
東京メトロと都営地下鉄の連絡特殊割引運賃について
東京都心部の地下鉄は、東京メトロ(東京地下鉄)と都営地下鉄(東京都交通局)の2社局により運行されている。運賃はそれぞれの事業者ごとに別建てとなっているが、利用者の利便性向上のため、昭和36年6月より両者にまたがる場合に運賃の割引(大人片道10円引)が開始された。割引額は運賃の値上げと共に段階的に引上げられ、現在は大人片道70円引となっている。
今回はこの割引制度、すなわち東京メトロ線と都営地下鉄線を乗継ぐ場合の連絡特殊割引運賃についてまとめてみた。
なお、東京メトロ線と都営地下鉄線を乗継ぐ場合は「最も安い経路の運賃」を適用すると説明されることがあるが、必ずしもそうではないことについても触れる。
10円単位の連絡普通運賃(きっぷ運賃)
大人運賃
主に券売機で連絡きっぷを購入して乗車する場合に適用される10円単位の大人片道連絡普通運賃(東京メトロ線の鉄道駅バリアフリー料金を含む)は、原則として乗車経路に関わらず最も安い経路で運賃を算出する。両社局の10円単位の大人片道普通運賃を併算した上で、70円の割引を適用し、東京メトロ線の鉄道駅バリアフリー料金を加算する。
厳密には、鉄道駅バリアフリー料金を含まない運賃が最も安くなる経路を求め、求まった経路の運賃に乗継割引を適用し、東京メトロ線の鉄道駅バリアフリー料金を加算する。
都営地下鉄側の東京都地下高速電車連絡運輸規程では、第4条第2項で東京メトロ線との連絡割引運賃を次のように定めている。
(旅客運賃)
第四条 旅客運賃は、地下高速電車で定める旅客運賃と当該連絡運輸機関で定める旅客運賃との合算額とする。
2 東京メトロ線との連絡運輸の旅客運賃は、前項の規定にかかわらず、次のとおりとする。
一 片道普通旅客運賃
イ 大人
それぞれの大人片道普通旅客運賃を合算した額から七十円を差し引いた額。この場合、発着駅間の経路が二以上あるときは、旅客運賃が最も低額となる経路を乗車するものとみなして計算する。
例えば、東京メトロ半蔵門線渋谷駅から九段下駅乗継ぎで都営新宿線瑞江駅までの連絡運賃の場合、運賃計算経路は住吉駅で乗換する経路となって次の金額になる。

乗換駅までの運賃が連絡割引運賃よりも高額となる場合
連絡駅等での乗換がラッチ外乗継ぎ(一旦改札を出て乗換)となる場合は乗換駅までの運賃が必要になる。
例えば、都営大江戸線落合南長崎駅から月島駅乗継ぎで東京メトロ有楽町線新富町駅まで乗車する場合、両駅間の連絡運賃は320円(中野坂上乗継ぎ扱い)であるが、ラッチ外乗換となる月島駅までの都営線運賃はそれより高い330円である。そのため、月島駅出場時に差額の10円を精算する必要がある。

東京メトロ線連絡320円区間の乗車券を原券とした、東京メトロ線連絡320円区間の連絡区変券(領収額10円)。自動精算機は対応しておらず、有人窓口での対応。 pic.twitter.com/vGkWVkkmml
— てつろう(sokutou-metsu) (@tetsurou624) February 13, 2025
小児運賃
小児の片道連絡普通運賃は、大人の連絡普通運賃(東京メトロ線の鉄道駅バリアフリー料金を含む)を半額にして、端数を10円単位に切り上げた金額となる。

障がい者割引運賃
障がい者とその介護者がきっぷを購入して乗車する場合の連絡運賃は、普通運賃と同様に実際に乗車する経路ではなく大人運賃が最安となる経路で運賃を算出する。ただし、乗継割引(70円引)は適用されず、代わりに障がい者割引(5割引)が適用される。
そのため、障がい者割引運賃は大人運賃の半額にならず、障がい者本人とその介護者の運賃を合わせると大人1人分の運賃より高い金額となる。

東京メトロ線は旅客営業規程第50条で、都営地下鉄線は地下高速電車旅客営業規程第14条の7で、それぞれ割引を重複して適用しないことを定めている。
(旅客運賃割引の重複適用の禁止)
第50条 旅客は、旅客運賃について2以上の割引条件に該当する場合があっても、同一の乗車券について、重複して旅客運賃の割引を請求することができない。
1円単位の連絡普通運賃(IC運賃)
大人運賃
Suica・PASMO等のICSF乗車券やモバイルICSF乗車券で乗車する場合に適用される1円単位の大人片道連絡普通運賃についても、原則として乗車経路に関わらず最も安い経路で運賃を算出する。両社局の10円単位の大人片道普通運賃(東京メトロ線については鉄道駅バリアフリー料金を含む)を併算した上で、70円の割引が適用される。
厳密には、次の手順により求まった運賃が適用される。
「税抜運賃」が最も安くなる乗継ぎ経路を求める
1.で同額の経路が複数ある場合は、営業キロが最も短い経路を求める
2.で求まった経路で、両社局の1円単位の大人片道普通運賃を併算する
乗継割引70円を適用する
東京メトロ線の鉄道駅バリアフリー料金10円を加算する

