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京成電鉄の運賃制度 2024年3月版
前回の記事で京成電鉄は「大手民鉄の中で運賃制度が1番複雑な事業者と言っても過言ではない」と書いた。
そんな京成電鉄の運賃について、2024年3月16日時点の制度をまとめてみる。なお、他の鉄道会社線との連絡運賃については本稿では扱わない。また、「成田空港線」(一般には「成田スカイアクセス線」と案内)の駅には京成高砂〜印旛日本医大間で北総線列車しか停車しない駅(新柴又駅など)を含まない。
4つの運賃表
普通運賃(10円単位・1円単位)は対キロ区間制、定期券運賃は表定制となっており、いずれも乗車する距離に応じて運賃が定まる。ただし、適用する運賃表には次の4つがあり、乗車する区間によって適用される運賃が変わる。
京成本線・東成田線・押上線・金町線・千葉線の運賃表(以下「本線系の運賃表」と言う)
千原線の運賃表
成田空港線の運賃表
成田空港線のうち京成高砂〜印旛日本医大間のみを利用する場合の運賃表
4つ目の「成田空港線のうち京成高砂〜印旛日本医大間のみを利用する場合の運賃表」については、同区間で線路を共用する北総鉄道にあわせた運賃となっている。また、この区間のみを利用する場合は北総鉄道が発売する乗車券を購入することになるため、京成高砂接続で同区間内の成田空港線各駅までは、京成電鉄の列車のみを利用する場合でも北総鉄道との連絡乗車券を購入する形になる。
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鉄道駅バリアフリー料金
本線系の運賃表と千原線の運賃表には、通常の運賃とは別に鉄道駅バリアフリー料金(普通運賃の場合は10円)が加算される。
加算方法の詳細は前回の記事に記した通りで、普通乗車券(またはICカード乗車券のSF利用)の場合は1乗車10円、通勤定期乗車券の場合はそれぞれの運賃表ごとに1か月600円が運賃に上乗せされる。
営業キロ
運賃は乗車する区間の営業キロに基づき算出する。ただし、異なる運賃表にまたがる場合はその境界で営業キロを打ち切り、通算はしない。
成田空港附近については下図の通り「駒井野分岐点(こまいのぶんきてん)」および「接続点(せつぞくてん)」に営業キロが設定されており、実際の乗車区間よりも短い営業キロで運賃を算出する場合がある。
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空港第2ビル駅と東成田駅との間の営業キロは、空港第2ビル〜駒井野分岐点間1.1キロと駒井野分岐点〜東成田間1.1キロをあわせた計2.2キロ
京成成田駅と成田湯川駅との間の営業キロは、京成成田〜接続点間6.6キロと接続点〜成田湯川間9.2キロをあわせた15.8キロ
加算運賃
成田空港乗入れに伴う設備投資額等の回収に充てるため、次の区間に対して加算運賃が設定されている。ただし、いずれの場合も接続点経由で成田空港線へまたがって乗車する場合(空港第2ビル〜成田湯川間を乗車する場合)は加算しない。
東成田線
東成田駅を発着する場合、次の金額が運賃に加算される。
普通運賃の場合、70円
通勤定期運賃の場合、1か月3,240円
通学定期運賃の場合、1か月1,160円
京成本線のうち京成成田駅〜成田空港駅間
空港第2ビル・成田空港の両駅を発着する場合、次の金額が運賃に加算される。
普通運賃の場合、140円
通勤定期運賃の場合、1か月6,280円
通学定期運賃の場合、1か月2,550円
ただし、東成田駅〜空港第2ビル駅・成田空港駅間を利用する場合は東成田線の加算運賃を適用し、京成成田駅〜空港第2ビル駅〜成田空港駅間のみを利用する場合には加算しない。
特定運賃
一部の駅間については、営業キロによらない特定運賃が設定されている。
八広駅関連
押上線荒川橋梁の架替工事に付帯する両岸の高架化に伴い、八広駅(旧荒川駅)が100メートル移転となり営業キロが変更された。変更により運賃が変わらないようにするため、改キロ前の運賃と同じになるように一部区間で特定運賃を設定している。
京成幕張本郷駅関連
当駅と京成千葉駅・千葉中央駅との間に特定運賃が設定されている。
成田空港関連
