土が汚染されたらどうしたらいい?
全国各地で実施される土壌汚染調査。実際には、「汚染なし」と判断される場合が多く、そうなれば汚染がない綺麗な土地という認定を獲得することになります。土地の所有者は、ホッと胸をなでおろすでしょう。
しかし、そうでない場合も当然あります。「汚染あり」と判断される場合です。
もちろん調査は万全を期して実施され、指定調査機関と行政の判断により、土地の汚染が認定されることとなります。土地の所有者はそれ以後、その土地をどのように土地扱うかを判断しなければなりません。土地の売却を計画していた場合は、その計画を根本から見直さなくてはならない事態に陥ります。土地価格の大幅な下落は避けられないでしょう。
今回は、それだけ重要な判断を担う土壌汚染調査をさらに詳しく、そして別視点でお話いたします。
調査方法について
以前もお話したことがありましたが、土壌汚染調査の方法に種類があるわけでありません。土壌汚染対策法で規定される土壌汚染調査方法はたった1つであり、土壌汚染調査が実施される土地は全てその方法により実施されます。そのたった1つの方法は以下の3段階から成ります。
フェーズ1 : 地歴調査(登記簿謄本や住宅地図などによる資料調査)
フェーズ2 : 表層土壌汚染調査(2次元的な土壌汚染の範囲を確定する調査
フェーズ3 : 深度調査(鉛直下の汚染の深さを確定する調査)
一部の例外規定を除けば、土壌汚染調査を実施するどんな土地もこの順序で調査が実施されます。
ここから各フェーズについてお話いたします。
フェーズ1 地歴調査
一連の土壌汚染調査の中でも最も基本となる調査であり、調査対象地に係る登記簿謄本や住宅地図、古地図などを収集し土壌汚染に関連する情報を調査する方法です。
調査対象地の土に触れることなく土壌汚染の可能性を判断する調査であり、それだけに化学や工業系の知識、法の知識、何より経験が極めて重要になる難易度の高い調査です。
例えば、ある調査対象地で機械系の工場の履歴が判明、そして元従業員の方へのインタビューでそこで生産されていた製品も判明したとします。もちろん、非常に重要な情報ですが、そこからどういった薬品が使用された可能性があるかということも想定しなくてはなりません。
使用された薬品のリストが残っていればその必要もありませんが、古い工場の場合、資料自体廃棄されてしまっている可能性もあります。いや、資料が残されていることの方が少ないでしょう。
そのため、土壌汚染調査技術管理者の化学や工業系の知識と経験に基づく想定が非常に重要になってくるのです。
フェーズ1で調査対象地の土壌汚染がなしと判断されれば、そこで調査は終了。土壌汚染のないきれいな土地であるとお墨付きをいただくことになります。
しかし、土壌汚染の可能性ありと判断されれば、次のフェーズ2へと調査は進むことになります。
フェーズ2 表層土壌汚染調査
さて、フェーズ1で汚染の可能性ありとされてしまった調査対象地。フェーズ2では実際に、土壌試料を採取することになります。
もちろん、ただやみくもに土壌を採取すれば良いというわけではありません。採取には土壌汚染対策法で規定された厳然たるルールがあり、それに従う必要があります。
どんなルールか。
まずは、調査対象地全体を格子状に分類します。格子のサイズは10m×10mであり、これが土壌汚染調査を実施する上での最小単位となります。この10m×10mのマスを単位区画と言います。
単位区画ごとに深さ50cmまでの土壌試料を採取し、その土壌について汚染の有無を調べます。
つまりフェーズ2調査の目的は、2次元的な土壌汚染の範囲を確定することにあるのです。
ただ、この調査で汚染なしと判断される場合もあり、その場合はそこで調査は終了です。汚染のないきれいな土地であることが認められることになります。
この調査で汚染ありと判断された場合、フェーズ3の調査へと進むことになります。
フェーズ3 深度調査
フェーズ2で汚染ありと判断された場合、汚染が確認された単位区画の鉛直下の汚染深度を調べる調査、フェーズ3を実施することになります。
フェーズ3で実施する調査では、基本的に地表から10m下の土壌試料及び地下水を調査する必要があるため、ボーリング専用の機械を使わなければなりません。