税抜運賃
ここで出てきた「税抜運賃」は、普通運賃を算出するにあたって基準となる金額のことで、一般には公開されていない。東京メトロ線と都営地下鉄線の税抜運賃は次の通りである。

基本的には、2014年3月31日時点の大人片道普通運賃(10円単位)から当時の消費税相当額(消費税率5%)を控除して端数処理をした金額で、国土交通省への上限変更認可申請書に「税抜運賃(基準額)」として記載されている金額と同額である。

この「税抜運賃」は地下鉄2社局以外の鉄道事業者に乗継ぐ場合の運賃計算にも用いられ、運賃計算の仕様は関東ICカード相互利用協議会により取り決められているが、詳細は非公表とされている。
乗換駅までの運賃が連絡割引運賃よりも高額となる場合
きっぷで乗車する場合と同様に、連絡駅での乗換がラッチ外となる場合は乗換駅までの運賃が必要になる。
運賃計算経路が最安とならない場合
連絡駅での乗換がノーラッチの場合や、他の鉄道事業者へ連続して乗継ぐ場合は、実際の乗車経路と異なる経路の運賃がSF残高より収受されるケースがある。
また、運賃計算経路が「税抜運賃」を元に決まるため、区間によっては最も安い運賃ではない経路が運賃計算経路となる場合がある。
例えば、都営地下鉄線汐留駅から東京メトロ線西船橋駅までをICカードで乗車する場合、1円単位の大人片道普通運賃は最も安い経路の運賃(401円)にはならず、402円となる。

小児運賃
小児の片道連絡普通運賃は、1円単位の大人連絡運賃(東京メトロ線の鉄道駅バリアフリー料金を含む)を半額にして端数を1円単位に切捨てした金額となる。

障がい者割引運賃
きっぷを購入して乗車する場合と異なり、障がい者とその介護者が障がい者用PASMOを利用して乗車する場合の1人あたりの連絡運賃は、1円単位の大人連絡普通運賃(東京メトロ線の鉄道駅バリアフリー料金を含む)から5割引した金額となる。
そのため、障がい者割引運賃は小児運賃と同じ金額になる。

東京メトロ線はICカード乗車券取扱規則第16条第2項第2号但し書きで、都営地下鉄は東京都地下高速電車ICカード乗車券取扱規程第16条第3項第2号但し書きで、それぞれ連絡割引との重複適用を認めている。
連絡定期運賃
大人運賃
普通運賃と異なり、連絡定期運賃(通勤・通学)は実際に乗車する経路に基づいて運賃を算出する。各社局ごとに割引運賃(東京メトロ線の通勤定期については鉄道駅バリアフリー料金を含む)を適用し、それらを併算した金額が発売額となる。
割引運賃の算出方法は次の通り。
各社局ごとの1ヶ月の定期運賃をそれぞれ15%割引して端数を10円単位へ切上げた金額を割引の1ヶ月連絡定期運賃とする
割引の1ヶ月連絡定期運賃を3倍した金額から5%割引して、端数を10円単位へ切上げた金額を3ヶ月連絡定期運賃とする
割引の1ヶ月連絡定期運賃を6倍した金額から10%割引して、端数を10円単位へ切上げた金額を6ヶ月連絡定期運賃とする

定期運賃と普通運賃とで運賃表のキロ地帯の刻み方が異なるため、普通運賃が同額の駅同士でも定期運賃は異なる金額となる場合が多い。
小児運賃
小児の連絡定期運賃(通勤・通学)は、大人の連絡特殊割引定期運賃を半額にして端数を10円単位へ切上げた金額となる。小児3ヶ月定期運賃は大人3ヶ月の連絡特殊割引定期運賃を、小児6ヶ月定期運賃は大人6ヶ月の連絡特殊割引定期運賃を、それぞれ折半して端数処理した金額となる。

そのため、東京メトロが案内する連絡特殊割引運賃表には大人の欄のみで小児の欄は存在しない。

障がい者割引運賃
障がい者とその介護者が連絡定期券を購入して乗車する場合の運賃は、連絡特殊割引運賃を適用せず、障がい者割引運賃のみを適用する。

通過連絡となる場合
一部の区間・経路においては、東京メトロ線〜都営地下鉄線〜東京メトロ線または都営地下鉄線〜東京メトロ線〜都営地下鉄線となる連絡定期券を購入することができる。通過連絡となる場合、同じ社局のキロ程を通算して運賃を計算する。
例えば、東京メトロ半蔵門線押上駅から住吉駅で都営地下鉄大江戸線に乗換、さらに月島駅で東京メトロ有楽町線へ乗換して豊洲駅までの経路を1枚の定期券として購入することができる。この経路の大人通勤定期運賃は次のように算出できる。

参考資料
東京メトロ線
東京メトロお客様センターへの問い合わせ
都営地下鉄線
都営交通お客様センターへの問い合わせ