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桜井線(万葉まほろば線)・奈良線の旅

おおさか東線・片町線(学研都市線)の旅から続く


奈良へ

 木津駅では7両編成の電車から多くの乗客が下車。当方の乗っていた車両はガラガラだったのだが、意外に多くの人が乗っていたことを知る。駅前(裏)にある大自転車置き場を横目で見ながら、すぐに3番線に移動して奈良行き電車を待つ。
 12:32、4両編成の電車が到着。素早く乗車。ロングシート仕様の車内は空いている。外国人グループの姿が目立つ。
 12:40奈良着。奈良駅では少し時間があるので改札の外に出ることにする。改札を出るのは本日2回目。「青春18きっぷ」を駅員に見せると、ちらっと見ただけでノータイムで金属製の扉を開けてくれる。その動作は極めて自然。さすが観光客でいっぱいの奈良駅では、この切符の利用者も少なからずあるのだろうと想像する。
 奈良駅に降り立つのは何年ぶりかである。改めて見ても立派な駅である。奈良観光の中心へは近鉄奈良駅が近いのだが、こちらのJR駅も堂々たる雰囲気である。そして外国人グループの数がとても多い。ざっと見渡したところ、日本人よりも多いのではないかとも思える。
 ただしよく見ると、大きな荷物を持っている人はほとんどなく、みなさん身軽ないでたちである。何かのニュースで見た記憶があるが、奈良は多くの外国人観光客を集める一大観光地でありながら、宿泊施設が少なく、観光客の多くは京都で宿泊し奈良へは日帰り旅行がほとんどとのこと。まさにその実態を見た思いである。

難読地名が続く桜井線

 することもないのでホームに上がって電車を待つことにする。改札で再び「青春18」を見せて素早く通過。次に乗車する桜井線(万葉まほろば線)が発着する1番乗り場に向かう。すると、ありがたいことにすでに電車がホームに待機している。2両編成のロングシート仕様の電車である。出発までまだ20分以上あるのだが、ありがたく冷房の効いた車内に入らせていただく。
 座席の端に腰を下ろすが、今回も前も後ろも日よけシェードが下りている。人がほとんどいないので、さっと立ち上がって向かい側のシェードを上げる。これで視界良好。途中で誰かが下ろさないことを祈る。
 待つうちに乗客が少しずつ増えだし、車内の座席がほぼ埋まってくる。若者の姿も多い。そして定刻13:24、桜井線(万葉まほろば線)普通電車高田行きが出発した。

 桜井線は奈良駅からまっすぐに南下し、天理を経て桜井へ向かい、桜井で右(西)に直角に折れて大和高田市の髙田駅に至る路線である。髙田からは南から来た和歌山線に合流し、王寺に至る。本日後半の乗車計画は、このルートで王寺から奈良へ戻るまで、万葉の香り高い地域をぐるっと1周した後、奈良線で京都に戻る予定である。
 出発してすぐ13:27、京終(きょうばて)着。ずいぶん以前に読み方が分からず(普通は読めないと思う)調べた記憶がある。深い意味のありげな名前であるが、そこまでは調べていない。駅の待合スペースにピアノが置いてあるのが見える。
 13:31帯解(おびとけ)着。難読地名が続く。車窓は住宅地を抜け、田畑が混在する景色となっている。遠くには大和盆地を取り囲む山々が見える。“大和路”の風情が徐々に色濃くなっていく。
 13:35櫟本(いちのもと)着。ますます難読地名が続く。車内アナウンスは、日本語の後に英語、中国語、韓国語と計4カ国語である。単線ののどかな路線であるが、シルクロードの終着駅と言われた大和地域の国際性を感じる…、と言うのはちょっと大げさか。
 13:37天理着。ようやくわかりやすい地名。何名かが下車していく。
 13:41長柄着。部活帰りの中学生らしい女子3人が乗り込んでくる。そういえば今日から夏休みである。

