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播但線・加古川線の旅(1)

 6月はじめの休日。今日は兵庫県を南北に走る播但線と加古川線の乗車を目指す。
 まずは新快速電車で湖西線と東海道線を乗り継いで姫路まで。神戸以西に行くのは久しぶりである。
 須磨辺りで車窓に瀬戸内海が迫る。天気は良く、真っ青な海に釣り人の姿が見えたりする。明石海峡大橋の下をくぐるとすぐ「日本標準子午線」のマークなども見えるが、新快速電車はぶっ飛ばしていく。西明石を出た頃から田んぼや畑の姿が見え出し、しばらくして加古川着。車窓からビルや商業施設が建ち並ぶのが見える。都会である。帰路はここへ戻ってくる予定である。
 そうこうしているうちに、9:18電車は終点・姫路に到着した。


姫路から福崎へ

    姫路駅では素早くトイレを済ませ、1番線の播但線乗り場に向かう。ホームにはすでに赤いボディの2両編成、福崎行きワンマンカーが待っている。休日の午前、向かいのホームには神戸方面に向かう電車を待つ大勢の人が見えるが、こちらのホームは人影もまばらである。さっそく乗車。座席は全てロングシートで、2両編成の各車に30名程度の乗客といったところである。ほとんどが地元の人といったところか。
 9:33定刻に電車は出発。ぐらぐらと揺れながら、姫路の市街地をゆっくりと抜けていく。兵庫県西部の姫路・和田山間を南北に貫く播但線は、ネット情報によると、1995年の阪神淡路大震災の際は、不通となった東海道線の迂回路として重要な役割を果たしたとのこと。ただし銀山で有名な生野トンネルをはじめ、明治時代に作られた開口部の小さなトンネルがあることから寺前以北は電化ができず、ディーゼル車での牽引を要するなど苦労もあったようである。
 2駅目の野里でそこそこの人数が下車。ここで対向列車とのすれ違い待ちを行う。すぐに隣のホームに上り電車が到着。こちらも深い赤色ボディの2両編成である。どうやらこれが播但線カラーらしい。ちらりと車内をのぞくと、休日に街へ向かう多くの乗客で満員である。立っている人も多い。対するこちらの下り電車は、ガラガラで静かである。 
 3駅目の砥堀(とぼり)を過ぎた頃から車窓には田畑が見え始める。仁豊野(にぶの)で乗客がさらに下車して、車内は17~8名となる。
それにしてもこの電車は、よく揺れる。乗り心地はあまりよろしくない。旅の記録を記すために鉛筆とメモ帳を持っているのだが、揺れてうまく字が書けない。
 9:51香呂(こうろ)着。何人かが下車し車内は10名程度となる。乗客の数は順調に減っていく。ここでまた対向列車の待ち合わせ。結構ひんぱんに来る。すぐに到着したのはやはり赤いボディの2両編成で、車内は先ほどと同じように満員である。阪神の野球帽をかぶった少年の姿なども見え  
る。
 溝口を出た辺りで車窓は山野から田畑の広がる農村風景となる。そして10:02、電車は定刻に終点福崎に到着した。