機械で10mまで掘削、1mごとに土壌試料を採取しその土壌試料について汚染の有無を調査します。掘削中に地下水を確認した場合は、地下水についても調査します。
フェーズ3の調査結果により、地中に眠る土壌汚染の立体的な範囲が確定するというわけです。
例外規定について
ただし、一連の調査方法には例外規定があり、必ずこの流れで調査しなくてはならないというわけではありません。
例えば、フェーズ1を実施せずにフェーズ2の調査を実施する場合があります。これは、フェーズ1の調査を実施するまでもなく汚染ありと確定している場合、土壌汚染対策法で規定されている特定有害物質全項目について全単位区画で調査を実施する場合、フェーズ1調査を省略することができます。
フェーズ1調査費用が発生しないメリットがありますが、フェーズ2調査の費用が高額になるため、調査対象地の状況を慎重に見極めるか、行政に相談する必要があるでしょう。
自主調査とそのメリットについて
土壌汚染対策法では、特定有害物質使用特定施設の跡地について土壌汚染調査の義務が発生します。他にも、3,000㎡以上の敷地、そして人への健康被害の可能性がある土地でも同様です。
しかし、それらに該当しない土地であっても、自主的に土壌汚染調査が実施される場合があるのです。それを自主調査と言います。
土地の所有者が土地に土壌汚染がないことを証明し、土地の価値を確保する目的で実施されます。
自主調査は土壌汚染対策法に規定に従って実施されますが、自主的に実施されるものであるため、調査結果を行政に報告する義務はありません。
そのため、仮に自主調査で土壌汚染が確認されたとしても、土地の売買を行なう上で、十分な対策を練って最善策を取ることができます。
また、土壌汚染対策法上の調査義務が発生する土地であったとしても、その土地を手放す前に自主調査を行うことで、土壌汚染調査結果をもとに様々な対策を取ることができます。
これらは非常に大きなメリットと言えるでしょう。
行政への報告義務の必要性
土壌汚染調査結果は行政へ報告しなければならない・・・というよりも、調査結果報告書を行政に提出し、承認をもらうことで報告書が公のものとして認められることになります。
義務という形ではありませんが、報告しておくことをオススメします。報告の際にアドバイスをしてもらえる場合もあります。
仮に自主調査で何らかの汚染が判明した場合は、その後の対策を十分に検討した上で報告書を作成し、行政に提出する方法がとられることがあります。
なお、土壌汚染対策法で調査義務が発生する場合は、報告する義務も発生します。
自主調査の場合の費用は?
以前の記事でもお話したことがありますが、土壌汚染調査の費用は様々な要因により決定するため一概にいうことはできません。それは自主調査でも同様です。
あくまでも参考ですが、以下に土壌汚染調査の費用を記します。
フェーズ1(地歴調査) : 50万円〜100万円
フェーズ2(表層土壌汚染調査) : 200万円〜1000万円(もしくはそれ以上)
フェーズ3(深度調査) : 200万円〜1000万円(もしくはそれ以上)
実際の費用は、調査対象地における様々な要因、そして指定調査機関でも値段設定が異なるので、指定調査機関数社に見積り依頼をする必要があるでしょう。安ければ良いというわけでもありませんが。
まとめ
土地の所有者にとって、土壌汚染調査の結果は死活問題です。
汚染がないと判断されれば、その土地が汚染のないきれいな土地だということを証明することができますが、汚染ありと判断されれば、土地の価値は急激に下落する可能性が非常に高くなります。
土壌汚染は数十年にもわたって地中深くに時限爆弾のように眠り続けるタイプの公害であるため、責任の所在が極めて分かりずらい。
そうなると現所有者がその責任を負うしかなく、それは非常に大きな負担となります。
土壌汚染調査や浄化工事実施のためのある程度の補助金が給付される場合もありますが、土地所有者の負担を全額保証するものではありません。
結果で天国か地獄かの大きな分かれ道となる土壌汚染調査、調査の実施は慎重に、そして信頼の置ける指定調査機関の選択が何より重要となるでしょう。
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