高まる“大和路”感

 13:44柳本着。対向列車の待ち合わせ。改札の上の看板には「ロマンの里 黒塚古墳」の文字が見える。
 13:49巻向(まきむく)着。天理を出てから、車窓の風景はますます“大和路”感が高まっている。ふと“山辺の道”を思い出す。天理から桜井に至るこの辺りにその道が通っているはずである。いつかたどってみたいと思う。
 13:51三輪着。何名かが乗り降りする。車内の座席は9割方埋まっている。駅前には由緒ありげな神社の幟が立っている。
 13:55桜井着。この路線の線名でもある中心駅らしい立派なたたずまいである。右隣には近鉄の高架駅と線路が見える。車内が少し空いて、座席は5割くらいとなる。
 奈良を出てここまで30分、まさに万葉ロマンをかき立てる風景の中を走ってきた。一つ一つの駅ごとにも語り尽くせないほどの歴史や由緒があるのだろうが、残念ながら当方には語る力はない。
 桜井を出て、次は13:58香久山着。その後14:01畝傍着。
 まだまだ万葉集に出てきそうな地名は続く。乗客は少しずつ減って車内はだいぶ空いてきた。
 14:05金橋着。この辺りでようやくというか、車窓の風景が普通の住宅地となっている。大和路感は減少。
 そして、定刻14:08、終点髙田着。“万葉まほろば線”の別名通り、ロマンをかき立てられる桜井線の旅であった。

髙田から王寺、そして奈良へ戻る

 髙田駅では、下りたホームのすぐ向かい側に王寺行き2両編成の普通電車が待っている。乗り換え時間は2分。素早く乗り込むが、ロングシートはあいにく満席。ドア付近で立っていくことにする。王寺までは15分ほどで、たかが知れている。
 14:10髙田発。ここからは和歌山線となる。市街地の中を電車は進んでいく。
 14:15五位堂着。車内には立っている人も多い。
 14:18香芝着。赤いそろいのTシャツを着た女子中学生の一団が下車していく。背中には“KASHIBA 排球部”とプリントされている。暑い中ごくろうさま。ここで車内は少し空いて、座れる席もありそうなのだが、もう立ったまま行くことにする。
 14:20志都美、14:23畠田と停まって、14:26終点・王寺に到着した。
 王寺は、以前関西本線の旅で通過した際は車窓から駅の北側を見ていて気づかなかったのだが、今回、南からやってきて駅の南側の景色を見た。大きな建物や量販店が建ち並ぶ都会の風景で少し印象が変わる。
 列車に乗って旅をしている都合上、窓から見えるのは座っている側の景色に偏りがちになってしまう。物事の半分を見ただけで全部を見た気になってはいけない(何か諺にありそう?)ことを痛感し、反省。
 王寺で下車した乗客の多くは、大阪方面への電車に乗り換えていく様子である。当方は関西本線(大和路線)奈良行きの電車が来る1番乗り場へ移動。すぐに来た大和路快速奈良行きに乗車する。
 14:33王寺発。乗り慣れた久しぶりの2列シートに腰を落ち着ける。
そして、14:48奈良に到着。奈良の南を1時間20分あまり、ぐるっと回ってまた戻ってきた。