寺前そして和田山へ

 福崎駅ではホームでしばし時間をつぶした後、「10:23発寺前行きの普通電車は、ただいま一駅前の溝口を出発しました」との駅員さんのアナウンスが響いてまもなく、2両編成の赤色の電車が到着。先ほどと同じタイプである。
 素早く乗り込み、ロングシートの一角に腰を下ろす。車内は空いている。
 定刻10:23福崎発。車窓は田畑の間に住宅が広がりつつも、だんだんと山間に分け入っていく感じである。
 道を行く車は皆「姫路」ナンバーである。“姫路文化圏”の真ん中を電車は走り抜けていく。ただし相変わらずよく揺れる。
 そして新野(にいの)で車内が10名ほどになったところで、定刻10:39、終点の寺前に到着した。
 寺前駅は一層寂しさの募る山間の駅という感じで、ここから先は非電化区間となる。下車したホームのすぐ前に、和田山行き普通列車のディーゼルカーがエンジンを暖めながら待っている。乗り換え時間は2分しかないが、余裕で乗車。福崎駅の駅員さんが言っていたとおりである。
 列車は1両編成のワンマンカーで、4人掛けボックス席がずらりと並ぶスタイルである。そのうちの一つの窓側に腰を下ろす。横にはリュックを持った年配の御夫婦が着席する。車内は半分以上の席が埋まっているといった感じで、ざっと見たところ乗客は24~5名。先ほどまでとは異なり、旅行客が多そうである。
 10:41、定刻に寺前発。1両編成のディーゼルカーはゆっくりと山道を登っていく。駅間は長く、住宅も少ない。左右に蛇行しながら流れる渓谷が併走する。スマホの地図で確かめると市川とある。
 いくつか峠を越えて、11:02生野着。銀山で知られる場所であるが、今は寂しい。その後も、「峠を越えて小さな集落」のパターンをくり返しながら列車は進む。小さな学校が見えたりもする。駅間はとても長い。11:12に新井(にい)着。ここまでの駅間は約10分。
 すぐにまた学校が見える。朝来市立中川小学校とある。すでに朝来市に入っているようである。終点の和田山駅周辺が朝来市の中心であるが、これまであまり馴染みがなくイメージがわきにくい。線路沿いには至近距離に民家が建っていて、ゆっくり進む列車から洗濯物や室内がよく見えたりする。
 11:22竹田着。駅前(裏?)に立派な寺院とその横に「竹田城跡登山口」との石碑が建っている。朝来市に馴染みがないと書いたが、「天空の城・竹田城跡」は知っている。いつか機会があれば訪れたいとかねてより思っていたが、朝来市だったとは…。敬意を表しつつも、今日はもちろん行くことはできない。車でないと無理なのではないか…。
 何名かの乗客が入れ替わる。ここまで線路の遙か上空に高速道路が走るのを何度か見てきた。現在は間違いなく鉄道より車中心の社会である。天空から1両編成のディーゼルカーを見下ろされているような気分である。
 そして11:28、定刻に終点和田山に到着。姫路を出てから約2時間の播但線の旅であった。多くの見所があったようななかったような…。しかし、あっという間の充実した時間であった。

山陰線の女性運転士

 和田山駅ではイコカをタッチしていったん改札の外に出る。何か昼食をとれそうなところはないかと駅周辺を探すが、それといった場所は見つからずすぐに駅に戻る。
 和田山出発予定は12:37。頃合いを見て再びイコカをタッチして改札を通過し、山陰線乗り場の4番線に向かう。この後は山陰線を通って福知山まで行き、福知山からは福知山線で加古川線の分岐する谷川まで向かう予定である。旅の中盤である。
 定刻より少し遅れて12:40頃、福知山行きの2両編成の電車が和田山に到着。かつて湖西線を走っていたタイプで、オレンジと深緑の車体が懐かしい。素早く乗車し着席。車内は空いている。
 この電車、車両自体は古いものだと思うのだが、ぐいぐいと加速していくのが分かる。そして何より午前中の電車と比べて圧倒的に揺れが少ない。運転席に目をやると、若い女性の運転士さんである。電車はワンマンカーであるので、運転はもちろん、ドアの操作やアナウンス、降車する乗客の確認などを一人できびきびとこなしている。
 降車する際は駅によっては一番前の扉からのみとなるのだが、ある駅で高校生が降車しそびれて走って後ろの車両から駆けつけてきた。電車はすでに発進しかけていたのだが、この運転士さん、落ち着いて「急停止失礼します」とアナウンスすると同時に電車を停めると、にこっと振り返って高校生を手招きする。高校生がぺこぺことお礼をして降車していくと、その後何事もなかったかのように、またぐいぐいと電車を加速させていく。なかなか頼もしい運転士さんである。
 車内の乗客はぱらぱらといったところで、部活帰りの高校生が少しずつ下りていき、やがて7~8名となる。車窓は山間の谷に民家が点在といった感じである。駅間は長い。いつの間にか京都府に入っているものと思われるが、午前中からの風景とさほど変わらない。
 12:59、下夜久野で対向列車待ち合わせ。しばらくすると「サンガ」と派手にペイントされた特急電車がすれ違っていく。
 13:11上川口着。駅前には「森の京都蒸留所」と書かれたおしゃれな建物が見える。ここでも対向列車の待ち合わせ。
 出発後、しばらく山間を進み、やがて突然車窓が開ける。福知山盆地に入ったようである。一気に町並みが広がり、ビルや建物が建ち並ぶ都会の風景となる。
 そして13:19、終点の福知山に到着。和田山出発時は3分ほど遅れていたが、運転士さんのテクニックなのか、到着は時刻表どおりであった。

播但線・加古川線の旅(2)に続く

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