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京成電鉄の鉄道駅バリアフリー料金

東京上野を起点に東京都東部・千葉県北西部へ鉄道路線網を展開し、成田空港へのアクセス輸送も担う京成電鉄は、2024年3月16日より鉄道駅バリアフリー料金の収受を開始した。今回はその収受方法についてまとめてみた。


京成電鉄の運賃制度

はじめに、京成電鉄の運賃制度について記しておく。

多くの鉄道事業者と同様に、京成電鉄の運賃はキロ程に応じて運賃が定まる対キロ区間制(定期券運賃は表定制)となっている。しかしながら、キロ程ごとの運賃表は

  • 京成電鉄線(千原線・成田空港線を除く。以下「電鉄線」と記載する)に適用する運賃表

  • 千原線に適用する運賃表

  • 成田空港線に適用する運賃表

  • 成田空港線(京成高砂〜印旛日本医大間各駅相互発着)に適用する運賃表

の4種類が存在し、これに加えて

  • 成田空港駅発着となる場合の加算運賃

  • 東成田駅発着となる場合の加算運賃

  • キロ程によらない特定区間の運賃

  • 電鉄線と千原線の乗継運賃

  • 成田空港線と北総線の乗継運賃

が設定されているなど、大手民鉄の中で運賃制度が1番複雑な事業者と言っても過言ではない。

このように、もともと複雑だった運賃制度に加えて、鉄道駅バリアフリー料金制度に基づき鉄道駅バリアフリー料金のあわせ収受が開始された。


鉄道駅バリアフリー料金制度

鉄道駅バリアフリー料金制度は、利用者の薄く広い負担により都市部における鉄道駅のバリアフリー化を推進する枠組みとして2021年12月に創設された新たな料金制度である。この制度により徴収した料金はバリアフリー整備に限ってのみ用いることができ、事業者は整備計画を策定・公表する必要がある。

京成電鉄でも、ホームドアをはじめとしたバリアフリー設備の整備を推進するために、この制度を活用して鉄道駅バリアフリー料金の収受が開始された。


京成電鉄の鉄道駅バリアフリー料金収受方法

京成電鉄における鉄道駅バリアフリー料金の収受方法は次の通り。

普通運賃

1乗車につき運賃に10円を加算する。ただし、成田空港線内のみを利用する場合は加算しない。

厳密には、電鉄線の運賃と千原線の運賃にそれぞれ10円を加算するが、電鉄線と千原線にまたがって乗車する場合は千原線の運賃にのみ10円を加算する。

電鉄線の駅から成田空港線を経由して電鉄線の駅まで乗車する場合も、10円の加算となる。

小児運賃は鉄道駅バリアフリー料金を加算した大人運賃の半額となる。

通勤定期券運賃

電鉄線の運賃表と千原線の運賃表それぞれに対して、1ヶ月定期は600円、3ヶ月定期は1,710円、6ヶ月定期は3,240円を加算する。

普通運賃と異なり、電鉄線と千原線にまたがって乗車する場合は二重加算(1ヶ月定期は1,200円、3ヶ月定期は3,420円、6ヶ月定期は6,480円)となる。

電鉄線の駅から成田空港線を経由して電鉄線の駅まで乗車する場合は、1枚の定期券で発売することができない。そのため、京成高砂で分割して2枚の定期券を購入することとなり、結果的に鉄道駅バリアフリー料金も二重で収受されることになる。

通学定期券運賃

家計負担への配慮のため、鉄道駅バリアフリー料金は収受されない。


収受方法の告知について

二重加算となる場合があるなど、他の事業者と比較して複雑な収受方法となっているが、その告知についてはあまり積極的にされていなかったように感じた。

京成電鉄から鉄道駅バリアフリー料金の導入が発表されたのは2023年9月15日で、同日付のニュースリリースには次のように記載されている。

京成本線、押上線、金町線、千葉線、千原線、東成田線において、1乗車あたり10円を基本として鉄道駅バリアフリー料金を旅客運賃に加算します。小児は、鉄道駅バリアフリー料金加算後の大人の半額となります。なお、成田空港線、通学定期旅客運賃については、鉄道駅バリアフリー料金は加算しません。

鉄道駅バリアフリー料金制度の活用によりバリアフリー設備を整備します

その後、同年11月30日付のニュースリリースでは収受開始日が2024年3月16日と発表され、鉄道駅バリアフリー料金加算後の電鉄線と千原線の運賃表が示された。ただし、

各駅毎の旅客運賃・料金の合計額は後日ホームページ等でお知らせします。

鉄道駅バリアフリー料金 収受開始日のご案内

とされ、この時点では電鉄線と千原線にまたがる場合の収受方法などはわからなかった。

収受開始まで3週間を切った2024年2月28日頃より、公式Webサイトの運賃検索にて収受開始後の金額が確認できるようになった。このとき、電鉄線と千原線にまたがる場合の通勤定期券運賃では鉄道駅バリアフリー料金が二重加算となることが明らかとなった。

さらに収受開始直前の3月14日頃には収受開始後の旅客営業規則が閲覧できるようになり、二重加算の根拠が示された。

(旅客運賃に加算して収受する鉄道駅バリアフリー料金)
第66条 第140条に規定する鉄道駅バリアフリー料金は、乗車区間に対する旅客運賃(前条第1項第1号ロに規定する通学定期旅客運賃を除く。)に加算して収受し、当該旅客運賃と一体のものとして取扱うものとする。
2 前項の規定にかかわらず、第68条第3項に規定する各駅を相互に乗り継いで乗車する場合に加算する鉄道駅バリアフリー料金は、第77条第5項(千原線の各駅相互発着)に規定する普通旅客運賃に限り取扱うものとし、同条第1項(京成本線、東成田線、押上線、金町線および千葉線の各駅相互発着)に規定する普通旅客運賃に対して同時の取扱いはしない。
3 前項の規定は、普通旅客運賃に対して同時の取扱いはしないことを規定したものであり、前条第1項第1号ロに規定する通勤定期旅客運賃については、それぞれに鉄道駅バリアフリー料金を加算し収受するものとする。

旅客営業規則(京成電鉄線適用)

電鉄線と千原線にまたがる場合、普通運賃の場合は第66条第2項にて千原線にのみ鉄道駅バリアフリー料金が加算され、電鉄線の運賃には加算されないことが規定されている。一方で、通勤定期券運賃の場合は同条第3項で二重に料金を加算することが明記されている。

京成電鉄各駅に掲出された鉄道駅バリアフリー料金収受開始を知らせるポスター

なお、鉄道駅バリアフリー料金を収受しない成田空港線についても、空港第2ビル〜成田空港間の特定運賃のみ、鉄道駅バリアフリー料金加算後の電鉄線の運賃と同じ金額となるように改定された(普通運賃150円→160円、通勤1ヶ月定期運賃5,610円→6,210円)。これについては特段の告知がされていなかったように見える。


以上、京成電鉄の鉄道駅バリアフリー料金についてまとめてみた。2025年には運賃制度を異にする新京成電鉄を合併する予定で、同社の運賃制度はますます複雑になる見込みである。

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