奈良線各駅停車で京都へ

 奈良駅では一周回ってきた余韻に浸る間もまなく、すぐ向かいのホームで待っている奈良線の電車に乗り込む。14:50発の普通電車京都行きである。15:07奈良発の快速電車(みやこ路快速)に乗った方が京都には早く着くのだが、ここはあえて各駅停車を しながら帰路につくこととする。列車は4両編成で、2列シートの乗り慣れた電車である。
 14:50、定刻に奈良発。車内は空いている
 14:55平城山に続いて、14:58木津着。数時間前に通ってきた場所なのだが、ずいぶんと過去のことのような気もしてしまう。向かいのホームから「尼崎・塚口行き」と表示された片町線(学研都市線)の電車が出発していく。当方の電車はここで少し時間調整。
 15:02木津発。すぐに左手に片町線、右手に関西本線の線路が分かれていくのが見える。そして木津川を渡って、15:05上狛(かみこま)着。午前に通過したのは片町線の下狛(しもこま)で、兄弟駅(?)が違う路線にあるのがおもしろい。
 外がだいぶ曇ってきている。先ほどから、琵琶湖周辺に強い雨雲が接近していることをしきりにスマホが告げている。
 15:09棚倉着。対向列車の待ち合わせを行う。奈良線が単線であったことを思い出す。
 15:15玉水、15:17山城多賀、15:20山城青谷と、電車はこまめに停車していく。快速電車なら速度を落とさずぶっ飛ばしていく駅か…。乗り降りは少しずつで、車内は出発以来ガラガラである。
 15:22長池着。ここでまた左手に突然「ALPLAZA」の大きな建物を見る。他府県を旅して本日3回目。滋賀が誇る「平和堂」の実力を見た思いである。
 15:25城陽着。すぐ左手に学校がある。駅の敷地と学校の敷地が接触しているといった感じで、まさに目の前が学校である。駅のホームから金網を隔てて体育館などに手が届きそう…。“駅前”とか“駅近”などとよく言うけれど、ここまで近いのは初めてである。素早くスマホの地図を開いて、城陽市立寺田小学校であることを知る。
15:28新田、15:31JR小倉と、電車は進んでいく。車窓にはずっと市街地が続いている。

多くの外国人旅行客

 15:33宇治着。多くの乗客が乗り込んできて、車内が一気に賑やかになる。家族連れや外国人旅行者も多そうである。座席がほぼ埋まる。
 ここでわが電車はしばし停止し、後ろから来る快速を待つ。やがて15:07に奈良を出発してきた快速電車(みやこ路快速)が到着、そして出発していく。多くの外国人が快速電車ではなくこちらの普通電車に乗ってきた理由は、後ほど判明する。
 15:37宇治発。宇治駅で待機中に開いたドアから冷気が出ていき、車内が少し暑い。すぐに宇治川を渡り、ほどなくして京阪線の線路が左側を併走する。
 15:40黄檗、15:43木幡、15:45六地蔵と、聞き覚えのある駅名(地名)が続く。車窓からは市街地の合間に茶畑なども見える。
 15:48桃山着。高層マンションなどが見える。いつの間にか京都市内に入っている。
 15:50JR藤森着。市街地の中を名神高速が横切っていく。終着京都はもうすぐである。
 15:54稲荷着。ここで多くの外国人がどどどっと下りて、それ以上に多くの外国人がどどどっと乗ってくる。車内が一気に賑やかになり席にあふれた人がたくさん立っている。予測していなかったというか突然のことだったので何事かと少し驚いたのだが、すぐに伏見稲荷大社への参詣客であることに思いが至る。当神社の赤い鳥居が外国人旅行客にすこぶる人気があることは知っていたのだが、その実態を見たのは初めてであった。当稲荷駅には快速電車は停まらないので、彼らがあえて普通電車に乗っていた理由がここで判明。
 15:56東福寺着。ここでも多くの乗客が乗り降りする。こちらは京阪線との乗り継ぎである。
 そうして電車はいっぱいの乗客を乗せ、定刻15:59、終点京都に到着。湖西線に乗り換えて帰途についた。

日本の鉄道の実力を感じる

 こうして「青春18きっぷ」使用開始初日の旅が終了した。湖西線50周年記念のイベントには接することができなかったが、滋賀、京都、大阪、奈良のたくさんの電車に乗って十分に元は取った。
 それにしても日本の鉄道が、分刻み(秒刻み?)のダイヤで正確に列車を運行させる実力を改めて実感した。事故や災害等でダイヤが大幅に乱れることはもちろんあるにせよ、日頃は決められた時刻通りに確実に電車が動いている。その当たり前のすごさを感じる一日だった。今日一日の鉄道旅で停まった駅の名は全て書いたつもりであるが、そこに記した時刻はわが手元の腕時計を見てメモしたものである。たぶん時刻表に書かれているものとほとんど差はないはずである。


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