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【論文レビュー】安心感が仕事の満足度を爆上げする!?「セキュアベース・リーダーシップ」とは?

こんにちは!テツローです。
前回に引き続き、今回もセキュアベース・リーダーシップの論文を読んでみました。知れば知るほど面白いリーダーシップなのですが、それほど認知は広くないようです。なぜなんだろう・・・?

英語タイトル:THE IMPACT OF SECURE-BASE LEADERSHIP ON JOB SATISFACTION: THE ROLE OF LEADERSHIP EFFECTIVENESS
日本語タイトル:安全なリーダーシップが仕事の満足度に与える影響 - リーダーシップの有効性の役割
著者:GHOLAMREZA SHAMS

1.ひとことで言うとこんな感じ

前回の論文レビューでも「セキュアベース・リーダーシップ」を取り上げており、「安全」と「挑戦」を両立するリーダーシップという内容をご紹介しました。

今回の論文は「セキュアベース・リーダーシップ」という新しいリーダーシップのスタイルが、リーダーの能力を高め、最終的に学校職員の仕事に対する満足度を向上させる、ということを明らかにしようとした内容になります。
ちなみに、著者はGHOLAMREZA SHAMSといってイラン人の研究者で、イランのシャヒド・ベヘシュティ大学の学校職員を対象とした研究となっています。

2.なぜこの研究が重要なのか(社会的背景)

現代の大学などの教育機関は、資源の制約、財政難、技術革新、教育目標の明確化、職員へのプレッシャー増大など、様々な課題に直面し、さらに複雑化しています。これらの課題に対応するために、効果的なリーダーシップが求められているということが、この研究の背景にある社会的状況です。リーダーには、変化や新しい要求に対応するための柔軟なスキルが求められ、また、従業員の才能を認め、それを活かし、成長させることが必要となります。そういった意味で言うと、リーダーは従業員が組織の目標を達成するのを助ける上で重要な役割になります。そこで、「セキュアベース・リーダーシップ(SBL)」という新しいリーダーシップの形が注目されている、という訳です。

3.研究で明らかにしたかったこと(リサーチクエスチョン)

この研究では、以下の3つの点を明らかにしようとしました。

【シャヒド・ベヘシュティ大学における状況把握】
大学において、セキュアベース・リーダーシップがどの程度実践されているのか?また、リーダーシップはどれくらい効果的で、学校職員の職務満足度はどのレベルなのか?

【3つの要素の関係性】
セキュアベース・リーダーシップ」を実践すると、本当に「リーダーシップ」は効果的になるのか?また、それは「学校職員の職務満足度」とどのように関係しているのか?

【セキュアベース・リーダーシップの影響経路】
セキュアベース・リーダーシップは学校職員の満足度に直接的に影響を与えるのか?それとも、リーダーシップ効果を通じて間接的に影響するのか?あるいはその両方なのか?

4.研究の進め方

冒頭でも説明した通り、この研究はイランのシャヒード・ベヘシュティー大学の職員を対象に行われました。

  1. 参加者の選定:大学職員928人の中から、層化無作為抽出法で272人を抽出。最終的に247人から回答を得ています。

  2. データの収集:3種類の質問票を使用。
    安全基地型リーダーシップに関する質問票(37項目)
    リーダーシップの効果に関する質問票(15項目)
    仕事の満足度に関する質問票(10項目)

  3. データの分析:質問票の結果を、統計ソフト(SPSSとLISREL)を使って分析。具体的には、以下の分析手法を用いています。
    平均値の差を調べるためのt検定
    変数間の関係を調べるためのピアソンの相関係数
    複数の変数から結果を予測するための段階的重回帰分析
    変数間の複雑な関係を分析するための構造方程式モデリング

5.主な発見・結果

セキュアベース・リーダーシップは学校職員の職務満足度に大きな影響を与えることが明らかになりました。具体的には、直接的な影響として41%、リーダーシップ効果を介した間接的な影響として48%、合計で約89%もの影響力があることがわかりました。つまり、セキュアベース・リーダーシップは、直接的にも間接的にも、学校職員の職務満足度を高める上で非常に効果的なアプローチになると言えます。

6.この研究の面白いポイント

セキュアベース・リーダーシップを構成する以下の要素が、具体的にリーダーシップの効果や仕事の満足度にどのように影響するのかを分析している点が興味深かったです。

セキュアベース・リーダーシップを構成する要素

  • 受容

  • リスクを奨励

  • 潜在能力を認識

  • 親しみやすさ

  • 内発的動機

  • 傾聴と質問

  • 落ち着きと信頼性

  • ポジティブ思考

また、セキュアベース・リーダーシップが、直接的だけでなく、リーダーシップの効果を通じて、間接的にも仕事の満足度に影響を与えることを示した点も面白いポイントだと思いました。

7.実務や日常生活への応用可能性

この研究の結果は、職場環境におけるリーダーシップのあり方を変える可能性があると感じました。

例えば、管理職向けの研修で、セキュアベース・リーダーシップの概念や具体的な行動を学べば、リーダーシップの効果を高め、部下の仕事の満足度を向上させることができますし、職場環境を改善する上で、セキュアベース・リーダーシップの要素(安心感、成長の機会、ポジティブな雰囲気)を意識することで、従業員の心理的安全性を高め、より働きやすい職場を作ることもできると思います。また、人材育成においても、リーダーが部下の潜在能力を認め、成長を促すような関わり方をすることで、個人の成長に貢献し、組織全体の活性化に繋がる可能性が高いと思いました。

8.自分なりの考察

従来のリーダーシップは、目標達成や効率性を重視するイメージがありますが、セキュアベース・リーダーシップは部下に対する安心感や信頼感が、リーダーシップの効果を高め、仕事の満足度を向上させる上で、とても重要なことだとあきらかになりました。今の社会はストレスや不安を抱えやすい状況にあると思うので、セキュアベース・リーダーシップのような、心理的な安全性を重視するリーダーシップというのは、ますます求められるようになる気がしますね。もっと広く知られたリーダーシップになっても良いと思うのですが、Googleトレンドなどで調べるとまだまだ認知は広くないようです。

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