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小児の運賃料金が半額にならない場合
JR東日本のWebサイトでは、小児(こども)の運賃料金について次のように説明されている。
こどもの運賃・料金
・「こども」の乗車券、特急券、急行券、指定席券は「おとな」の半額です(5円のは数は切り捨てます)。ただし、半額とならない場合があります。
・グリーン券、グランクラス、寝台券、乗車整理券は「おとな」と同額です。
・「おとな」1人と「こども」1人で、または「こども」2人で1つの寝台が利用できます(「寝台券」参照)。
この中で「ただし、半額とならない場合」がどのような場合なのかが気になったので調べてみた。なお、この但し書きは「乗車券」「特急券」「急行券」「指定席券」にかかっており、それ以外の「グリーン券」等はもともと半額にはならないため本稿では扱わない。
料金が半額とならない場合の例
JR線における小児の特急料金(自由席・指定席)は大人の半額で、10円未満の端数は切捨てとなる。JR以外の事業者では端数を切上げとする事業者が多い。
(小児の旅客運賃・料金)
第74条 小児の片道普通旅客運賃、定期旅客運賃、急行料金又は座席指定料金は、次条に規定する場合を除いて、大人の片道普通旅客運賃、定期旅客運賃、急行料金又は座席指定料金をそれぞれ折半し、10円未満のは数を切り捨てて10円単位とした額(以下この方法を「は数整理」という。)とする。
東海道・山陽新幹線と九州新幹線にまたがる場合の特急券
東京〜博多間の東海道・山陽新幹線と博多〜鹿児島中央間の九州新幹線とを連続して乗車する場合の特急料金は、計算方法が特殊である。
たとえば、「みずほ」の普通車指定席で岡山〜熊本間を通常期に利用する場合の大人の特急料金は、岡山〜博多間〔のぞみ〕利用時の指定席料金 5,890 円【a】と、博多〜熊本間の指定席料金 3,060 円から 530 円引した 2,530 円【b】とを併算した 8,420 円【c】となっている。
ところが、この場合の小児特急料金は【c】を半額にした 4,210 円にはならない。博多駅で料金計算を打切るため、【a】を半額して端数処理した 2,940 円と、【b】を半額して端数処理した 1,260 円を併算した 4,200 円が小児の指定席特急料金である。
2 前項の規定にかかわらず、東京・小倉間の新幹線停車駅と新鳥栖・鹿児島中央間の新幹線停車駅との相互間を乗車する場合に発売する特別急行券(第57条第7項の規定により発売するものを含む。)に対する小児の特別急行料金は、東京・博多間及び博多・鹿児島中央間の乗車区間に対する大人の特別急行料金をそれぞれ折半し、は数整理した額を合計した額とする。
他社線にまたがる列車の特急券
先に記した通りJR各社とJR以外の各会社線とでは小児料金の端数処理方法が異なるため、両者を直通して運転する列車においては、同じ列車でも乗車区間によって小児特急料金が半額の切捨ての場合と切上げの場合とが混在する場合がある。
また、小児特急料金を独自に設定している会社線に直通する場合は半額とならない場合がある。
たとえば、JR東日本と富士山麓電気鉄道富士急行線を直通運転する特急「富士回遊」の普通車指定席を新宿〜河口湖間で利用する場合の大人特急料金は、 JR 線の特急料金 1,020 円【a】と富士急行線の特急料金 600 円【b】を併算した 1,620 円【c】である。
富士急行線内で「富士回遊」を利用する場合の小児特急料金は、【b】の半額 300 円ではなく、 400 円【d】に設定されている。
そのため、新宿〜河口湖間の小児特急料金は【c】を半額にした 810 円ではなく、【a】の半額 510 円と【d】を併算した 910 円となる。
運賃が半額とならない場合の例
JR線における小児の普通運賃は大人の半額で、料金と同様に10円未満の端数は切捨てとなる。JR以外の事業者では端数を切上げとする事業者が多い。
連続乗車券
乗車区間が一周を超える場合や乗車区間の一部が往復となる場合は、連続乗車券が発売される。JR 東日本の Web サイトでは、具体例として次のケースが記載されている。
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1)乗車区間が一周してさらに超える場合
a.名古屋~国府津~御殿場~沼津間(幹線)の営業キロは348.5キロ。は数は切り上げて349キロとします。運賃は6,050円です。
b.沼津~名古屋間(幹線)の営業キロは239.8キロ。は数は切り上げて240キロとします。運賃は4,070円です。
全区間の運賃はaとbを合計して10,120円になります。
この連続乗車券の小児運賃は、第1券片【a】を半額にして端数処理した 3,020 円と、第2券片【b】を半額にして端数処理した 2,030 円を併算した 5,050 円となり、大人運賃 10,120 円を半額した 5,060 円にはならない。
他社線との連絡乗車券
料金と同様にJR各社とJR以外の各会社線とでは端数処理方法が異なるため、複数社にまたがる場合の小児運賃は半額の切捨ての場合と切上げの場合とが混在する場合がある。
また、複数の会社にまたがる場合には乗継割引が設定されている区間がある。小児の割引額が大人の半額でない場合や、割引後の端数処理などの関係により、小児の割引運賃が大人割引運賃の半額とならない場合がある。
たとえば、JR常磐線亀有駅から綾瀬駅接続で東京メトロ千代田線北綾瀬駅までの連絡乗車券の運賃を見てみる。無割引の大人運賃は、JRが 150 円、会社線が 180 円で、合計 330 円である(鉄道駅バリアフリー料金を含む。以下同様)。また無割引の小児運賃は、JRが 70 円、会社線が 90 円で、合計 160 円である。
この区間は乗継割引が適用されるため、大人・小児共に 10 円引となる。そのため、大人割引運賃は 320 円、小児割引運賃は 150 円になり、大人の半額とならない。
小児運賃料金の案内について
このように小児の運賃・料金は大人の半額とならない場合があるが、駅の運賃表やWebサイトの案内では単に「大人の半額」との記載しかなく、実際の金額が省略されていて確認が難しい場合がある。
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JR船橋駅のきっぷうりばに掲出されている地下鉄連絡の運賃表には小児運賃の記載がなく単に「こども半額」とだけ記され、端数処理の方法は記載がない。上側の東西線連絡きっぷ運賃表では高田馬場までの大人運賃は 450 円となっていて、記載のない小児運賃は半額切捨ての 220 円となる。一方で下側の東西線経由連絡きっぷ運賃表で西荻窪までの大人運賃は 510 円で、小児運賃は半額切上げの 260 円であるが、端数処理の方法の違いをこの運賃表からはうかがい知ることはできない。
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京成高砂駅と京成船橋駅の日暮里のりかえJRきっぷ運賃表は、どちらも小児運賃が記載されており、前者は大人運賃の半額切捨て、後者は半額切上げであることを知らなくても、正しい金額を把握することができる。
なお上記案内の2つの例はいずれも10円単位の運賃についての話であり、1円単位のIC運賃が適用される場合はこの限りではないことに注意。