてしまう危険性があります。作為感とは「誰かが手を加えた作ったな」と感じる感覚のことです。
制作者は意図を持って伝えたいことを表現するわけですが、視聴者にその意図を気づかせてしまうと嘘っぽいと感じさせてしまいます。嘘っぽいと感じると物語に没入しにくくなります。

つまり視聴者に映像を見ているという認識をさせないことが理想的な映像制作なんです。
「このエフェクトかっこいいな」「この演出見たことあるな」「このカメラマン下手だな」というような制作者の存在を意識させてしまうと、本当に伝えたい内容やストーリーに対しての意識が下がってしまうため伝わりづらくなってしまいます。
映像を見ている感覚を忘れさせて映像世界にどっぷりと没入させることが理想的な映像作品だと思います。

デザイン表現
時間の不連続性と視覚的変化を重視した撮影編集手法
イメージ映像、ダイジェスト映像、、CG表現など
メリット
・作り込まれた装飾性の高い映像は「情動喚起」させやすい
・情報密度を高く出来るため、短い時間で効率よく情報を伝えることが出来る
デメリット
・映像の派手さに目がいってしまうため機微な表現が伝わりにくい
・臨場感が低いので「感情移入」しにくい
・作為的で嘘っぽくなる

映像で何かの情報を伝える場合、いかに短い時間で分かりやすく表現するかが基本的には大切です。映像は時間を奪うという欠点がありますので同じ内容なら2分で伝わるより1分で伝わった方が良いわけです。
そのため一般的に情報伝達重視の映像は削ぎ落とした編集とテロップ、CGを多用するデザイン表現が基本です。
それに対してストーリーやインタビューのようなライブ表現は時間はかかりますが感情移入しやすいので内容の吸収率は高くなります。
YouTubeで上手に短時間でまとめられた動画を見るよりも、実際にセミナーなどに足を運んで体験した方が結果的に理解しやすいのと同じ理屈ですね。
意味の無いダラダラした間や脱線した雑談なども含めて臨場感なわけです。

このライブ表現デザイン表現は1か0の話では無く両方をバランスよく混ぜていくことが重要です。そのためには両方のメリットとデメリットを良く理解し、目的やターゲット視聴環境に合わせて使い分けなければなりません。

表現方法を決める際に「自分はストーリーが好きだから」「CGが得意だから」「イメージ映像の経験が多いから」という理由で本来は決めない方が良いわけです。

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