先述の加算運賃の関係で、京成成田駅〜空港第2ビル駅〜成田空港駅間のみを利用する場合に特定運賃が設定されている。
なお、空港第2ビル駅〜成田空港駅間の特定運賃は、本線系の運賃表が適用される場合は150円、成田空港線の運賃表が適用される場合は160円と、それぞれで金額が異なっている。これは鉄道駅バリアフリー料金加算後の金額が両者で一致するようにするためである。
複数の運賃表にまたがる場合
先述の通り、異なる運賃表にまたがる場合はその境界で営業キロを打ち切り通算はしない。しかしながら、それぞれで算出した運賃の併算方法は2パターンあり、接続駅によってどちらの方法を適用するかが異なる。
先に併算する場合
次の場合の小児普通運賃等の割引運賃や3・6か月定期運賃は、併算後の大人普通運賃や1か月定期運賃の金額を元にして算出する。
千葉中央駅において本線系の運賃表と千原線の運賃表を併算する場合
京成高砂駅において本線系の運賃表と成田空港線の運賃表を併算する場合で、成田湯川駅〜成田空港駅間の各駅発着となる場合
空港第2ビル駅(接続点)において本線系の運賃表と成田空港線の運賃表を併算する場合
日暮里駅から京成高砂駅接続で成田空港線成田湯川駅までの通勤定期券運賃は、それぞれの区間の1か月定期券運賃を併算して合計の1か月定期券運賃49,670円を求め、それを元に合計の3か月定期券運賃139,850円(1か月定期券運賃の3倍から5分引して端数処理)と6か月定期券運賃264,980円(1か月定期券運賃の6倍から1割引して端数処理)を求める。求まった運賃に鉄道駅バリアフリー料金を加算して、1か月49,670円、3か月141,560円、6か月268,220円が発売額となる。
この区間のように、3か月定期券運賃と6か月定期券運賃は、端数処理のためそれぞれの区間ごとの発売額を併算した額と一致しない場合がある。
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後で併算する場合
次の場合の小児普通運賃等の割引運賃や3・6か月定期運賃は、それぞれの運賃表ごとに算出した金額を併算する。
京成高砂駅において本線系の運賃表と成田空港線の運賃表を併算する場合で、東松戸駅〜印旛日本医大駅間の各駅発着となる場合
日暮里駅から京成高砂駅接続で成田空港線千葉ニュータウン中央駅までの通勤定期券運賃は、それぞれの区間ごとに1か月定期券運賃から3ヶ月と6か月の定期券運賃を求め、その後で1か月・3か月・6か月ごとにそれぞれの区間の定期券運賃を併算する。求まった運賃に鉄道駅バリアフリー料金を加算して、1か月41,270円、3か月117,630円、6か月222,870円が発売額となる。
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なお成田空港線のうち京成高砂駅〜印旛日本医大駅間の各駅相互発着となる場合は北総鉄道が発売する乗車券を購入するきまりのため、京成高砂接続で同区間内の成田空港線各駅までは、北総鉄道との連絡定期券を購入することになる。
乗継運賃
異なる運賃表を併算する場合に、乗継運賃が適用される場合がある(冒頭に記載した通り北総線・都営線・新京成線など他社局と連絡する場合に適用される乗継運賃については本稿では扱わず、京成電鉄のみを利用する場合に適用されるもののみを記す)。
千葉中央接続
千原線の各駅と、京成千葉線の各駅および京成本線の谷津駅との相互間については、下記の通り40円〜70円の割引が適用される。
谷津駅・京成津田沼駅〜新千葉駅間各駅と、千原線の各駅とを利用する場合、大人普通運賃を併算した金額から40円引とする。
京成千葉駅と、千葉寺駅・大森台駅とを利用する場合、大人普通運賃を併算した金額から50円引とする。
京成千葉駅と、学園前駅〜ちはら台駅間各駅とを利用する場合、大人普通運賃を併算した金額から70円引とする。
以上、鉄道駅バリアフリー料金の収受が開始された2024年3月16日時点の運賃制度を簡単にまとめてみた。京成電鉄は、来年2025年4月に子会社の新京成電鉄を吸収合併し、京成松戸線とする予定である。現行の運賃をそのまま踏襲するとのことなので、運賃表の数は5つとなり、現在よりも更に複雑になる見込みである。
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